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自作キーボード入門にいかが? 「Gravity36」レビュー。左右分割キーボードキットで作るのは簡単! ただし使い込みの道は、険しく果てなく、奥深い…

著者: 関口大起

自作キーボード入門にいかが? 「Gravity36」レビュー。左右分割キーボードキットで作るのは簡単! ただし使い込みの道は、険しく果てなく、奥深い…

自作キーボードキット「Gravity36」を試す。

にわかに「自作キーボード」界隈が盛り上がっている。…気がする。

仕事柄、私のXのタイムラインにそういった情報が多いせいで、少々のバイアスはあるかもしれない。ただ、Mac Fan 2024年7月号の第2特集「自作キーボードのススメ」が好評だったことからも、市場に“熱”があるのは確かだ。

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しかし、じゃあやってみようと調べると、でっかい壁にぶつかる。

自作キーボードのハードルは、なかなか高い。知識が必要なのはもちろん、基板、ダイオード、マイコン、キースイッチ、キーキャップといったパーツを揃え、はんだ付けを行うための機材も必要と、“ちょっとお試し”がしにくいのだ。

以前、HHKB Studioのキーキャップ変更に楽しみを覚え、“カスタマイズ”に興味が湧いた筆者だったが、そんなわけで一歩踏み出せずにいた。

しかしこの度、GreenKeysより「Gravity36(1万4500円)」の提供を受けた。Gravity36のキットには、必要な材料がひととおり揃い、はんだ付けのオプション(1500円)も用意。まさに、自作キーボード入門にぴったりのキットというわけだ。

ただし、後述するが“自作の入門”ぴったりなのであって、誰でも手軽に使えるキーボードというわけではない。そこには自作キーボードらしい、奥深さと楽しさがある。「Gravity36」を使いこなすには、頭の構造を少々入れ替える必要がありそうだ。

自作キーボード「Gravity36」、アンボックス! 組み立て手順を見ていこう

自作キーボード入門にぴったりで、簡単に組み立てられるGravity36。しかし、公式サイトには組み立て手順がビデオで公開されているのみ。

テキストでの解説はなかったため、筆者はそれを観ながら組み立てた。もし、本記事を読んでGravity36デビューする方がいるようなら、以降の手順を参考にしていただきたい。

まずはGravity36の同梱物をチェック!

左からTRRSケーブル、キーキャップ&キースイッチプラー。袋の中には、M2ねじ(5mm)、M2スペーサ(10mm)、ゴム足が入っている。ケーブルとプラーはあくまで「試供品」という位置づけのため、より使いやすく、より自分らしいスタイルを求めるなら別途購入するのがおすすめだ。
左の袋に入っているのがメイン基板。右がアクリルプレートだ。
ハンダ付けオプション(1500円)を利用すると、USB Type-C ProMicro互換MCUが基板に装着された状態で届く。これが入門のハードルをぐっと下げてくれる。
Keyreative KAM ASTHAキーキャップセットも付属。カラーが施されたキーも5つある。KAMプロファイルのキーはすべて傾斜が同じなため、それらはどこに配置しても構わない。アクセントとして活用しよう(オールブラックもかっこいいが)。
今回のレビューにあたり、キースイッチもご提供いただいた。製品名は「Outemu Silent Lemon V3」。
スコスコとした打鍵感が気持ちいい。打鍵音も極めて静かだ。

トッププレートをねじ止めしよう!

まずはプレートの剥離紙を剥いていく。1箇所剥がれれば以降はスムースなのだが、かなり密着しているので、その1箇所を剥がすのが難しい。角から攻めていこう。組み立て作業で、もっとも時間がかかったのはここかもしれない。
計4枚のプレートを剥離紙から剥がせたら、トッププレート2枚にねじ止めしていく。トッププレートは、キースイッチを装着する四角い穴が空いたプレートだ。
付属のM2ネジとM2スペーサで止める。手と指でしっかり固定できた。4つ角と中央の2箇所、1枚につき合計6箇所止めていく。

プレート、基板、キースイッチ…。自作キーボードを組み立てよう!

