【企業IT担当者が押さえたい!】“AI処理に強いAppleシリコン搭載Mac”を支える、「ユニファイドメモリアーキテクチャ」とは何か?

2026.07.15 今井隆 約7分
【企業IT担当者が押さえたい!】“AI処理に強いAppleシリコン搭載Mac”を支える、「ユニファイドメモリアーキテクチャ」とは何か?
Photo●Apple

生成AIの企業利用が急速に広がる中、AIをクラウドだけでなくデバイス上でも高速かつ安全に処理できる「AI PC」が注目を集めています。中でも、MacBook NeoやMacBook AirをはじめとするAppleシリコン搭載Macは、高いAI処理性能を備えた選択肢として、企業導入の場面で存在感を高めています。

では、Appleシリコンの高いAI処理能力は、どこから生まれるのでしょうか。その鍵を握る技術の1つが、「ユニファイドメモリアーキテクチャ」です。これまでWindows PCを中心に導入・運用してきた企業のIT担当者の中にはUMAについて耳にしたことはあっても、その仕組みや従来のWindows PCとの違いまでは理解していないという方も少 なくないでしょう。そこで本記事では、ユニファイドメモリアーキテクチャの基本的な仕組みやメリットをWindows PCとの違いを交えながらわかりやすく解説します。

Appleシリコンが採用する統合メモリの仕組みとは何か?

Macの心臓部であるAppleシリコンの最大の特徴は、ユニファイドメモリ(統合メモリ)をその中核に置く、ユニファイドメモリアーキテクチャ(UMA:Unified Memory Architecture)にあります。UMAではメモリを中心として、それを取り囲むようにCPU(メインプロセッサ)やGPU(グラフィックプロセッサ)、Neural Engine(AIプロセッサ)やメディアエンジンなどの処理ユニットが配置され、それらの処理ユニットが共同でメモリ上のデータを処理する構造になっています。

一方、一般的なWindows PCではCPUがシステム全体の管理を担っていて、GPUやNPU(AIプロセッサ)はCPUからの指示を受けてデータの処理を行います。メモリの管理もOSとCPUが主体となり、GPUやNPUに必要な分のメモリを割り当てるシェアードメモリ(Shared Memory)アーキテクチャとなっています。

AppleシリコンのUMAでは、統合メモリ(机)全体をさまざまな処理ユニット(スタッフ)が共有します。その上のデータ(書類)はみんなで共有することができ、スタッフ全員が協力して作業を行うスタイルです。ここではCPUやGPUなどの処理ユニット全員がスタッフです。
Windows PCでは、CPU(管理者)がGPUやNPUなどの処理ユニット(スタッフ)に仕事を指示します。処理ユニットが必要とするメモリ(机)はCPUがOSを介してGPUやNPUに必要な分を割り当て、処理ユニットは自分に与えられたメモリ上でデータ(書類)の処理を行います。

ユニファイドメモリアーキテクチャのメリットは?

UMAの最大のメリットは、それぞれの処理ユニットがメモリ全体を共有できるため、より少ないメモリで多くの処理を行えることです。つまり同じ処理を、Windows PCよりも少ないメモリで実現できます。

メリットはそれだけではありません。UMAではメモリ上のデータにどの処理ユニットからもアクセスできるため、メモリ上のデータ移動が最小限で済み処理が速くなります。macOSは早い時期からUMAをシステムの中核に組み込んでいたため、Mac上で動くアプリは特に意識することなくその恩恵を受けることができます。

一方、Windows PCの場合はCPUやGPU、NPUなどの処理ユニットの仕様や機能、接続方法などが採用するプロセッサメーカーによって異なります。たとえばIntel、AMD、Qualcommなどがリリースしているプロセッサはアーキテクチャがそれぞれ異なっており、さらにGeForceやRadeonなどの外部GPU(+専用のビデオメモリ)を持つシステムもあります。このためWindowsはハードウェアを抽象化(共通基盤に載せ替える)する必要があり、処理ユニット間のメモリ共有は大きく制限されてしまうのです。

ユニファイドメモリアーキテクチャのルーツは意外なところに

AppleがUMAを発表したのは、2020年11月のMac向けAppleシリコン「M1」の発表時でした。これ以降登場したMac向けのAppleシリコンには、すべてUMAが採用されています。

