ぼくが登山やフライフィッシングを仕事の一つにしていることは、この連載でも何度か触れてきた。
釣り初体験は幼稚園に入る前で、登山は小学校低学年。それ以来、そういったアウトドア遊びや冒険活動は、常に、ぼくの人生の中心にあった。
小中校ではツーリング自転車、高校ではオフロードバイクで、池や湖、山や森へ繰り出していた。大学では、バイト代を貯めてオンボロのバンを買って、キャンピングカーに改造。学生時代の大半を、その相棒に乗っての、日本中へのフィッシング冒険トリップに費やした。
15年間のレコード会社時代も、どんなに忙しくても、隙あらば、釣りや登山、キャンプに出かけ、年に一度は必ず9連休以上取って、ニュージーランドへ冒険の旅に出ていた。これは言うまでもなく、当時の日本社会の常識に反する行為だったが(今でもきっとそうだろう)、どんなに陰口を叩かれも、毎年、ほぼすべての有休をしっかり消化していた(笑)。
そうやって20年以上、〝本気で遊んでいる〟うち、レコード会社勤務中から、アウトドア関連の複業をスタート。まず30歳でフライフィッシングのセミプロになり、30代半ば過ぎからは、登山雑誌やアウトドア雑誌で原稿を書くように。
さて、前置きが長くなったが、大きな反響をいただいている、ぼくが旅で愛用する「UL(超軽量)ギア」を紹介するこのシリーズ。前号でガジェット系が終わったのを受けて、ここからは服、靴、小物、パッキングギアに入ってみたいと思う。
なぜ冒頭で、アウトドアエキスパートとしての経歴を書いたかと言うと、これから数回に分けてご紹介するギアやウエアたちの多くが、アウトドアブランドのものになるからだ。そして、それらを選ぶぼく自身が、その道のプロであることをお伝えしたかったのである。
「軽いこと」、「コンパクトであること」、「頑丈であること」、「デザインがいいこと」といった、ぼくがギアを選ぶ際の基準のメインどころを、これらアウトドア製品はクリアしてくれている。特に、道具と服の性能と重量が〝命のリスク〟に直結する登山用具が9割近くを占める。
クライミングや登山の各ブランドは30年近く、「軽量化」という命題を追求してきた。そして最近では、デジタルデバイス含む、街で使うものにも軽量化の波が押し寄せている。ぼくにとっては、とても喜ばしいムーブメントだ。
だが、大半の人たちが「服の重さ」に関しては、未だまったく無頓着。でも実は、旅の荷の大半を占めるのが衣類であることをご存知だろうか。ぼくは、命に関わる登山ではもちろん、移動生活でも、荷を極限まで軽くすべく、1gでも軽い服を日々探し続けている。理由は簡単、身軽に旅を楽しみたいから。そんなぼくのULウエアを次号から紹介したいと思う。
最後にお知らせを。ぼくが5年以上連載を続けている登山雑誌『PEAKS』の今月号で、表紙と巻頭特集20ページにわたって登場している。書店で手に取っていただき、ぼくの「本物のULヘンタイ」の真髄に触れていただければ幸いだ。

※この記事は『Mac Fan 2017年8月号』に掲載されたものです。
著者プロフィール

四角大輔
作家/森の生活者/環境保護アンバサダー。ニュージーランド湖畔の森でサステナブルな自給自足ライフを営み、場所・時間・お金に縛られず、組織や制度に依存しない生き方を構築。レコード会社プロデューサー時代に、10回のミリオンヒットを記録。Greenpeace JapanとFairtrade Japanの日本人初アンバサダー、環境省アンバサダーを務める。会員制コミュニティ〈LifestyleDesign.Camp〉主宰。ポッドキャスト〈noiseless world〉ナビゲーター。『超ミニマル・ライフ』『超ミニマル主義』『人生やらなくていいリスト』『自由であり続けるために 20代で捨てるべき50のこと』『バックパッキング登山大全』など著書多数。