[Display]自然な発色で紙で見ているような視覚体験
スペックには表れない美しさ
iPhoneの代名詞といえば、美しい画面のレティナHDディスプレイです。iPhone 8/プラスでは、光感知技術と広い色域をもって、周囲の環境をより認識し、一段と自然な色で映し出せるディスプレイが作られました。
色域が広いとはいえ、コントラストが強く色鮮やかな“だけ”の表現をアップルは採用しませんでした。代わりにアップルが謳うのは、「業界最高の色精度」。よりナチュラルで、目で見た印象のまま豊かに再現する力を高めたような印象です。自然の美しさを描写するというコンセプトは、カメラの性能とも共通しています。
また2016年にリリースされた9.7インチiPadプロで採用されたトゥルートーンディスプレイが、今回iPhoneでも初めて導入されました。この技術では、4つの環境光センサが周囲の光を読み取り、ディスプレイのホワイトバランスを調整。見え方を環境光に合わせることで、より自然に、まるで印刷物を見ているような視覚体験を味わえます。
試しにやや暗い蛍光灯の下でトゥルートーンをオンにすると、画面がすぐに真っ白な表示から、アイボリーのような柔らかい色味に変わりました。デジタルディスプレイ特有の青白さを抑え、目の疲れを軽減させるので、長時間の読書でも快適に読み進められそうです。ただ写真やイラストなどの色調を精査する場合は、本来の発色を見極めるためにもトゥルートーンはオフにしておいたほうがよさそうです。
スペック上の違いは少ないが…
True Tone以外の性能差、たとえば解像度や最大輝度などは、iPhone 8/8 Plusともに前モデルのiPhone 7/7 Plusと変わりありませんでした。しかし、スペックの数値では測りきれない進化が詰め込まれた今回のRetina HDディスプレイ。印刷された誌面では伝えきれないのが残念です。ぜひご自身の目で確かめてみてはいかがでしょうか。
より快適なコンテンツ体験
True Toneディスプレイを一言で説明すると「見やすい画面づくり」。環境によって輝度や明度などが自動的に調節され、より快適に読書やブラウジングなどを楽しめます。なおTrue Toneのオン/オフは、「設定」アプリの[画面表示と明るさ]から変更できます。すでに対応するiPad Proを持つユーザは、一足先にTrue Toneディスプレイを体験してみましょう。
[Water Resistant]ちょっとした水濡れは大丈夫
やってはいけないことに注意
iPhone 7/7プラスシリーズより対応した防沫・耐水・防塵性能。これにより水辺やアウトドアのシーンでも思いっきりiPhoneを使えるようになりました。同機能はiPhone 8/プラスにも引き継がれています。
一時期は「次期iPhoneはIP68対応になる」と噂されていましたが、iPhone 8/8プラスの耐水・防塵機能は、iPhone 7/7プラスと同様の「IP67等級」。これは、「粉塵の侵入が完全に防護されているうえに、水面下1センチから1メートルに30分間没していても内部に水が侵入しない」機能を備えていることになります。ちょっとした水濡れは問題ありません。
ただし、こうした防塵・耐水性能は永続的に維持できるものではなく、通常の使用によって耐性が低下する可能性もあります。NG項目もたくさんあるので、アップル公式WEBサイトに掲載されている「やってはダメ」リストを参考にしておきましょう。
やってはいけないことリスト
iPhone 7/7 Plusが発売されたときは、Appleの公式WEBサイトに「やってはいけないこと」が掲載されました。【URL】https://support.apple.com/ja-jp/HT207043
[Battery]駆動時間は同じだが、充電手段は増加
旧世代とほぼ同じ駆動時間
iPhone 8/8プラスはよりパワフルになりますが、バッテリはiPhone 7/7プラスとほぼ同じ駆動時間を維持します。しかし、今回はバッテリの持ちよりも、充電方法の選択肢が増えた点に注目です。iPhone 8/8プラスでは、ライトニングケーブルでの充電方法のほかに、ワイヤレス充電への対応が発表されました。
