Appleのホームスピーカ「HomePod」の日本発売を待ちきれず、スマートスピーカ「Amazon Echo」を購入した筆者。「家電製品のIoT化」を夢見て、Amazon Echoとスマートリモコンを使って、自宅の家電のIoT化に挑戦してみた。声で家電が操作できる快適さは得られたものの、実際に使用してわかった問題点があった。
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部屋がデバイスになる感覚
なかなか日本での発売日が決まらないアップル純正ホームスピーカ「ホームポッド(HomePod)」。まだかまだかと待ち続けていたものの、辛抱できずに他社製スマートスピーカである「アマゾン・エコー(Amazon Echo)」や「グーグル・ホーム(Google Home)」に浮気をしてしまった人もいるのではないだろうか。実は筆者もその1人で、セール価格に釣られて、たまらずアマゾン・エコーを購入してしまった。
使ってみて実感したのは、スマートスピーカを操る際の「音声インターフェイス」(アマゾン・エコーでいうと「アレクサ」)は、一度体験すると戻れなくなるということだ。マイクの感度が優れているので、本体に向けて命令するという感覚はすぐに消え、「部屋に命令をする」という、部屋そのものがデバイスになっている感覚になる。音楽やニュースは簡単に聞けるし、アマゾン・エコーはアイクラウドにも対応しているため、スケジュールの確認・追加もできる。
家電を声で制御
アマゾン・エコーを使い始めてからやってみたくなったのが「家電のIoT化」だ。「アレクサ、灯りを点けて」「アレクサ、冷房をオン」などと声で家電が制御できたら、利便性はもちろん、未来感が味わえる。
問題は、まだスマートスピーカに対応している家電がさほど多くなく、選択肢が極めて少ないということだ。そのため、現状でもっとも現実的な方法は、スマートスピーカ対応の赤外線スマートリモコンを購入することであろう。これならば「アレクサ、テレビを点けて」と言うだけで、スマートリモコンからテレビ用の赤外線信号が放射され、テレビがオンになる。
我が家では、テレビ、レコーダ、エアコン、扇風機、シーリングライトが赤外線リモコンに対応しているので、スマートスピーカ対応のスマートリモコンを設置することで、アマゾン・エコーから制御できるようになるというわけだ。
音声で家電を操れるか
スマートスピーカ対応の赤外線リモコン型スマートリモコンは、市場に数種類の製品が発売されていて、価格も5000円から1万円程度と手頃だ。筆者が購入したのはラトックシステムのスマートリモコン「RS-WFIREX3」。これはWi-Fi接続に対応しており、iPhoneやスマートスピーカからWi-Fi経由で信号を送り、それに応じて赤外線信号を放射し、家電を操作するという仕組みだ。このようなスマートリモコンにできることは大別して3つある。
1つ目はiPhoneがリモコン代わりになること。専用アプリがあり、その中にリモコンが表示されるので、iPhoneを家電リモコンとして使えるようになる。
2つ目は外出先からiPhoneを使って家電を制御できることだ。iPhoneからはネットワーク経由でスマートリモコンに信号を送れるので、外出先から家電を操作できるようになる。消し忘れて外出してしまったときや、帰宅前にエアコンを点けたいときなどに便利だ。
3つ目はスマートスピーカから音声で家電を制御できるようになること。アマゾン・エコーの場合、「アレクサ、冷房をつけて」と言うだけでエアコンを操作できるようになる。
さらに、アマゾン・エコーの場合、「定型アクション」という機能がある。これは、ある言葉に反応をして事前に設定した複数の命令を実行するという機能だ。筆者は「アレクサ、おやすみ」と言うだけで、テレビ、レコーダ、エアコン、扇風機、灯りを消し、最後にアレクサが「おやすみなさい!」と言う、定型アクションを設定した。
筆者は数多あるスマートスピーカの中から「Amazon Echo」を購入した。以前は「購入リクエスト」を送ってから購入という招待制が取られていたが、現在は通常購入できる。
RS-WFIREX3
【発売】ラトックシステム
【価格】7000円前後(オープン価格)
【URL】http://www.ratocsystems.com/products/subpage/smartphone/wfirex3_tokutyo.html
