※この記事は『Mac Fan』2024年1月号に掲載されたものです。
Macで作曲に励む宮本佳林さんには、気になるDTMツールがいっぱい!第20回は「Push」シリーズの新モデルを試してきました。
宮本佳林
歌手。ハロー!プロジェクト所属の女性アイドルグループ・Juice=Juiceの元メンバー。現在はソロ名義で活躍の場を広げている。趣味はアニメ・漫画鑑賞、射撃(シューティング)。
新モデル「Push 3」はスタンドアロンで使えちゃう! 「Push 2」からどれくらい進化してるかな?
今回訪れたのは、Abletonの東京オフィス。新製品「Ableton Push 3」について、同社認定トレーナーの岡本剛さんにお話を伺いました。
Push 3
- 【発売】
- Ableton
「Push 3」はDAW「Ableton Live」のコントロールデバイスとして人気の「Push」シリーズの最新モデル。64個のパッドと豊富な機能で、直感的にトラックを制作することが可能です。スタンドアロン版ではコンピュータに接続することなく、場所を問わず楽曲を制作できます。
岡本剛
「Push」シリーズは、「Ableton Live」というDAWを操作するためのコントロールデバイスです。先代の「Push 2」は触ったことがあるんですよね?
宮本佳林
はい! パッドを押しただけで直感的に曲が作れたのを覚えています。最新版は、どんなところが変わったんですか?
岡本剛
まず、このAbleton Push 3を見て気づくことはありませんか。
宮本佳林
うーん、PCとつながっていないのに音が出ている…?
岡本剛
そうなんです。今回のAbleton Push 3では、CPUとメモリ、SSD、Wi-Fiが組み込まれたスタンドアロンモデルが出ました。Ableton Liveの入門版がプリインストールされていて、これ1台で音楽制作ができます。
宮本佳林
音源が内蔵されているんですね。
岡本剛
スタンドアロンの何がいいかというと、パソコンの画面を見ずに音楽制作に集中できることが挙げられます。
宮本佳林
わかります…! 画面を見ながらやっていると、「こういう音楽をつくりたい」という初期衝動を忘れて、ロジックで考え始めてしまうんですよね。発想が狭まっちゃうというか…。
新しいMIDI規格「MPE」にも対応。パッドを押す強さや、スライドする方向で音が変わるんだ!
岡本剛
もう一つの大きな変化は、パッドが「MPE」に対応したこと。MPEは「MIDI Polyphonic Expression」の略で、ピッチベンドなどのコントロールをノート別に制御できる新しいMIDI規格です。この中にはMPEに対応したサウンドが入っているので、それを設定して音を鳴らしてみましょう。
宮本佳林
わー! パッドの上で指を動かしたら、音が変わった!
岡本剛
MPE対応パッドでは、横軸と縦軸で、指の圧力と位置を検知できるんです。一つのパッドの上、下、右、左で音のニュアンスが変わります。
宮本佳林
少しの圧力で変化するんですね。こういう音って、打ち込みで作るのがめっちゃ大変で…。こんな簡単にできるなんてすごい!
岡本剛
MPEに対応したギター音源だと、パッドの上で指を横に滑らせることで、スライド奏法をしているような音が鳴るんです。またハイハットでは、パッドの下を押すと閉じた音がして、上を押すと開いた音が鳴ります。
宮本佳林
うわ、音がちゃんと変化する! 生音みたい。
岡本剛
楽器を演奏している感覚で、簡単に複雑な音が鳴らせるんです。あとは右上にジョグホイールがついて、音選びなどの操作を素早く行えます。
宮本佳林
音選びは大変ですからね…。膨大な数の音をチェックしていると、曲を作るまでたどり着かないこともあります(笑)。
岡本剛
Ableton Push 3なら選択するだけでサンプル音が鳴るし、気に入った音があれば「フェイバリット」に入れることができて、あとから探しやすいですよ。
宮本佳林
その機能、助かる…!
もしかして私、才能アリ? 多機能でしかも楽しいから、“その気”になってきちゃった…!
岡本剛
Ableton Push 3はオーディオインターフェイスも内蔵していますし、ミキサー機能やギターのアンプシミュレータも入っています。
宮本佳林
これ1台で何でもできちゃいますね。そう考えたら、かなりお手頃価格かも!
岡本剛
コントローラ版のAbleton Push 3を買ったとしても、今後発売予定の専用キットを使えば、スタンドアロン版にアップグレードできるんです。長期使用を前提にしていて、ハードディスクなども交換できるようになっています。
宮本佳林
ありがたいですね。機能も多いから末永く使えそうです。私が一番いいなと思ったのは、音楽制作を楽しんで続けられそうなところ! 簡単にビートやフレーズが生み出せるから、自分に才能があるような気がしてきます(笑)。
岡本剛
考えすぎないでトライ&エラーを繰り返して、いいのができたら採用するのが、良い曲をつくるコツだと思います。
宮本佳林
考えがちな私でも、Ableton Push 3ならそれが実現できそうです!