【実践テク7】空の青色を濃くして南の島の雰囲気を再現する
画面内に明るい要素が多いシーンでは、普通にシャッターを切っただけでは少し暗めに写ってしまうことがよくある。ここで、全体が暗いからといって明るく補正すると、色が浅くなってしまう。そこで今回は、風景写真を写真を明るくしつつ、目の覚めるような青空や南の島らしい海の色を再現してみよう。ポイントとなる機能はLightroom CCの[自然な彩度]と[カラーミックス]だ。これら2つを使いこなせれば、さまざまなシーンで色のコントロールが簡単になるはずだ。
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【STEP 1】雲のディティールに注意して[露光量]をアップする
全体が暗く写ってしまっているため、[ライト]→[露光量]を「+0.6」で全体を明るくする。露光量は明部と暗部両方明るくするため、やり過ぎると雲のディティールが飛んでしまうので注意。[露光量]で明るくしきれなかった右の建物の陰暗部は[シャドウ]を使って明るくする。ここでは「+100」までいっぱいに明るくした。iPhoneの写真は、単純に明るくすると明部が簡単に飛んでしまうため、露光量とシャドウの使い分けが重要だ。
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【STEP 2】[自然な彩度]を調整して色に深みを出す
写真を明るくすることはできたが、それにつられて色が浅くなってしまった。青空の色を濃くするために[カラー]→[自然な彩度]を「+40」とし、海の色をスッキリさせる。[自然な彩度]は画面の中でも特に緑~青系の色を優先して鮮やかにしてくれるため、風景写真の補正では頻出の機能だ。「とりあえず明るくして自然な彩度を上げる」という使い方だけでも、写真の見栄えがグッと良くなるはずだ。
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【STEP 3】「カラーミックス」機能で細部の色味を調整する
さらに色を細かく調整したい場合は、[カラー]→[混合]の[カラーミックス]を使おう。画面内の任意の色を選んで「色相」「彩度」「輝度」の各スライダを調整してもよいが、4方向に矢印の出たアイコンをタップして、画面内の色を変えたい部分を直接左右にドラッグすることで直感的に色を補正することもできる。「元の色がよくわからない」という場合に重宝する機能だ。ここでは海のエメラルドグリーンをより鮮やかにする方向で調整した。
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【STEP 4】水平と構図を整え明るさをミックス
切り抜きで水平と構図を少し整えた。水平線がキッチリ写っている写真は、微妙に傾いていると気になるためしっかり補正しておきたい。最後に[カラー]→[露光量]で雲のディティールが飛ばない程度まで明るさを増し、[コントラスト]を「+20」まで上げてメリハリをつけた。
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【実践テク8】どんよりとした曇り空をスッキリとした青空に変える
せっかく旅行に出かけたのに空はどんより曇り空…これが青空だったらよかったのになぁと思ったことがある人は多いだろう。こんな場合はせめて写真だけでも青空に変えてみよう。使うのはプロのレタッチャーやカメラマンも御用達の「Photoshop CC」のアプリ版「Photoshop Mix」だ。ちょっと前まではMacと数万円もするアプリでないとできなかった作業が、今や無料のアプリを使うだけでそれなりの合成ができてしまう。「Lightroom CC」に比べるとやや複雑な操作だが、何度か練習すればすぐに身につくはずだ。
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【STEP 1】新規プロジェクトから写真を2枚読み込む
「Photoshop Mix」で作業するためには、まずプロジェクトを作る。右上の[+]アイコンで新規作成しよう。続いて作業に使う画像を指定。カメラロールに保存された写真を使うなら、[iPhoneから]を選択しよう。読み込む写真は、「曇り空の写真」と「合成用の青空が大きく写った写真」の2枚だ。青空の写真→曇り空の写真と読み込むと、後々の作業がスムースだ。
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【STEP 2】スマート機能で空だけを切り抜く
右側のレイヤーが下に青空、上に曇り空と並んでいることを確認したら、上のレイヤーを選択して下の[選択して切り抜き]→[スマート]を選択。「スマート」機能は、アプリが境界線を自動で認識するため、ざっくり指定するだけで空の部分が高精度に選択可能だ。ある程度空と地上の境界線近くまで塗り進めると、自動で空の部分が選択でき、下の青空の写真が見えてくる。
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【STEP 3】階調反転を使って選択範囲を逆転させる
このままだと曇り空が残って地上が隠れてしまうため、[調整]→[階調反転]を使って選択範囲を逆転させる。すると、曇り空部分のみ下層の青空が現れ、合成できる。
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【STEP 4】消しゴムを使って細かいポイントを修正
しかし、よく見ると空と地上の間に不自然な部分がいくつかある。この場合は[基本]を選択し、手動で細かく修正する。ポイントは「−」のついた消しゴムを使うことと、サイズを小さくして作業することだ。曇り空が残っている部分を手で塗っていけばOK。細かな作業のためスタイラスペンで作業するとやりやすい。
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【STEP 5】Lightroom CCで全体のメリハリを調整