スマートリモコンにはラトックシステムの「RS-WFIREX3」を選択した。周囲、上方に赤外線信号を放射する設計で、設置場所を選ばず、部屋の家電製品を操作できるようになる。
AV機器に問題発生
しかし、実際に定型アクションを使ってみると、2つの問題に直面した。1つはAV機器のトグルの問題、もう1つはシーリングライトのスイッチングの問題である。
まず前者の問題は、テレビ、レコーダなどの多くのリモコン電源ボタンが「トグルスイッチ」になっていることに起因する。「トグル」というのはオンとオフを反転させるという意味で、たとえばテレビのリモコンは入と切が同じボタンになっていることを想像してほしい。これは、リモコンとしては同じ赤外線信号を発射し、テレビがオンになっていたらオフにし、オフになっていたらオンにするという仕組みだ。
トグルスイッチは、室内で使う場合はまったく問題ない。しかし、外出先からリモート操作するときに初めて問題が起きる。たとえば、外出中に家のテレビを消し忘れたか不安になったとしよう。そこで、リモート操作して解決しようとしても、そもそも今テレビがオンなのかオフなのかがわからないのだ。
加えて、先述の「アレクサ、おやすみ」という定型アクションを使うときも同様の問題が起きる。テレビが点いているときに「おやすみ」を言えば、テレビは消えるが、テレビが消えているときに「おやすみ」を言ってしまうと、わざわざテレビを点けてしまうのである。
おそらくAV機器は、目の前で使う状態を想定して作られており、オンかオフかの状態は目で見て確認できるため、入と切の信号を別にする必要性を感じなかったのだろう。
面白いことにエアコンは入信号と切信号が別なため、IoT化に向いている。エアコンのオンは「運転」以外にも「暖房」「冷房」「除湿」などがあるため、別信号にするほうがわかりやすいのだと推測できる。
天井照明にも問題発生
もう1つ悩まされたのが、天井の灯りである「シーリングライト」のスイッチングの問題だ。シーリングライトは壁のスイッチからもオン、オフできるし、それとは別にシーリングライト専用のリモコンからもオン/オフできるものが多い。
アレクサで「灯りを消して」と言った場合、赤外線を使うため、リモコンを使ってオフにすることになる。そうすると、次に灯りを点けたいときに、壁スイッチを押しても灯りは点かず、リモコンからしか点かなくなるのだ。逆も同じで、壁スイッチで消した場合、リモコンからはオンできなくなる。つまり、最後に消し方法でしか次回点けることができないため、最後にどちらで消したかをいちいち覚えておかないといけないのだ。これは、あくまでも筆者が使用しているライトの仕様ではあるが、一般流通している普通のライトのため、特別まれなケースではないはずである。
未来を体験してほしい
これらは決して家電製品の設計の不具合ではない。要は、メーカーが想定していなかった使い方をされる時代になったということだ。メーカーには、スマートスピーカ対応製品をどんどん開発してほしいと思うが、同時に、スマートリモコンで使われることを想定した設計も念頭に置いてほしい。
そして読者の皆さんには、ぜひ一度「アレクサ、おやすみ」の定型アクションを体験していただきたい。声をかけるだけで家電製品が次々とオフになり、部屋の灯りが消えて、街の小さな灯の筋が部屋の中に入ってくる。その中で、アレクサの「おやすみなさい」という声が響く。自分は21世紀を生きていると実感させてくれる体験だ。
家電コントローラ専用アプリ「スマート家電コントローラ」には、各家電のリモコンが表示される。このリモコンを使って、室内、外出先からも家電が操作できる。電源のオン/オフが同じボタンになっていることに注意だ。
エアコンの場合は、運転と停止が別ボタンになっている。エアコンが停止しているときに停止ボタンをタップしても、無視されるだけで問題ない。これで外出先からエアコンをオンにすることができるようになった。
Amazon Echo専用アプリ「Amazon Alexa」で、定型アクションを組むことができる。筆者は「アレクサ、おやすみ」と言うだけで、リストに登録した命令を次々と実行していくというアクションを設定した。
スマートホームメニューに家電を登録していく。[デバイスの追加]をタップすれば、あとはガイダンスに沿って進めればOK。とても簡単に設定できるので、迷うことはほとんどないはずだ。