業務用PC選びは「WindowsかMacか」ではない──クラウド時代に見直す企業ITの出発点

2026.06.24 更新 2026.06.05 水川歩 約5分
業務用PC選びは「WindowsかMacか」ではない──クラウド時代に見直す企業ITの出発点

長年にわたり、業務用パソコンの標準とされてきたWindows。しかし、クラウドやゼロトラストの普及によって、企業ITを取り巻く環境は大きく変化しています。今求められているのは、OSを起点に考えるのではなく、その選定の前提そのものを問い直す視点です。

Windows以外を選びにくかった時代

企業ITの歴史を振り返ると、これまで企業システムの中心だったのはWindowsでした。国内外のメーカーから販売される多種多様な業務用パソコンをはじめ、Active Directoryによるユーザ管理やアクセス制御、Microsoft Officeを利用した文書作成や情報共有、Windows PC向けに開発された業務アプリケーションなど、多くの企業システムがWindows環境を前提として構築されてきました。

また、IT部門にとっても、単一のOSへ標準化することは管理効率の向上につながります。設定やセキュリティポリシーを統一できるほか、ヘルプデスク対応や運用手順の標準化もしやすくなるためです。こうしたシステム面と運用面の両方の理由から、多くの企業ではWindows PCを標準環境として採用するようになり、「企業PC=Windows」という構図が長年にわたり定着してきました。

クラウドの普及によって前提条件が変わった

こうした状況を大きく変えたのが、クラウドサービスの普及です。かつてはOSと業務アプリケーションが強く結び付いていましたが、現在では多くの業務をブラウザ上で完結できます。Microsoft 365、Google Workspace、Box、Salesforce、SlackなどのクラウドサービスはOSを問わず利用でき、利用環境による制約は大きく低下しました。

その結果、利用者から見れば、WindowsでもMacでも同じサービスにアクセスし、同じ業務を遂行できるケースが増えています。つまり企業システムは、Windowsを前提としていた時代から、クラウドサービスを前提とする時代へと移行したのです。

現在では主要な業務アプリの多くがMacに対応しているほか、クラウドサービスもブラウザ経由で利用できるため、OSによる制約は以前ほど大きくありません。

また、変化したのはアプリケーションだけではありません。デバイス管理の考え方も大きく変わっています。従来の企業ITでは、Active Directoryを中心としたオンプレミス管理が一般的でした。パソコンは社内にあり、管理者が一元的に制御することが前提だったため、利用するOSも管理の仕組みと密接に結び付いていました。

しかし現在は、リモートワークやクラウド活用が一般化し、ゼロトラストの考え方が広がっています。ユーザ認証もActive Directory中心から、Microsoft Entra IDやOktaなどを利用したクラウドベースのID管理やSSO(シングルサインオン)へと移行が進んでいます。さらに、MDM(モバイルデバイス管理)の普及によって、WindowsとMacを共通の仕組みで管理することも可能になりました。その結果、OSの違いが企業IT全体に与える影響は以前ほど大きくなくなっています。言い換えれば、今は「WindowsかMacか」という二者択一の発想そのものが意味を失いつつあるのです。

本当に問うべきなのは「OS」ではない

もちろん、現在でもWindowsを標準とする合理的な理由を持つケースは数多くあります。既存の業務アプリケーションがWindows前提で動作している場合や、特定のシステムとの互換性が必要な場合には、Windowsを選択することは十分に理にかなっています。

その一方で「昔からWindowsだから」「他社もWindowsだから」という理由だけで標準化が維持されているのであれば、一度立ち止まって考えてみる価値があるでしょう。

実際、近年では従業員が利用したい端末を選択できる「従業員選択制(Employee Choice Program)」を導入する企業も増えています。従来のように全社員へ同じ端末を配布するのではなく、業務内容や働き方に応じて最適な環境を選択してもらう考え方です。こうした動きは、企業が重視するポイントが「OSを統一すること」から、「従業員の生産性や働きやすさを高めること」へと変化しつつあることを示していると言えるでしょう。

さらに近年は、クラウドサービスに加えて生成AIの活用も急速に広がっています。多くのAIサービスはOSに依存せず利用できるため、企業にとって重要なのは、新しいツールやサービスを安全かつ効率的に活用できる環境を整備することになりつつあります。

つまり現在、業務用パソコンの選定において重要なのは、WindowsかMacかというOSの選択そのものではありません。どのような業務環境を実現したいのか、どのような管理モデルを採用するのか、どのようなセキュリティ方針を取るのか、どのような働き方を従業員に提供したいのか。まず考えるべきなのは、OSではなくその“出発点”です。OSは、その前提を実現するための手段に過ぎません。Windowsを採用するにしても、Macを採用するにしても、その判断は過去の慣習ではなく、現在の業務や働き方に基づいて行われるべきであり、その前提を問い直すことがこれからの企業ITには求められています。

AppleのWebサイトでは、業務要件や働き方に応じてMacを合理的な選択として採用した企業事例が多数紹介されています。
【URL】https://www.apple.com/jp/business/small-business/success-stories/

TAGS #Mac

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