より魅力的な体験を
基調講演では、アップルTVの新OS「tvOS 12」が発表された。その中でも大きな注目を集めているのが「ドルビーアトモス(Dolby Atomos)」に対応し、この秋からiTunesを通じて世界最大規模での配信が始まることだろう。
ドルビーアトモスは、最大128個の音響素材を元にリアルタイムレンダリングを実施し、映画館では最大64ch、家庭用でも9・1・2chのスピーカを使って再生する最先端のオーディオ技術。対応するコンテンツも2012年の映画「メリダとおそろしの森」を皮切りに年間30本以上のペースで発表されており、近年の人気タイトルであればそのほとんどがドルビーアトモスを楽しむことができるようになっている。
まさに今が旬ともいうべきドルビーアトモスがアップルTVに対応することによって、これが現時点では世界最小、そしてもっともリーズナブルな製品という位置付けになるだろう。加えて4K HDR出力を可能にするドルビービジョン(Dolby Vision)にまで対応するストリーミングプレーヤとしては世界で唯一となる。対応するコンテンツのほとんどがiTunesを通じて視聴できるだけでなく、すでに対応タイトルを購入されたユーザは無料で4K HDR+ドルビーアトモス版にアップグレードというダウンロードコンテンツならではの柔軟なサービスまで提供される。
デジタルハブふたたび
アップルTVはフールーやネットフリックス、DAZNなど、人気の番組やスポーツを配信するプロバイダを数多く抱えており、現在も続々と参入が続いている。今回の基調講演の中でも対応チャンネルは100以上になるとアナウンスされているが、アップルTVを使うことでテレビで視聴できるコンテンツの選択を莫大に増やすことが可能になる。
今後、オンデマンドに対応する番組が増え続けていけば、従来のテレビ視聴スタイルをひっくり返すだけの存在感を持つことになる。この戦略を10年以上の歳月をかけてこつこつと続けてきたアップルは、いままさにこの業界のリーダーの座を掴む目前にまで迫っているのだろう。
さらにテレビは番組を視聴するだけでなく「画面が大きい」という特性もほかのアップル製品にはないメリットをもたらす。天気予報やニュース記事など、リアルタイムに変化していく情報は自宅にいるのであればiPhoneで検索するよりも、すぐに目に付くテレビに表示されたほうが便利だ。操作に関してもシリに頼むことによって簡単に、素早く目的となる情報にたどり着くこともできる。
この据え置き型、という特性は別の分野でも活きてくる。今回、新しいmacOSモハベでも追加されたアプリ「ホーム」は、自宅内にあるさまざまなアクセサリと連動し、コントロールすることが可能になっている。アップルTVはそのアクセサリの中心となる「ホーム・ハブ」の役割を担う機能を持ち、ホームアプリからの制御、スケジュール管理はもちろん、外出先からiPhoneやiPadで制御することも可能になる。
これらはほかのアップルデバイスが持ち得ない特性であり、また組み合わせることでより豊かな生活が訪れる魅力的な機能であることも間違いないだろう。アップルTVはまさに「金の卵」であり、これからもアップデートがもっとも楽しみな分野のひとつとして期待できるものなのだ。
待ちわびた対応
空間を利用して天井からも反響させながらよりリアルな体験を提供するDolby Atoms。Apple TVへの対応は、まさに待望だった。
コンテンツがリッチに
スクリーンセーバのコンテンツもよりリッチに、そして撮影地の情報を調べられるナビゲート機能も追加される。