AppleファミリーのオーディオブランドBeatsから、新たなワイヤレスイヤフォンが登場した。その名も「Powerbeats Pro 2」。アスリートから愛されるベストセラーシリーズ「Powerbeats」の最新モデルだ。
同シリーズの新製品は、2019年に発売されたPowerbeats Pro以来、約6年ぶり。長い期間をかけて、「心拍センサの搭載」「Apple H2チップの採用」「アクティブ・ノイズキャンセリング機能の搭載」など、大幅なアップグレードを果たしている。

本記事では、発売前のブリーフィング、および実際に製品を数日間試した使用感をもとに、Powerbeats Pro 2をレビューしていく。
「Powerbeats Pro 2」。両耳に心拍センサを備え、ワークアウトを強力にサポート
Powerbeats Pro 2は、左右のイヤフォンそれぞれに心拍センサを搭載した。LED光学センサが毎秒100 回以上のパルスを発し、血流を測定。Apple純正の「ヘルスケア」アプリでデータをリアルタイムに確認できる。さらに、「Nike Run Club」「Slopes」「YaoYao–ジャンプロープ」といったサードパーティアプリとも連係する。
「Nike Run Club」:スポーツブランド「Nike」が提供するアプリ。走行距離の記録などができる。
「Slopes」:スキーやスノボーの滑走データを記録できるアプリ。雪山の3Dマップの確認も可能。
「YaoYao–ジャンプロープ」:縄跳びの記録アプリ。飛んだ回数のカウントやカロリー計算に対応する。

Powerbeats Pro 2を装着して運動を始めると、センサが自動でそれを検出して心拍計測をスタート。利用時にわざわざ操作する必要がないので、体験は極めてスムースだった。


心拍センサの使い方
Powerbeats Pro 2は自動で心拍を計測する。「設定」アプリ内に、“仕組み”を解説するページがあるので見てみよう。





着け心地を追求した、しなやかなイヤフックと5種類のイヤチップ
Powerbeatsシリーズは、外耳に引っ掛けて使うイヤフックが特徴的だ。Powerbeats Pro 2のイヤフックは、約1000名のアスリートを対象に実施したテスト結果をもとに再設計されたという。
高い柔軟性とグリップ感、快適性を追求し、ニッケルチタン合金を採用。前モデルと比べると20%軽量化しており、サイズもひと回り小さくなった。

実際に装着してみると、かなりの“固定感”がある。頭を振ってもズレず、耳や鼻のような“顔のパーツの1つ”といいたくなるほどだった。
カナル型でウィングチップを備える「Beats Fit Pro」も、安定感に優れたモデルだ。しかし長時間使っていると耳穴からズレ、落ちそうになったこともある。一方、Powerbeats Pro 2の試用期間中にそれを感じることはなかった。


イヤチップ装着状態テストの手順
Powerbeats Pro 2は、「イヤーチップ装着状態テスト」が利用できる。手順は、AirPods ProシリーズやBeats Fit Proで行う場合と同じだ。付属する5つのイヤチップから、自分に最適なサイズを選んでみよう。





Apple H2チップによる、Powerbeats Pro 2の“なめらか”なノイズキャンセリング
Powerbeats Pro 2は、AppleのH2チップを搭載した。H2チップは、アクティブノイズキャンセリングや空間オーディオを処理する、いわばこのイヤフォンの頭脳だ。ちなみに、AirPods Pro(第2世代)にも採用されている。
Beatsによると、AppleのAirPods開発チームと連係して作られたPowerbeats Pro 2は、“Apple製品らしい”仕上がりだという。筆者はその“らしさ”を、モード切り替えときの“なめらかさ”に強く感じた。
ノイズキャンセリングは、今や一般化した機能だ。ただ、製品によって精度は大きく異なる。ノイズをしっかり消せるか、というところもポイントだが、個人的には、外部音取り込みに切り替えたときの違和感が気になる。
その点、Powerbeats Pro 2のモード切り替えは極めてナチュラルだった。ありがちな、不快な風切り音といった不要なノイズがない。スーッと外界に接続する感覚だ。

なお、Powerbeats Pro 2のノイズ処理能力は、Apple製品との接続時に最大限引き出されるという。Mac、iPhone、iPadのNeural Engineにより、処理能力は他社製のデバイスと接続したときの最大10倍になるとか。
AirPodsの開発チームとの協力は、Appleの知見がBeats製品に活かされるということでもある。Beatsは今後、Appleが蓄積したデータはもちろん、Apple Intelligenceの活用も考えているそうだ。
空間オーディオに対応。Powerbeats Pro 2は、サウンド面も抜かりない
Powerbeats Pro 2のサウンドは、バランス感に優れた印象だ。
Beatsらしい低音の重厚感が心地いい。同時に、ボーカルと楽器類がそれぞれ粒立ち、独立した音として耳に入ってくる。ワークアウト時に聴きたくなるような、アップテンポな曲と相性がいいだろう。同時に、バラードを聴いたときの没入感もある。

強力なノイズキャンセリング機能により、電車移動中も、外をランニングしている間も、しっかり音楽を楽しめた。さらに、パーソナライズされた空間オーディオ、ダイナミックヘッドトラッキングへの対応も注目したい。
Powerbeats Pro 2は、アスリートともに開発されたイヤフォンだ。しかし、決して“ワークアウト専用機”というわけではない。優れた音質や没入感によって、映像コンテンツを楽しむ用途にも活躍するだろう。
最大45時間のタフなバッテリ。そして加速度センサと高性能マイクは、日常使いにも効く
Powerbeats Pro 2のバッテリは、イヤフォン単体で最大10時間。充電ケースの併用で、最大45時間持続する。さらに、たった5分の充電で最大1.5時間利用できる高速チャージ性能も頼もしい。Beatsによると、この電力効率にもH2チップが寄与しているという。

また、左右のイヤパッドに強化された加速度センサと高性能マイクを3つずつ搭載した。ハンズフリー通話中の「声を分離」機能の精度を、より一層高めてくれる。


Powerbeats Pro 2が追及した“アスリート向けの進化”は、一般ユーザのタウンユースにおいても恩恵がある。そのため、幅広いユーザにおすすめできるモデルだと思う。特にイヤフックによる安定感は、イヤフォンを落下させて紛失した経験がある人には刺さりそうだ。
また個人的には、レブロン・ジェームス、リオネル・メッシ、大谷翔平といったスポーツ界のスーパースターたちと“おそろい”ができるのも魅力に感じる。
彼らが躍動するスペシャル動画は、Beatsの公式YouTubeチャンネルで公開中。痺れるかっこよさなので、ぜひご覧いただきたい。
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著者プロフィール

関口大起
『Mac Fan』副編集長。腕時計の卸売営業や電子コミック制作のお仕事を経て、雑誌編集の世界にやってきました。好きなApple Storeは丸の内。Xアカウント:@t_sekiguchi_