試しにモーフィーのワイヤレス充電パッドを利用してみましたが、反応も良好で、載せるとすぐに充電が開始します。ただし、ライトニングケーブルで充電したときと比べると、充電速度は少々遅いようです。参考までに、ホーム画面表示中のiPhone 8を70%から73%まで充電したところ、付属のライトニングケーブルでは7分30秒程度、モーフィーのワイヤレス充電パッドでは13分秒程度でした。
また、30分で最大50%の充電ができる高速充電にも対応しています。この機能を使うには、MacBookシリーズ向けの「29W USB│C電源アダプタ」と「USB│C│ライトニングケーブル」が必要です。MacBookユーザなどはすでにアダプタを持っているはずなので、ケーブルだけ追加購入すればiPhoneも高速で充電できます。
置くだけですぐに充電スタート
すでに日本のAppleオンラインストアでは、ワイヤレス充電器が品薄状態になっており、期待の高さが伺えます。なお、基調講演では、Apple純正のワイヤレス充電器「AirPower」が発表されました。AirPowerでは、ワイヤレス充電対応のiPhone、Apple Watch Series 3、ワイヤレス充電対応の新しいAirPodsケース(別売)など、最大3台のデバイスを同時に充電可能です。
高速充電にも対応
USB-C – Lightningケーブル(1m)
【発売元】Apple
【価格】2800円(税別)
29W USB-C電源アダプタ
【発売元】Apple
【価格】5200円(税別)
iPhone 8/8プラスは高速充電にも対応しました。バッテリ残量0%から開始すると30分で50%まで充電できるようですが、日常で0%まで使い切ることがあまりないため、あえて46%充電からスタート。すると、10分で59%、30分で79%まで戻っていました。一方、iPhone 7(ただし1年使用)は30分で22%充電されていました。一概に比較はできませんが、iPhone 8のほうが「早い!」という体感はありました。
ワイヤレス充電機器対応メーカー
TYLT、IKEA、iHome、mophie、belkin、aircharge、Incipio、Spigen
スペシャルイベントでは現時点でワイヤレス充電周辺機器に対応しているメーカーが発表されていました。これ以外にもQi規格のワイヤレス充電器なら利用できるようですが、現時点で国内のApple Storeで販売されているのは、mophieとbelkinの製品のみです。
[Audio]最大音量や低音域に進化あり
最大音量が25%アップ
基調講演ではさらっと紹介されただけで終わりましたが、ステレオスピーカも再設計がなされたようです。iPhone 8/8プラスでは、iPhone 7/7プラスよりも音量が最大25%大きくなり、低音にもより深みが出るようになりました。試聴してみると、音の大きさは歴然。ブルートゥーススピーカなどを使わなくても、iPhone 8/8プラスのスピーカだけで広いフロアを豊かな音で十分満たすことができます。
しかし、「そんな大音量で音楽を聴かないよ」という人も多いかもしれません。音楽鑑賞よりもメリットを感じるのは、スピーカーフォンでの相手の声や、「ヘイ、シリ!」で呼び出したSiriの声が、遠くからでもより大きく明瞭に聞こえることです。
実際に、発話側がつぶやくようなボリュームで話をしても、iPhone 8のスピーカフォンを最大音量にすると、iPhone 7よりもはっきりと聞こえてきました。耳が聞こえづらくなったシニア世代をはじめ、スピーカフォンを使った「ながら通話」を頻繁にする人、Hey Siri機能をよく使う人にとっては、よりスムーズにコミュニケーションが取れるようになるかもしれません。
iPhone単体での再生も快適に
iPhone 7/7 Plusでは、イヤホンジャック廃止と同時にステレオスピーカが搭載されました。iPhone 8/8 Plusでもそのコンセプトは受け継がれ、さらに最大音量や低音域再生が強化されています。
[Processor]これまで以上に省電力かつ高速なチップを搭載
ARをパワフルに動かせる
iPhoneはモデルチェンジするごとに、搭載プロセッサの世代を新しくしており、今回もA10フュージョンからA11バイオニックにグレードアップしました。
