エルキャピタン導入が不安?
OS Xをアップグレードすると、特定のハードやソフトに不具合が起きることはよくあります。特にエルキャピタンについては不具合が多いような印象です。
筆者の環境では、エルキャピタンにアップグレードしたところ、過去のメールの読み込みができなくなり、送信済みメールを全削除する羽目になりました。
また、愛用の「ハッピー・ハッキング・キーボード・ライト2」もドライバが未対応なので、[英数]キー、[かな]キー、[コマンド]キーなどの特殊キーが使えなくなりました。本誌の記事を書いている以上、ヨセミテに戻すわけにもいかず、慣れないキーボードでイライラしながらこの原稿を書いているわけです。
筆者のようにアップグレード時のトラブルに遭遇しないために、読者の皆さんにぜひ利用していただきたいのが、仮想化ソフトです。「パラレルス・デスクトップ」や「VMウェア・フュージョン」は最新版でOS Xエルキャピタンの仮想化に対応しているので、アップグレード前にエルキャピタンの仮想マシンを作成し、ソフトやハードの動作検証をすることができるのです。
すでにエルキャピタンにアップグレードして、特定のソフトが動かなくて困っているといった場合も、ヨセミテの仮想マシンを作成し、そのうえでソフトを利用することもできます。また、エルキャピタン上でエルキャピタン仮想マシンを作成し、ソフトやハードの動作を事前に検証可能になります。
そこで今回は、OS X仮想マシンの作成方法と使い方を解説します。ただ、仮想化ソフトはウィンドウズを動かすことをメインに設計されているので、OS X仮想マシンの場合、機能に制約があります。そこで、何ができて何ができないかも解説していきます。
●仮想化ソフト
Parallels Desktop 10 for Mac
【発売】パラレルス
【価格】8500円 (アップグレード版5300円)
【STEP 1】OS Xの仮想化の3パターン
今回紹介するOS X仮想化のパターンは、次の3つです。
1.すでにエルキャピタンにアップグレード済みだが、新たにソフトやハードを導入する際に事前検証したい人のための「エルキャピタン上でエルキャピタン仮想マシン」。
2.すでにアップグレード済みだが、不具合に遭遇したというケースで、特定のソフトやハードを動かすためにヨセミテを利用したい人向けの「エルキャピタン上でヨセミテ仮想マシン」。
3.まだエルキャピタンにアップグレードしていない人が、今使っているソフトやハードが正常動作するか事前に検証するための「ヨセミテ上でエルキャピタン仮想マシン」。
この3つ以外にも、「ヨセミテ・オン・ヨセミテ」というパターンも考えられますが、これは必要ないですね。
なお、今回は検証していませんが、古くからのMacユーザならヨセミテより古いマーベリックスやマウンテン・ライオン、ライオンでも、アップストアにダウンロード履歴があればダウンロードできるので、同じ方法で仮想化が可能なはずです。
ただし、お使いのMacで動作するOS X(プリインストールされていたOS Xと、それ以降のOS X)しかダウンロードはできません。ここ何年かにMacを買い換えた場合、Macアップストアの[購入済み]タブに以前のMacでのダウンロード履歴が残っていても、ダウンロードできないケースもあるということです。特に、つい最近、エルキャピタン搭載のMacを買ったというケースでは、エルキャピタンの仮想化しかできないので注意してください。
El Capitan on El Capitan
(1)?エルキャピタン上でエルキャピタンを仮想化するには、復旧パーティションからインストールできるので、非常に簡単です。
Yosemite on El Capitan
(2)エルキャピタン上でヨセミテを仮想化するには、Macアップストアの[購入済み]から「OS X Yosemiteインストール」をダウンロードしてインストールします。
El Capitan on Yosemite
(3)?まだアップグレードしていない状態で、エルキャピタンを仮想化するには、アップストアで「OS X El Capitanインストール」をダウンロードして、インストールをキャンセルしてインストーラを利用します。
【STEP 2】実際のMacと同じバージョンのOS Xを仮想化する
実際のMac本体(ホスト)と同じバージョンのOS Xで仮想マシンを作成するには、復旧パーティションを利用できるので、作成はとても簡単です。
新規仮想マシン作成ウィザード(パラレルスウィザード)で[復元パーティションを試用してOS X10・11をインストール]を選ぶだけで、エルキャピタン用の仮想マシンが作成され、OS Xのインストールが始まります。インストール後にパラレルスツールズをインストールすれば出来上がりです。
(1)パラレルス・デスクトップの[ファイル]メニューから[新規]を選んでパラレルスウィザードを起動し、[復元パーティションを試用してOS X10.11をインストール]を選んで[続行]をクリックします。
(2)?仮想マシンが作成され、OS Xのインストールが始まります。[主に日本語を使用する]を選んで[→]をクリックします。
(3)?OS Xユーティリティでは、[OS Xを再インストール]を選んで、[続ける]をクリックします。以降、通常のOS Xインストールと同じです。
(4)エルキャピタンのインストールに関する設定を行います。[続ける]をクリックします。
(5)?仮想ハードディスクとして作成された[Macintosh HD](約68GB)をインストール先に選び、[インストール]をクリックします。MacアップストアからOS XインストーラをダウンロードするためアップルIDを入力します。
(6)?ここではアップルIDでアイクラウドにサインインします。登録しなくても構いませんが、登録すればアイクラウド・ドライブでホスト側OS Xとファイル共有ができるようになります。
(7)?ここではアカウントを作成します。デフォルトではアイクラウドのアカウントを使用する形になっていますが、チェックを外せばローカルアカウントを設定できます。
(8)?デスクトップが表示されたら、ウインドウ右上の黄色い△の[!]をクリックし、[パラレルスツールズのインストール]を選びます。「パラレルスツールズ」のディスクイメージがマウントされるので、そこからインストールします。
仮想マシンファイルを外付けストレージに移動する方法
復旧パーティションからOS Xの仮想マシンを作成する場合は、自動的に内蔵ストレージに仮想マシンファイルが作成されます。内蔵ストレージがフラッシュストレージのMacの場合、空き容量に余裕がなかったりするので、仮想マシンファイルは外付けストレージに置いて利用するという方法もあります。デフォルトでは[書類]フォルダ→[パラレルス]フォルダにある仮想マシンファイルを、外付けストレージにコピーしてから、パラレルス上でその仮想マシンを削除したあと、[ファイル]メニューの[開く]で指定します。
(1)?仮想マシンファイルを外付けストレージにコピーしたあと、[パラレルスコントロールセンター]でその仮想マシンを右クリックし、[削除]を選びます。
(2)[ファイル]メニューから[開く]を選び、外付けストレージにコピーした仮想マシンファイルを選択します。
【仮想化知識】
【仮想化知識】OS Xライオン以降、OS Xの使用許諾では1台のMacにOS Xを2部までインストールすることが認められています。ですので、OS X上でOS Xの仮想マシンを作成する“MacオンMac”はライセンス違反にはならないので、安心してください。
【仮想化知識】
【仮想化知識】自動で作成されるOS Xの仮想マシンの構成は、デュアルコアのCPUで8GBのメモリを搭載したMacの場合で、プロセッサ2個、メモリ2GB、グラフィックスメモリ64MB、ストレージ68GBとなっています。