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なぜ教育現場において “Apple”が選ばれるのか?

著者: 福田弘徳

なぜ教育現場において “Apple”が選ばれるのか?

Appleのプロダクトは一般消費者向けに展開されているイメージが強いかもしれないが、2007年のiPhone、そして特に2010年のiPadの登場以降、その利用範囲は従来のホビーやライフといった枠を飛び出して、さまざまな業種・業態へと広がってきた。その中でも、ビジネスや医療と並んで著しくApple製品の導入が進んでいるのが教育分野である。

現在、IT化やグローバル化が今後さらに進むことを前提に、新たな時代を生き抜くために必要な従来の知識偏重型の教育に頼らない「21世紀型スキル」を重要視した教育が求められている。国内においても、タブレットデバイスを中心としたICT環境の整備がよく話題にされるが、21世紀型スキルは単にICTデバイスを導入すれば成し遂げられることではない。創造性やイノベーション、批判的思考、問題解決能力、コミュニケーション力、情報リテラシーといった新たな学びを実現するためには、児童生徒、教員、学校、保護者の新たなマインドセットやスキルセットを含む「学校内の環境づくり」が非常に重要となってくる。ICT機器をどのように導入・運用・管理するのか、授業においてどのような教材やアプリを使うのか、児童生徒や教員のITリテラシーをどのように高めるのか、そしてそもそも教育ICTで何をめざすのか等々、実際の現場では考えなければならないことは山ほどある。そして、その実践は決して容易いものではない。

しかし、グローバルレベルで進む21世紀型スキルへの時代シフトは止まることはない。国内においても今後ますますその重要性は増していき、教育ICTの利活用は避けては通れない問題となるだろう。そうした状況の中、とかく国内の教育現場においてなぜAppleが選ばれ、支持されているのか。Appleは創業以来約40年間、一貫して教育分野へコミットしてきたIT企業である。教育シーンにおいて今のAppleが提供する価値とは何か。そしてどのように教育現場で評価されているのか。それについて具体的に紐解いていこう。

【1】AppleのハードウェアとOSの魅力

Apple製品は勉強を楽しくする

Apple製品が教育シーンで選ばれるのは、児童生徒や教員の多様な学習スタイルに対応し、今までにはなかった方法で学びを体験、実現できるからだ。では、なぜそれが可能なのか。その理由は「Apple製品がシンプルで使いやすく、汎用性がある」、「豊かな学びを実現するための環境がすべて用意されている」という2つに収束されている。

多くの教育機関や教員、そして児童生徒にとって、教育ICTは慣れ親しんだものではない。そのため、テクノロジーを学習と指導に有効活用するためにまず重要なのは「使いやすさ」=「わかりやすく、誰もが使えるかどうか」である。これまでの学校におけるICT学習環境を振り返ってみると、ICTデバイスの利用には制限があり、コンピュータ室などといった場所で教室と分離され、決して児童生徒にとって使いやすいものではなかった。

だが、“シンプルで汎用性のある”iPadならば、それががらりと変わる。持ち運びができ、直感的に操作でき、いつでもどこでも学ぶことができるiPadは、児童生徒の好奇心やニーズに合わせて勉強をもっと楽しいものに変えることができる。また、コンピュータに不慣れな教員にとっても、使い方の研修会をやらずとも操作できるiPadのほうが授業に取り入れやすいというメリットもある。日常生活でも使い慣れたApple製品だからこそ、教育現場でも導入障壁が低く、児童・生徒の学ぶ意欲を加速するのだ。

さらに、iPadは学習に効果的に利用できる標準アプリを内蔵しており、これ以外の教育用アプリの多くも無料で利用可能だ。導入開始時や活用拡大期などのステージに合わせて無料アプリをうまく利用することで教育ICTをスムースに促進できる。つまり、「iPadさえあればほとんどが事足りる」という、導入のシンプルさも現場で支持されているポイントである。

優れたユーザ体験を支えるiOS

こうしたiPad本来の使いやすさを根本から支えているのが、モバイルOSの「iOS」である。ハードウェアとシームレスに連係し、優れたユーザ体験を生み出すよう開発されたAppleのOSだ。iOSは無料で提供されており、教育用途にも効果を発揮するさまざまな機能を備えているのが特徴である。たとえば、「Split View」を使えば、iPadの大きなディスプレイを最大限に活かしながら2つのアプリケーションを同時に表示して作業することができる。「AirDrop」を使えば、児童生徒/教員のデバイス間でワイヤレスで瞬時にデータを送受信できる。さらに最新バージョンのiOS 11では、拡張現実(AR)機能をサポートし、さまざまな教育向けARアプリを利用できる。

セキュリティとプライバシーに関しても安心して採用できるのもiOSのメリットといえよう。写真やメッセージ、連絡先、メールなどのデータが追加されていくにつれ、デバイスはよりパーソナルなものになる。こうした個人情報を守るために、OS、アプリケーション、デバイス自体に、強力な保護機能が内蔵されている。iPadを採用する学校や教師の立場から見ても、安心・安全に使えるポイントだ。