空の合成ができたら画像を保存して、「Lightroom CC」アプリで全体を調整する。「Photoshop Mix」内でも調整できるが、全体調整なら 「Lightroom CC」のほうが高機能だ。曇りの日は地上部分が暗く、メリハリがない状態で写ってしまうため、[露光量]と[シャドウ]を持ち上げて明るくし、[コントラスト]、[かすみの除去]、[自然な彩度]で明暗差や色にメリハリを付けて完成とした。
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【実践テク9】写真にテクスチャを重ねてアーティスティックに表現する
写真の合成は、「曇り空を青空に変える」というような使い方のほかに、2枚の写真を重ねてアーティスティックな効果を楽しむこともできる。中でも初心者が簡単にできるのは、明暗差の大きな被写体の下にテクスチャ画像を重ねる方法だ。一部のカメラアプリでも[多重露光]という機能でこの方法が使えるが、「Photoshop Mix」を使えば、撮影後にじっくりと写真の重ね方を吟味して楽しめる。これなら新しく写真を撮ることなく、自分のカメラロールの写真を組み合わせていろいろな表現を試すことができておもしろい。
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【STEP 1】ベースとなる写真の明暗差を上げておく
ベースになる写真は、明暗差の大きな写真がやりやすい。そのため、「Lightroom CC」でコントラストの強い写真を作っておこう。コントラストを強くするには[ライト]→[コントラスト]を大きくするだけでなく、[白レベル][黒レベル]で調整するとよい。
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【STEP 2】Photoshop Mixに写真を2枚読み込む
「Photoshop Mix」を開いて、2枚の画像を重ねる。レイヤーの順番は、下にテクスチャ画像、上に先ほど調整したベース画像という順番にしよう。テクスチャ用画像はどんなものでもよいが、はじめは花畑や青空など画面全体がシンプルで模様や色がきれいなものが使いやすい。慣れてきたらもっとクセの強い画像を重ねるのも面白いだろう。ここでは紅葉の写真を選択した。
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【STEP 3】元画像を選択してブレンドモードをタップ
上のレイヤーを選択した状態で、下の[ブレンド]をタップ。[比較(暗)]や[乗算]などさまざまなブレンドモードが表示されている。傾向として、ベースの暗部に重なるタイプと明部に重なるタイプがあるが、これらのブレンドモードは特に覚える必要はない。自分の好みの効果になっているものを直感的に選んでいけばOKだ。今回は[乗算]をセレクトした。
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【STEP 4】ブレンドを変えて自由にミックス!
たとえば、同じ画像で「スクリーン」を使って重ねるとベースの白い部分が残り、黒い部分に下の画像が浮き出てくる効果となる。また、下層の画像をいろいろ別のものに置き換えてもよいだろう。これは飛行機から見た地上の風景を重ねてみた例だ。
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【実践テク10】撮影した写真の中から不要なものを消し去る
観光地に行くと、「ここは人物が入っていないほうが絵になるなぁ」と感じるようなシーンに遭遇することも多いだろう。このような場合は「Photoshop Mix」の姉妹アプリである「Photoshop Fix」を使って不要なものを消し去ってしまおう。「Photoshop Fix」にはMac版の「Photoshop CC」の機能の一部が継承されているため、高精度な除去機能を使うことができる。特殊な技術を必要とせず指でなぞるだけで消えるため、人物以外にも意図せず写ってしまった空の電線やSNSでは見せられないプライベートなものなど、撮影後に気づいたちょっとした不要物を手軽に消し去ることが可能だ。
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【STEP 1】新規プロジェクトを作り[スポット修正]を選択
「Photoshop Fix」を起ち上げたら、右上の「+」アイコンで新規プロジェクトを作成し、不要物を除去したい写真をカメラロールから選択。画像を開いたら[修復]→[スポット修復]を選択しよう。消す場合は、消したい部分のみ拡大して作業するのがやりやすい。サイズは初期設定の「30」程度でOKだが、大きすぎるようなら調整しよう。硬さは、スポット修正を使う場合は初期設定の「50」ではなく「70~80」くらいにしておくと精度良く消せる。
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【STEP 2】多少はみ出る程度に消したいものをなぞる
スポット修正は消したい部分をただ塗るだけ。几帳面に細かく塗る必要はなく、多少はみ出る程度にざっくり塗るのがポイント。あまりギリギリを攻めすぎると、かえって上手くいかないことが多い。塗り終えたら画面から手を離すと、アプリが周りの模様を解析して適切な背景に置き換えてくれる。背景が砂地のようなシンプルなシーンでは、ほぼ完全に消し去ることが可能だ。
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【STEP 3】残ってしまった場合は対象物を再度塗りつぶす
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【STEP 4】Lightroom CCで全体の鮮やかさを調整
不要物を除去した写真を保存し、「Lightroom CC」で開いて[ライト]→[露光量]を「+0.4」、[シャドウ]を「+40」で明るくし、[自然な彩度]で青空や建物の屋根の色を鮮やかにして完成。「Photoshop Fix」にも簡易調整機能はついているため、アプリを変えずに作業を完結させてもOKだ。