続いて、トッププレートの穴と基板を合わせよう。なお、これは実際に使い始めてからも課題になるだろうが、プレートがアクリルゆえに指紋がかなり目立つ。こまめに拭きたいところ。
基板とプレートの穴の位置が合ったら、キースイッチを挿入。カチッとハマるが、基板がトゲトゲしているので指が傷つかないように注意したい。まずは4辺の頂点にキースイッチをはめ込んで、縦横のズレを抑えよう。
ボトムプレートを取り付ける。手順はトッププレートのときと同じだ。ただし、この場合はスペーサを回すことができないので、指で作業するのは大変である。できればドライバーを用意したい。
そしてゴム足。シール状になっているので、4つ角に貼り付けよう。
最後にキーキャップを装着。これで組み立ては完了だ。

「Gravity36」をMacBookに接続する。デフォルトキーマップの変更をお忘れなく!

Gravity36は、0から3まで、4つのレイヤーを備える自作キーボードだ。物理キーは36しかないが、巧みにレイヤーを切り替えることで、通常のキーボードと同じようなタイピングを実現する。

さっそく、そのカスタマイズ方法を解説していきたいところだが、まずはMacとの接続方法を見ていこう。

「Remap」でGravity36とMacBookを接続する手順

まずは左右のキーボードをTRRSケーブルで接続。そして、USB-CケーブルでMacとつなごう。この際、使うのは左右キーボードのどちらのポートでも良い。上図の場合、左のキーボードのポートを使用した。
続いて「REMAP」にアクセス。REMAPは、ブラウザ上でキーマップのカスタムなどが行えるツールだ。なお、Safariには対応していないため、別のWebブラウザを使おう。
トップページの[CUSTOMISE YOUR KEYBORAD]をクリックする。
開く画面で[+KEYBOARD]を選択。
画面左上にポップアップが表示される。[KLEC-02]を選択し、[接続]をクリックしよう。これでMacとの接続が完了する。

デフォルトキーマップをMac用に設定する

接続すると、REMAP上にキーマップが表示される。デフォルトでは、「Windows向け 日本語配列」となっているので、Mac向けに変更しよう。右端にある矢印のアイコン(赤枠)をクリック。サインインを求められるので、Googleアカウントなどを使ってアクセスしよう。
サインイン後、再度アイコン→[SHARED]をクリックすると、デフォルトキーマップの候補が表示される。
Mac向けの日本語配列か英語配列か、好みのほうを選択したら、画面右上の[flash]をクリック。これでキーマップが変更される。
こちらは日本語配列のMac向けデフォルトキーボード。
一方こちらは英語配列。MTと書かれているキーは、長押しすると上部のキー、短く押すと下部のキーとして働く。またLTは、長押しすると、上に書かれた数字のレイヤーに押している間だけ移動。短く押すと下のキーとして働く。
以降、キーの入れ替えは、REMAP上に表示されるキーの候補を表示されるキーボード上にドラック&ドロップすれば実行できる。最後に[flash]のクリックをお忘れなく。

自作キーボード、いざ入門! Gravity36の使い勝手やいかに?

というわけで、長い道のりだったがGravity36の組み立てと接続が完了した。1時間程度で作業を終えられたので、まさに自作キーボード入門にぴったりだと思う。

しかし、実際に使い始めるとなると話は変わってくる。前述のとおり、Gravity36はキーが少なく、レイヤーの切り替えを駆使して使うタイプ。すぐに使いこなせるものではない。いきなり仕事で使うと効率が落ちてしまうため、筆者はまず、自宅で試すことにした。

試し初めて数日経つが、まだヨチヨチ歩きといったところ。“自作”ということ自体が気持ちよく、早くも愛着が湧きつつあるが、使い慣れてしまうのも怖い。Gravity36は軽量で可搬性に優れているとはいえ、常に持ち運ぶのは億劫である。筆者は職業柄、出先で仕事をすることも多いのだ。

また、Gravity36に慣れきってしまうと、会社で使っているHHKB StudioやMacBookの内蔵キーボードを使った際、ミスタイプが多発するだろう。これは悩みもの。

たしかに自作キーボードは楽しい。またGravity36は、少しでも自作キーボードに興味がある人に、自信を持っておすすめできるキットだと思う。製品コンセプトである「チャレンジすることを楽しむデバイス」も、言い得て妙だ。

しかし、一歩足を踏み入れたら最後。その先には、険しく果てない、だが確実に楽しい旅路が続いている。

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著者プロフィール

関口大起

関口大起

『Mac Fan』副編集長。腕時計の卸売営業や電子コミック制作のお仕事を経て、雑誌編集の世界にやってきました。好きなApple Storeは丸の内。Xアカウント:@t_sekiguchi_

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