iOSアプリがMacに
アップルは、今年のWWDCのキーノートの最後に現在進行中の長期プロジェクトのスニークピーク、Mac向けアプリケーション用の新しい開発フレームワークを公表した。iOSアプリの開発フレームワークであるUIKitを利用して、iOSアプリをMac向けに移植しやすくする。
これだけの説明だと、やはりアップルはiOSをこれからのプラットフォームと見据えて、iOSとmacOSを統合しようとしていると思うだろう。だが、このプロジェクトはむしろ逆である。MacをMacとして成長させる取り組みだ。
MacユーザはMac用に開発されたソフトだけを使っているわけではない。たとえば、ブラウザを使ってネットフリックスのドラマを視聴している。ほかにも、クロスプラットフォーム向けに設計されたゲームをメタル環境でプレイすることも可能だ。
iOSアプリはすでに数百万個も存在し、MacユーザがMacでも使いたいと切望しているアプリが少なからずある。好例はネットフリックスだろう。WEBアプリではなく、モバイルと同じようにMacでもネイティブアプリで視聴したいというユーザは多い。
これは今日多くの開発者が抱える悩みのソリューションにもなる。デバイスの多種多様化が進む中で、何かサービスを提供するときに、あらゆるデバイスをカバーするのが顧客に対する大きな訴求になる。しかし、モバイルからPC、家電まで、あらゆるOS向けに製品を用意するには莫大な開発リソースが必要だ。提供開始後もサポートやアップデートに追われて、なかなかPC向けのアプリまで製品を拡大できない。
今は多デバイス時代
macOSとiOSは同じ基盤技術を共有している。違うのは、アプリケーションのユーザインターフェイスを担うフレームワークのみだ。Macはネクストのアプリケーションキットから受け継がれてきたAppKit、iOSにはモバイルデバイス向けのタッチインターフェイスやウインドウ処理などを担うUIKitが採用されている。
そこでアップルは、UIKitのキーフレームワークに手を加え、それらをMacの開発フレームワークに持ち込み、iOS向けに開発されたアプリがMacのユーザインターフェイスや機能で破綻なく動作するようにした。それによってiOSアプリ開発者は、わずかなコードの変更のみでiOSアプリをMacに移植できる。
この開発フレームワークのプロジェクトは数年規模を想定したもので、今年は第1フェーズ。アップルが自身のアプリで試し、そして来年にはサードパーティの開発者に門戸を開く予定だ。
iOSアプリの移植のインパクトは、Macにどのような変化を与えるだろうか。アプリの増加でMacの成長ペースが向上し、Mac向けソフトの開発も活発になるプラス循環が起きるかもしれない。逆にiOSアプリからの移植ばかりになって、Macの良さが失われる可能性も考えられる。今はまだ情報が限られるため、確かな予測や分析は難しい。はっきりしているのは、これからもMacはMacとして進化していくこと。そしてアップルが多デバイスへのアプリ提供のサポートに積極的であるということだ。今はiOS系とmacOSの2つだが、噂されるARデバイスなど、多デバイス化がさらに進む未来を見据えた布石とも考えられる。
答えは「NO」
PC市場が減速したとき、iPad Proの新製品が登場したときなど、繰り返し飛び交ってきた「iOSとmacOSは統合される?」という噂、今回クレイグ・フェデリギ氏がはっきり「ノー」と否定。
iOSアプリがMacに移植
macOSとiOSで異なっていたアプリケーションのフレームワークの一部を共通化し、トラックパッドやマウスによる入力、ウィンドウのリサイズ、スクロールバー、ドラッグ&ドロップといったMacのインターフェイスに対応するiOSアプリの移植を可能にする。