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13度目の「成熟した進化」macOS Sierra

著者: 小平淳一

13度目の「成熟した進化」macOS Sierra

未来のコンピュータが手元に

9月21日にリリースされた新たなMac用OS「シエラ」。Mac用OSは、これまでの「OS X」という呼称から「macOS」へと変わりましたが、シエラはこれまで培ってきたOS Xの基盤技術を引き継いだ、13度目のメジャーアップデートです(バージョン表記は「10・12」)。

シエラは数多くの新機能を搭載していますが、大きな特長としては2つの点が挙げられます。1つは音声アシスタント「Siri」がMacに初めて搭載されたこと、そしてもう1つはアイクラウドやiOSデバイスとのさらなる連係強化が行われたことです。

MacのSiriは、天気を訪ねたり近くのコンビニを探したりといったiOSでお馴染みの利用方法はもちろん、ファイルの検索でも利用できるのが大きな魅力。「ファイル検索ならスポットライトを使えばいいのでは?」と思う人もいるでしょうが、Siriにはスポットライトにはないアドバンテージがあります。それは、こちらの意図を汲み取ってくれるということです。

Siriに「今週作成したフォルダを探して」とリクエストすればその結果をリストアップしてくれますが、このとき「今週作ったフォルダが見たい」といっても同じ結果が返ってきます。機能に合わせて人間が話し方を考えなくても、ユーザの意図を読み取ってくれるのが最大のメリットなのです。しかも、該当するフォルダが表示されたあとに「デスクトップにあるものだけ」と伝えれば、Siriは先ほどのリクエストの続きであることも汲み取ってくれます。

まだまだスムースに答えてくれないことも多いですが、Siriはクラウドサーバによって言葉を解析するため、サーバ側のデータベースが蓄積されていくことでどんどん賢いアシスタントに進化してくれるはずです。かつて映画やテレビで見た未来のコンピュータが、今や私たちの手元にあるというわけなのです。

また、シエラのSiriでは、私たちの問いかけに対してリストアップしてくれた検索結果などを、通知センターに貼っておく機能もあります。一度調べたことを改めて調べることは案外多いもので、手軽に検索条件をとっておけるのは便利です。

先回りして支えてくれる

続いて、アイクラウドやiOSデバイスとの連係強化についても紹介しましょう。まず目玉といえるのが、デスクトップと[書類]フォルダを丸ごとアイクラウド・ドライブに同期する機能が搭載されたこと。もしも、自宅のMacで作成したファイルが職場や出先で突然必要になった場合でも、この2カ所が同期されていれば大抵カバーできるのではないでしょうか。アイクラウド・ドライブは、iOSデバイスからでもWEBブラウザからでもアクセスできるので、どこにいても素早く必要なファイルを取り出せます。

また、Macの内蔵ストレージがいっぱいになってきたときに、最近使っていないファイルを自動でクラウドに退避してくれるという機能も注目です。これまでは、ユーザが自分で不要なファイルを捨てたり、使用頻度の低いファイルを外付けストレージなどに退避していましたが、シエラではそれを先回りしてやってくれるのです。

一方、iOSデバイスとの連係に関しても多くの機能強化が行われましたが、中でも重宝するのが「ユニバーサルクリップボード」という機能です。「クリップボード」とは、コピー操作で一時的に記憶されるデータのこと。シエラとiOS 10ではこのクリップボードの情報が共有されます。つまり、iPhoneでコピーした文章や画像をMacでペーストしたり、あるいはその逆の操作が可能になるというわけです。レスポンスも良好で、ちょっとしたテキストならiPhoneでコピーした直後にMacでペーストできます。また、特別な設定や煩雑な操作は一切不要で、「どのデバイスのクリップボードを利用しますか?」などと確認されることもありません。今までの操作体系を一切変えず、同じ操作感で使えるのが魅力です。

シエラはこれらの目玉機能をはじめ、ほかにも膨大な新機能が追加されています。そしてそれらを俯瞰すると、シエラはユーザのやりたいことをより効率的に実現するための機能強化が充実したといえます。シエラにアップデートすることで煩雑な操作が減り、日々Macでやっていたことがより短い時間で達成できるようになるでしょう。