効率コアは比較的低負荷の処理を省電力でこなすコアのことで、A10に比べて数が倍に増えたうえ、70%の高速化を実現。テキストメッセージの送信やブラウジングなどであれば、消費電力を抑えながら素早く処理されるようになります。注目すべきは、さまざまな改善により、これまで以上に省電力で高速のパフォーマンスを生み出せるようになったこと。アップルはiPhone 8/8プラスのバッテリ容量を公表していませんが、iPhone 7/7プラスに比べて若干微減しているといわれています。しかし、公式発表によると、駆動時間はiPhone 7シリーズとほぼ同じ。これはA11チップによる省電力化が影響していると予想されます。
また、GPUはアップルが独自開発した3コアの新しいものに置き換わました。これにより、臨場感溢れる3DゲームやARをより滑らかに体験できます。
A11バイオニックにはニューラルエンジンも搭載しており、特定の機械学習アルゴリズムによって、フェイスIDやアニ文字などの機能を可能にしました。どの切り口から言っても、“超スマホ”級のチップだといえるでしょう。
センサ類は7/7 Plusと同じ
センサ類はiPhone 7/7 Plusと同じく、タッチID指紋認証センサ、3軸ジャイロ、加速度センサ、近接センサ、環境光センサ、気圧計が搭載されました。ただし、パーツの中身は進化しており、Appleはジャイロスコープと加速度センサはAR向けに新しいものを採用したことを発表しています。
NFCとFeliCaを搭載
Bluetoothは新バージョンの5.0が採用されました。Bluetooth 5.0では大幅な低消費電力を可能にする「Bluetooth Low Energy(BLE)」が最大2倍に高速化し、IoT向けの仕様も強化されます。2017年9月現在、対応機器はまだ少ない状況であり、今後の製品展開が待ち望まれます。
バッテリ容量の推移(iPhone 6~iPhone 7シリーズ)
AppleはiPhone 8/8プラスのバッテリ容量を公表してません。ネット上ではiPhone 7/7 Plusと比べて微減しているともいわれてますが、公式発表の駆動時間はiPhone 7/7 Plusとほぼ同等。A11 Bionicチップによる省電力化が行われていると予測できます。
[CPU/GPU]A11の圧倒的なパワーに驚愕
圧倒的なパワーに驚愕
A11バイオニックは旧世代のA10 フュージョンと比べ、効率コアは最大70%、性能コアは最大25%高速化。新設計の3コアのGPUも最大30%高速になりました。
そこで、ベンチマークアプリ「ギークベンチ4(Geekbench 4)」でCPU性能を、「3Dマーク(3D Mark)」で3D性能を計測しました。結果はグラフのとおり、A11 バイオニックのパワーが段違い。あまりの突出ぶりに、計測方法を誤ったかと見直したほど…。
この数値はiPadプロを含めたiOSデバイスの中でももっとも高く、参考に計測したMacBook プロ(Late 2016/2.9 GHz Intel Core i5)すらも超えました。アップルの「前代未聞のパワー」という表現に偽りがないことが分かります。
驚きなのが、こんなパワフルなチップがiPhone Xのみならず、iPhone 8/8プラスにも搭載された点。価格差こそあれ、能力を見れば、どちらもフラッグシップモデルといえるのではないでしょうか。
[NETWORK]au回線では3G通信が非対応に
通信速度も向上
iPhone 8/8プラスはTD│LTEのBand 42(3.5GHz帯)に対応したことで、国内でのデータ通信性能が向上します。Band 42は3大キャリアへの割り当てがあり、最近になってエリア化が始まった周波数帯の1つです。
デバイスそのものの通信性能も向上しています。iPhone 8を使って測定したところ、下りは23Mbps、上りは9Mbps程度の速度が出ました。
また、重要な変更点として、KDDIネットワークでの3G通信が利用できなくなります。auのSIMカードの方式が今回から新しいものに変更となり、3G通信が非対応になりました。au VoLTE(LTE内の通話サービス)は人口カバー率99%なので、ほとんどの人に影響は及ばないはずですが、3G通信を利用する機会の多いauユーザは、iPhone 8/8プラスの購入は再検討したほうがよさそうです。なお、ドコモとソフトバンクでは3G通信でも接続可能のようです。
「Speedtest.net」でテスト
計測にはApp Storeで配信されている「Speedtest.net」を利用しました。iPhoneアプリだけでなく、WEBアプリもあるのでMacの計測にも使えます。