見せる人/米津 雄介
プラス株式会社にて、文房具の製品開発およびマーケティングに従事したあと、 2012年にプロダクトマネージャーとしてTHE株式会社に参画。マネジメント全般と事業計画を担当。2015年3月に代表取締役社長に就任。D&AD Awards/The One Show 2016、London International Awards 2015など受賞歴多数。共著に『デザインの誤解』(祥伝社)【URL】http://the-web.co.jp
米津雄介さんのiPhone インストールされているアプリ Skitch/GoPro/Nike Running/FieldAccess/波伝説/潮はどう?
歯ブラシが立った!?
歯ブラシや醤油差し、洗剤などはどのご家庭にもある定番商品。それらの商品を代表するような、いわゆる「THE 歯ブラシ」「THE 醤油差し」を作ろうとしている新進気鋭の会社が、THE株式会社です。今回は代表取締役・米津雄介さんと対談しました。
THEには、くまモンをデザインしたクリエイティブディレクター・水野学さん、中川政七商店の代表取締役・中川淳さん、数々のデザイン賞を受賞しているプロダクトデザイナー・鈴木啓太さんなど錚々たる方々が所属しています。これだけのメンバーを束ねるのは難しそうですね、と米津さんにお伺いすると、「皆さん個性的なプロフェッショナルなので、毎回会議が楽しくて」と言います。米津さん自身、文具メーカーでヒット商品を数々と生み出してきたプロダクトマネージャーですから、異なる才能がぶつかり合って商品を創り上げる楽しさを実現しているんでしょうね。
私も日用品メーカーである花王という会社にいたので、まず気になったのが、THE 歯ブラシです。正式名称は、「ザ・トゥースブラシ(THE TOOTHBRUSH)」。
自立する歯ブラシ。「なぜ今までなかったんだ!」と思いました。昔と比べると洗面台の構造が変わり、歯ブラシを立てる場所がなくなったので、コップなどに歯ブラシを入れておくのが一般的です。なぜ歯ブラシを立てるのかというと、ブラシの部分を地面に付着させたくないからでしょう。そう考えて、各メーカーが歯ブラシ立て的な商品を作っているわけですが、お客さんの要望の本質は「歯ブラシを立てて置きたい」ということ。このプロダクトは、歯ブラシそのものを立てる構造にした、世の中で誰もやっていなかった製品です。歯ブラシを作っているメーカーは、歯磨き粉を立てる商品は出しているのに、どうして「歯ブラシそのものを立てる」という発想にいかなかったのでしょう。
このプロダクトは、歯ブラシの柄の部分に重りを入れて、バランスを取って自立するようになっています。重心を決めるのに試行錯誤すると金型製作のコストがかかり、結果的に開発費が上がり、商品単価も高くなってしまいます。そこで、バランスを可変にした設計にして、1つの金型で重心を変えれる設計にしたそうです。なるほど。さすがプロダクトマネージャーですね。
手間をかければ正確に伝わる
もう1つ紹介したいプロダクトが、「THE 醤油差し」です。この製品のコンセプトは「液だれしないこと」ですが、確かに醤油差しって液だれしているのが普通だと思っていました。でも、私たちが使いたいのは、液だれしていないきれいな醤油差しですよね。
このコンセプトを実現するために、米津さんたちが行ったのは、表面張力を利用して、液がたれないように醤油の流れる流路で液を保持するというものでした。通常だと醤油差しの先に付いた醤油の残りは、重力に引きづられて落下します。これが液だれの原因です。
そこで、重力に負けない力を醤油に与えるのが、このTHE 醤油差し。醤油を運ぶ流路を細い溝に加工することで、この流路内で中を通る醤油に表面張力が付与されます。醤油を注ぐときには醤油が落ちますが、机の上に置いたときには醤油が落ちる力を失う、つまりは液だれしない構造を創り上げています。私たちの好きなアップルのプロダクトに通じるモノがありますよね。
おっと、米津さんのアプリを見せてもらわねば…プロダクトマネージャーっぽいアプリが入ってましたよ。写真加工アプリ「スケッチ(Skitch)」です。写真を撮ったあとに写真に矢印を入れたり、コメントを入れたりするのが簡単にできる定番アプリですね。何かの指示を送るとき、写真を撮って相手に送ることはよくやります。しかし、ここに一手間加えて、指示を入れて送ることで、情報が正確に伝わりますし、相手の理解も早くなりますね。無料のアプリですが、必要な機能は十分。こちらも“THE”な写真加工アプリですよね。
Skitch
【開発】Evernote
【価格】無料
【カテゴリ】App Store>仕事効率化
スケッチは、写真に注釈や矢印を挿入できる便利な写真加工アプリです。無料アプリながら使い勝手も良く、THE写真加工アプリといえるでしょう。
見る人/美崎栄一郎
『iPhoneバカ』『iPadバカ』などの著者。札幌から福岡までアップルストア全店舗、ソフトバンク本社などでも講演したiPhone大好き人間。『「結果を出す人」は、エクセルをどう乗りこなしているのか?』(学研パブリッシング)が発売されました。【URL】http://www.facebook.com/a16misaki