しかし、実際にはAppleは2013年に発表したiPhone 5s(世界初の64ビットスマートフォン)に採用された「A7」プロセッサですでにUMAを採用していたのです。翌年開催された開発者会議「WWDC14」において、Appleはその事実と利用方法をデベロッパに公開しています。そこではA7がユニファイドメモリシステムとして設計されていること、CPUとGPUがあらゆるメモリやストレージを共有すること、暗黙のコピーが存在しないことなどが示されました。この当時からすでにAppleはUMAの優位性を見越し採用していたことがわかります。

2013年にリリースされたiPhone 5sのApple A7では、すでにUMAの概念である「統合メモリシステム」が実現されていました。WWDC14のセッション中でAppleは、「CPUとGPUがデータのやり取りのためにまったく同じメモリを共有している」、「共有のためにデータをコピーする必要はない」と解説しています。
【URL】https://developer.apple.com/jp/videos/play/wwdc2014/603/

iPhoneのプロセッサにUMAが採用された目的は、限られたメモリ資源の有効利用と、メモリ上のデータ移動の削減です。これによって少ないメモリで多くの処理ができるようになるだけでなく、処理速度の向上とバッテリ消費の抑制に大きなメリットが得られます。このUMAの特徴はMac向けのAppleシリコンである「Mシリーズ」に引き継がれ、比類なき高性能と優れた省エネルギー性を両立しているのです。

一方でWindowsでは、長い間CPUとGPUが利用できるメモリは別でした。CPUはメインメモリ、GPUはビデオメモリをそれぞれ専用に持ち、お互いにメモリを融通し合うことは難しかったのです。現在ではCPUにGPUを統合した「iGPU(Integrated GPU)」が主流になり、メインメモリの一部をGPUに割り当てる共有メモリが当たり前になりましたが、Windowsはそれ以前のプロセッサや、ビデオメモリを前提にしたアプリをサポートする必要などから、共有メモリのメリットを活かせるシーンは限られています。

ユニファイドメモリアーキテクチャが支えるMacの圧倒的なスケーラビリティ

そのUMAがその威力をさらに発揮するのが、さらに強力なAppleシリコンである、MシリーズのPro、Max、Ultraといった上位プロセッサです。これらのプロセッサではユニファイドメモリの速度(メモリ帯域)を2倍、4倍、8倍に拡張し、そこにより多くの処理ユニットを載せています。

また、搭載できるメモリ容量も上位モデルほど多くなっており、たとえばMacBook Proに搭載されたM5 Maxでは最大128GBのメモリを最大614GB/秒という高速なメモリバスで接続し、最大40コアのGPUを搭載しています。つまりGPUとメモリ速度がセットで性能アップするため、上位モデルを選択することで性能やユーザ体験がスケーラブルに向上することも、Windows PCに対する大きなアドバンテージになっています。

Mac用のAppleシリコンには、ベースとなる「M」、ミッドレンジの「M Pro」、ハイエンドの「M Max」という3つのモデルが用意されていますが、いずれもメモリの速度とGPUコアの数が約2倍、約4倍に強化されます。さらにその上にはM Maxを2つ結合(ウルトラフュージョン)して性能を倍増した「M Ultra」も用意されています。
【URL】https://www.apple.com/jp/newsroom/2023/10/apple-unveils-m3-m3-pro-and-m3-max-the-most-advanced-chips-for-a-personal-computer/

AI処理で強みを発揮するユニファイドメモリアーキテクチャ

最近ではパソコンの使い方もAI利用中心へと変わりつつあります。パソコン上で大規模なAIモデルを動かすには、サイズが大きいモデルを搭載するための大容量メモリが欠かせません。

MacではUMAによって搭載メモリの多く(標準で最大75%、それ以上も可能)をGPUに割り当てることができるため、より高性能な(賢い)AIモデルを少ない搭載メモリで動かすことができます。さらにmacOSはCPU、GPU、Neural Engineのすべてを使ってAI処理を行うことができ、そこでも統合メモリシステムであるUMAが大きなメリットとなっているのです。

TAGS #AI #Mac

企業ITを見直すきっかけを、メールでお届けします。

業務端末・IT環境を見直すための視点や、
Appleテクノロジーに関する判断材料をお届けします。