もっとも使いやすい環境で
本誌読者には、Mac以外に、仮想化ソフトやブートキャンプ、あるいは物理的なウィンドウズPCを利用されている方は多いと思います。現在のウィンドウズ環境が、自身のウィンドウズの用途に最適な環境なのか、疑問に思ったことはないでしょうか。
たとえば、マイクロソフト・オフィスを使うだけなのにウィンドウズPCを利用していたり、仮想化ソフトで3Dゲームをプレイしているが重くてストレスを感じていたりなど、ウィンドウズの用途とその手段のパフォーマンスのミスマッチが起きているケースが往々にしてあります。
逆に、仮想化ソフトやブートキャンプを利用しているものの、思ったより利用の幅が広がってMac内蔵ストレージの空きが足りなくなっており、ウィンドウズPCに移行したいという方もおられるかもしれません。
そこで今回は、ウィンドウズPCから仮想化ソフトやブートキャンプへ移行する、あるいはブートキャンプから仮想化ソフトへ移行するといった、さまざまなパターンでのウィンドウズ環境の移行方法について解説していきます。さらに、ウィンドウズの利用をもう止めて、OS Xに統合するという場合の移行方法についても併せて解説していきます。
ウィンドウズ環境の移行については、本連載でずいぶん前に扱っていますが、今はアイクラウドという便利な方法があり、ウィンドウズ間の転送でも使えるので、昔は面倒だったWEBブラウザのお気に入りや連絡先などのデータ転送が非常に簡単にできます。ウィンドウズPCからOS Xへの移行についてもアイクラウドが使えますが、「ウィンドウズ移行アシスタント」というアップル純正ツールがあり、今回はこれを利用して情報を転送する方法を解説します。
●仮想化ソフト
Parallels Desktop 10 for Mac
【発売】パラレルス
【価格】8500円 (アップグレード版5300円)
【STEP 1】考えられる4つの移行パターン
ウィンドウズの実行環境としては、ブートキャンプ、仮想化ソフト、物理的なウィンドウズPCの3つがあります。基本的にどの組み合わせでも使える移行方法が、ウィンドウズ転送ツールとアイクラウドを利用する方法です。これでユーザの書類やソフト設定、メール、連絡先、カレンダー、お気に入り(ブックマーク)を移行できます。ただし、ウィンドウズ10ではウィンドウズ転送ツールがなくなったので、サードパーティの「トゥドゥPCトランス」を使いました。
この方法はどのケースでも使える反面、作業が面倒です。利用条件は限られますが、より簡単な方法が使える方法があります。1つは「ブートキャンプから仮想化ソフトに移行する」場合で、仮想化ソフトのブートキャンプ領域を仮想マシンに変換する機能を使います。もう1つは「PCから仮想化ソフトに移行する」場合で、仮想化ソフトの転送機能が使えます。
さらに今回は、おまけでウィンドウズのデータをMacに移行する方法も解説します。
ブートキャンプから仮想化ソフト
(1)仮想化ソフトのパラレルスには、ブートキャンプ領域をそのまま仮想マシンに変換する機能があります。ただし、ウィンドウズのライセンスが製品版かDSP版に限ります。
PCから仮想化ソフト
(2)仮想化ソフトには、ウィンドウズPCからソフト、ドキュメント類を含めて丸ごと仮想マシン化する機能があります。ただし、ウィンドウズのライセンスが製品版かDSP版に限ります。
それ以外の転送方法
(3)ウィンドウズ10では、ウィンドウズ転送ツールがなくなったので、イーザス社の「トゥドゥPCトランス」フリー版を使いました。機能的にはほぼ同じです。
PCからMacに移行
(4)ウィンドウズの利用を止めて、OS Xに完全移行する方法を紹介します。アップル純正の「ウィンドウズ移行アシスタント」を利用します。
【STEP 2】ブートキャンプやウィンドウズPCから仮想化ソフトへの移行
ブートキャンプから仮想化ソフトへの移行については、「パラレルス・デスクトップ」にはブートキャンプを丸ごと仮想マシンに変換する機能があり、それを利用するのが一番簡単です。また、ウィンドウズPCから仮想化ソフトに移行する場合も、LAN経由でOSからユーザデータまで丸ごと転送して仮想化してくれる「パラレルス・トランスポータ」という転送ツールを使うのがもっとも簡単です。
ただし、これらの方法が使えるのは、製品版かDSP版のウィンドウズを利用している場合だけです。たとえば、ブートキャンプでウィンドウズ10を導入した多くの方は無償アップグレードを利用しているはずですが、アップグレード版の10を仮想マシンに変換するとライセンス認証が通りません。
PCからの移行でも、移行元がメーカー製PCの場合はほかのハードウェアでの利用は認められないので、やはり認証が通りません。
条件が合わずこの方法が利用できない場合は、次ページで紹介するSTEP3を利用してみてください。
ブートキャンプを丸ごと仮想化
(1)ブートキャンプ領域を丸ごと仮想化するには、いったんブートキャンプ領域から起動する仮想マシンを作成します。パラレルスウィザードで[ブートキャンプからウィンドウズを使用]を選択し、[続行]をクリックします。
(2)ウィンドウズの再認証が必要であることを確認したら、名称や仮想マシンの保存先などを決め、[続行]をクリックします。
(3)作成できたら、パラレルスコントロールセンターでブートキャンプの仮想マシンを右クリックし、[ブートキャンプのインポート]を選択します。
(4)変換後、ブートキャンプ領域は、ブートキャンプアシスタントで削除します。1つのライセンスをブートキャンプと仮想化ソフトの両方で使うことは、認められていません。
ウィンドウズPCを丸ごと仮想化
(1)[ファイル]メニューから[新規]を選んでパラレルスウィザードを起動します。[PCからウィンドウズを移行]を選び、[続行]をクリックします。
(2)転送元のPCが同じLAN内にあれば、[ネットワーク]を選びます。なければ十分な容量の外部ストレージを用意し、[外部記憶装置]を選びます。ここでは[ネットワーク]で説明します。
(3)6桁の数字が表示されます。その上のURLをクリックして、「パラレルス・トランスポート・エージェント」のウィンドウズ版をダウンロードしてPCにコピーします。
(4)PC側で「パラレル・ストランスポート・エージェント」をインストールします。PCを再起動するとこのツールが自動で起動するので、先ほどの6桁の数字を入力します。
(5)Macに戻ります。自動ログインを設定したあと、コピー項目の選択をします。ここでチェックを入れると、ユーザのドキュメント類をコピーせず、ウィンドウズとソフトだけを転送することもできます。
(6)仮想マシンの名称や作成場所を決めます。Mac側の容量が足りない場合は、[カスタマイズ]をクリックして、システム以外のパーティションを除外したりできます。
【仮想化知識】
上記のように、「パラレルス・デスクトップ」にはブートキャンプ領域を起動ディスクとして利用して仮想マシンを起動する機能があります。この起動方法は、ウィンドウズ8のライセンス条項の変更で認められなくなり、機能が削除されたのですが、なぜか10の発表後に復活しています。
【仮想化知識】
過去のメールについては、丸ごと移行ができるケースでは移行が可能ですが、それ以外のケースでは移行の手段がなかったり、うまくいかないことが多いようです。なお、GメールなどIMAP方式のメールを使っている場合はサーバに残っているので問題ありません。