また、教育現場でiOSが選ばれる理由の1つに、「アクセシビリティ」機能の充実がある。これにより、多様な特別支援ニーズに対応し、視覚、聴覚、肢体、学習や識字などに課題を抱えている子どもにも幅広く、手厚い機能で応えている。たとえば、「スイッチコントロール」機能や画面読み上げ機能である「VoiceOver」などは特に現場で重宝されている。

マルチタスキングで複数操作

iPadのみの機能だが、「Split View」機能を利用すると、2つのアプリを同時に操作したり、複数のアプリをジェスチャで切り替えたりと、さまざまな作業を同時にこなせる。

ARで効果的な学びを体験

iOS 11に組み込まれているARKitは、デバイス上で拡張現実の体験を生み出すことができる。実際に体験することは、もっとも効果的な学び方の1つである。

教育シーンにおけるiPadの7つの利点

?シンプルな操作性と、 軽くて薄いデザイン

iPadは、iOSが持つシンプルな操作感と、あらゆる場所で活用できる高いモビリティを備える。

?すべての学ぶ人向けに設計された アクセシビリティ

iOSに内蔵されたアクセシビリティ機能は、身体機能に障がいがある子どものためのパワフルな支援となる。

?目的のものを手軽にインプット

学習をサポートするデバイスとして、常にiPadが手元にあることで、新たな知識や言葉を知る機会にもなり、知らなかった世界を拡張することにもつながる。

?あらゆる学習スタイルに対応

Multi-Touchテクノロジーの反応のよさから、子どもたちが思いどおりに操作することができ、日常生活と変わらない自由な姿勢で学ぶことができる。

?豊富な内蔵アプリケーション

ディスプレイ、カメラ、加速度センサなどのハードウェアの機能を最大限に発揮するためのアプリケーションが標準搭載されている。

?作業の効率化

画面分割機能「Split View」で複数のアプリケーションが同時に使えることにより、マルチタスキングで作業の効率化ができ、思考を止めずに作業することができる。

?思いついたことを即座に表現

Apple Pencilに対応し、メモ機能が強化されたことで、素早く自分のコメントを記入できる。Pages、Numbers、Keynoteなどを使えば、表現の幅も広がる。

教育にフィットするiPad

こうしたiPadの教育現場における魅力は、2018年3月に発売された最新のiPad(第6世代)によって一層高まっている。最新のiPadは「Apple Pencil」にも対応し、さらなる表現と学習体験を提供するからだ。Apple Pencilは、iPadのMulti-Touchテクノロジーの効果を引き出すツール。ペンの傾きや筆圧を認識するので、極めて細い線や微妙な濃淡など、芸術的な表現が可能になる。iPadでできることを拡張するだけでなく、手にとった瞬間から、自然でレスポンスのよい使い心地を体験できる。また、Wi-Fiモデルで469gという軽さから、校外でのあらゆる体験型学習をサポートしてくれる。いつでもどこでも使えるデバイスだからこそ、真の意味での学習を支援するツールとなる。

現在、iPadのラインアップはApple Pencil対応の9.7インチのiPadを基準として計3モデル用意されており、用途に合わせて選択することができる。7.9インチのiPad miniは子どもたちが扱いやすいサイズで、小学校などで採用されるケースが多い。また、高等教育機関でもキャンパスや校外での利用がしやすいほか、医学領域においては白衣のポケットに収まるサイズのため、研究や実習の現場での学習をサポートしてくれる。

一方、iPad ProはPCと同等もしくはそれ以上の能力を備えている。価格が他のiPadに比べて高いことやApple Pencil対応のiPadが登場したことで教育現場への採用は少ないものの、高性能なデバイスでありながらも操作性はほかのiPadと同様にシンプルだ。

操作性を高めるSmart Keyboard

Pad Pro用のキーボード「Smart Keyboard」は、ペアリングや充電不要で使える優れものだ。煩わしい設定がいらないため、教育現場との相性もよい。価格は1万5800円(税別)。USキーボードとJISキーボードの2種類がある。

iPadシリーズのラインアップ

iPad

2018年3月に発売されたiPad。9.7インチディスプレイを搭載し、Apple Pencilに対応する。価格は3万7800円(税別)から(32GB、Wi-Fiモデル)。

iPad Pro

パワフルなスペックを備えたプロ向けiPad。価格は10.5インチが6万9800円(税別)から、12.9インチが8万6800円(税別)から(ともに64GB、Wi-Fiモデル)。

iPad mini 4

7.9インチディスプレイを備えた小型モデル。使いやすいサイズから根強いファンが多い。価格は4万5800円(税別)から(128GB、Wi-Fiモデル)。

MacとApple TVの採用も増加

教育機関で採用されるApple製品の多くはiPadだが、MacやApple TVなども一緒に導入されるケースが増えている。その理由は、同じApple製品なので操作系が似ているため習得が楽であること、iOSと共通のアプリケーションが揃っていること、そしてなによりもApple製品間の連係が充実していることが大きい。Apple製品は単一での利用でも効果は得られるが、Appleのエコシステムを利用することで、その効果を最大化することが可能だ。