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【実践テク11】顔からしわやほくろを取り去り自撮り特有の歪みを補正する
iPhoneのインカメラは自撮りをするのに最適なツールだが、どうしても避けられない欠点がある。それは広角レンズを使用しているため、顔が本来よりも膨張して見えてしまうこと。自撮りをすると普段鏡で見ている顔より膨らんで見えてしまうのは、それが原因だ。また、自撮りをすると顔がアップに写るためシワなども目立ちやすい。これら顔に関する修正は、「Photoshop Fix」を使うことでほぼ解決する。巷に溢れる盛った写真ではなく、できるだけナチュラルな仕上がりになるよう細かく修正していこう。
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【STEP 1】[修正]ツールで気になる部分を塗る
「Photoshop Fix」で修正したい写真を選んだら、[修復]→[スポット修正]を選択。これで顔の気になるシワやほくろなどの部分を塗っていく。[ブラシサイズ]は消したいものがすっぽり収まる程度に設定し、硬さは「80」程度がよいだろう。消したい部分を指でなぞるだけで、アプリが周りに馴染ませるように消してくれる。
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【STEP 2】スムーズ機能で肌の質感をなめらかに
次に肌の質感を滑らかにしよう。[スムーズ]を選択し、顔を1回タップする。すると、アプリが顔部分を自動認識して、肌のみ少しぼかしを入れて滑らかにしてくれる。肌の質感だけが変わり、髪の毛などには変化がない便利な機能だ。個別に任意の場所を滑らかにしたい場合は[スムース]を選択し、自分で塗ってもよい。
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【STEP 3】[ゆがみ]ツールで自撮りの膨張感を修正
広角レンズ特有の膨張感を修正する場合は、[ゆがみ]ツールを使う。顔が大きく写っている場合は、自動的に顔が選択されているはずだ。本アプリでは顔の部位(額、目、鼻、頬・顎)が自動認識され、修正したい部分をタップすることで細かな調整ができる。今回は膨張感を押えるために額を選択し、顔の横幅を狭め、鼻もわずかに小さくした。ナチュラルに仕上げるにはやり過ぎないことも大事だ。
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【実践テク12】失敗してしまった写真を思い切って大胆に補正する
撮影時には、余計なものが映り込まないロケーションを選び、カメラの設定を適切に行い、人物撮影の場合は良い表情となるタイミングで撮るのがベストだが、いつもそこまで気を配って撮るのはなかなか大変だ。そこで、今回は背景に余計なものが写ってしまい、暗い写真をiPhoneだけで使える写真へと大胆に復活させてみよう。ここまで紹介してきたすべてのアプリを使うため、単純なレタッチよりもやや手間がかかるが、iPhoneでもここまでレタッチができるということがよく理解できるだろう。
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【STEP 1】Lightroom CCで写真のベースを補正
まずは「Lightroom CC」でベースの補正。[ライト]→[露光量]を「+0.8」で全体を明るくし、[シャドウ]を「+55」で陰の部分をより明るくした。このままでは髪の黒色などが浮いてしまうため、[黒レベル]を「-25」で黒の色を締めた。また、[色温度]を「+15」、[色被り補正]を「+10」、[自然な彩度]を「+10」で温かみのある色へ補正した。
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【STEP 2】[部分補正]を使って顔の青みを調整する
顔の部分は傘で暗くなっているだけでなく、青く見えてしまっている。そこで[部分補正]→[円形フィルター]で顔の部分のみ選択。[ライト]→[露光量]を「+0.4」で明るくし、[カラー]→[色温度]を「+20」、[色かぶり補正]を「+30」で顔にかかった青色をキャンセルして温かみのある色に変更した。すべて終了したら、写真を保存しよう。
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【STEP 3】Photoshop Fixで表情や輪郭を整える
次に「Photoshop Fix」で写真を開き、[ゆがみ]で顔の表 情や輪郭を整える。ここでは[目]を選択し、サイズを拡大。 さらに、口を選択し、口角を上げて柔らかな表情にした。自撮りの補正と同じように、気になる部分をナチュラル
に補正しよう。
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【STEP 4】あらかじめ切り抜き背景の範囲を決める
このあと背景の合成をするに当たって、余計なものがあるとやりづらいため、あらかじめ切り抜きを行い背景の写る範囲を限定させておく。背景が少ないほど合成後の違和感は少なくなる。合成後に切り抜いても良いが、始めから切り抜いていたほうが作業はしやすい。
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【STEP 5】背景の邪魔な部分を別の画像と合成する
そして最後に、「Photo shop Mix」で合成。左下に写っている車を別の画像で置き換える。過去に撮影したタイル状の地面を下に、人物画像を上に配置し、[選択して切り抜き]→[スマート]で左下の部分をざっくり塗っていく。範囲が逆の場合は[調整]→[階調反転]を選択。上手く切り抜けなかった部分は、[基本]を使い手動で細かく修正して背景に馴染ませよう。
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