現在のMacのラインアップは、モバイル性に優れたMacBookやMacBook Air、コーディングやプロ用のアプリケーションをストレスなく利用できるMacBook Pro、大型ディスプレイで作業できるiMac、クリエイターやプロのユーザにも使われているiMac ProやMac Pro、そしてMac miniの7モデル。iPadのように児童生徒が1人1台導入するケースはほとんどなく、iOSアプリにはないアプリの利活用や、大画面&キーボードの操作性を活かして、教員が教材づくりに利用したり、児童生徒が協働学習をする際に利用される。

一方、Apple TVは教室内の学習体験を高めるために効果的なデバイスだ。教材やコンテンツをクラス全体で共有することを可能にし、教室での共同作業を大きく支援してくれる。Apple TVとAirPlayを組み合わせると、教員は小さな画面の教材を大きな画面に映し出せるため、クラス全体の興味を惹きつけられる。また、Apple TVが導入されていると、児童生徒たちは多様なプレゼンテーション形式と学習スタイルに対応できる。児童生徒たちは自分に合った方法で作品を発表して、クラス全体の関心を自分に向けることが可能になる。前に出て発表するのが苦手な児童生徒でも、好きな場所から自分の作品を共有したりすることで、授業に積極的に参加できるのだ。

多種多様なMacシリーズ

ノートブックとしてMacBook、MacBook Pro、MacBook Air。デスクトップマシンとしてiMac、iMac Pro、Mac Pro、Mac miniをラインアップ。

導入が進むApple TV

Apple TVは「Apple TV 4K」と「Apple TV」の2モデルがある。Apple TV 4Kの価格は1万9800円(税別)で、Apple TVは1万5800円(税別)だ(ともに32GB)。

【2】Apple純正アプリケーションの価値

授業を支える純正アプリケーション

Apple製品を導入した理由を聞くと、「iPadやMacには創造的な学びのためのアプリケーションが標準搭載されている」ことを理由に挙げる教育機関は多い。「iMovie」や「GarageBand」、「Pages」、「Numbers」、「Keynote」などのアプリケーションは実にパワフルであり、児童生徒の創造力を発揮させるために利用できる。たとえばPagesで写真やビデオ、グラフなどを活用して、これまでとはまったく違う表現のレポートを作成する。たくさんのデータを扱う課題ではNumbersを使って、単なるスプレッドシートに留まらず、表やグラフを作成し、児童生徒が自分の考えやアイデアを表現する。Keynoteを活用すれば、豊富なトランジションやエフェクトを盛り込んだプレゼンテーションを作成可能だ。さらには、iMovieでビデオを撮影、編集したり、Garagebandで音楽を録音、編集することもできる。

これらのアプリケーションはブラウザ上で利用するWEBアプリケーションではなく、ネイティブアプリケーションなので、iPadやMacの性能を最大限に活かして、課題や作品、教材を制作するのに最適なパフォーマンスを発揮できる。iPadとMacで同じアプリケーションを利用できるところも大きな魅力の1つだ。児童生徒の学年が上がり、利用するデバイスがiPadからMacに変わっても、新たにアプリケーションの操作を習得する必要はない。

Appleが提供する教育向けアプリケーション

iMovie

ビデオは、子どもが学んだことを自分なりに表現する方法としてますます広まっており、教員にとっても簡単にビデオを制作できる時代になっている。iMovieは授業で利用するのに最適なツールだといえよう。

 

GarageBand

音楽の授業だけでなく、さまざ まな授業で使える魅力的なツー ルだ。音声を収録したり、サウン ドエフェクトを制作し、プレゼ ンテーションやムービーに追加 することで、表現したいことを より際立たせることに役立つ。

 

Pages

レポートやニュースレター、ポ スターなどといったプロジェク トのテンプレートを使って、自 分らしい学習成果物を作成でき る。フォントや表、グラフ、図形 をこだわれば、より引き締まっ たデザインになる。

 

Numbers

単に表計算だけでなく、データ を直感的に分析しながら、アニ メーションを使って学習内容を 補足するビデオやグラフなど、 よりインタラクティブな要素を 作成できる。データの表現方法 が魅力的になるだろう。

 

Keynote

誰もが簡単に直感的に使うこと ができる優秀なアプリケーショ ンだ。教員は視覚に訴える教材 を作成でき、児童生徒はレポー トや課題発表の際に、よりわか りやすい表現が簡単にできるよ うになる。

 

そのほかのアプリ

このほかにも、プロのクリエイターが使うビデオ編集ツール 「Final Cut Pro X」や、音楽制作ツール「Logic Pro X」などのア プリケーションも豊富に揃っている(ともにmacOS専用)。これ らのアプリケーションがバンドルされた「教育機関向けPro App バンドル」も、教育機関向けの価格で提供されている。価格は2万 2800円(税別)だ。