Mac業界の最新動向はもちろん、読者の皆様にいち早くお伝えしたい重要な情報、
日々の取材活動や編集作業を通して感じた雑感などを読みやすいスタイルで提供します。

Mac Fan メールマガジン

掲載日:

パフォーマンスから使い勝手までを徹底検証!

パフォーマンスから使い勝手までを徹底検証!

処理性能はどこをチェックすればいいの?

速さはMBPが圧倒的だが…

Macのライフサイクルが終わるときといえば、OSやソフトが動作対象外となるとき。また、Macの性能がソフトの処理の重さに対抗できず、ユーザにストレスを与えるようになれば、そのライフサイクルは事実上終了です。各モデルの性能がどの程度かを把握できなければ、いくら予算を用意したらよいかもわかりません。そこで、ここでは現行MacBookシリーズから4機種用意し、性能を比較してみました。

テストに用いたのは12インチMacBook(1.1GHz コアm3)、13インチMacBookエア(1.6GHz コアi5)、13インチMacBookプロ(タッチバー非搭載、2GHz コアi5)、15インチMacBookプロ(タッチバー搭載、2.7GHz コアi7)です。MacBookとMacBookエア、MacBookプロ13インチモデルは2コア4スレッドのCPU、最上位のMacBook15インチのみ4コア8スレッドである、という点に注目です。

重要なのは、Macのグレードが上がるほど、CPU性能の格差がハッキリとしてくるということ。この格差が見やすい処理としては、3DCGレンダリング速度を見る「シネベンチR15(Cinebench R15)」や動画エンコーダ「メディアエンコーダ(Media Encorder CC)」の2つ。特に、動画の書き出し(エンコード)はユーチューブなどに動画をアップする人なら特に重視したい部分でしょう。「ライトルーム(Lightroom CC)」を使ったRAW現像も、、CPUパワーが高い機種のほうが高速です。写真や動画を編集する頻度にもよりますが、頻度が高いほどMacBookやMacBookエアではストレスになる可能性があります。そういう人は迷わずMacBookプロを選ぶべきでしょう。

12インチMacBookやMacBookエアが向いているのは、iTunesでの楽曲のAAC変換のようにCPU格差がほとんど出ない処理がメインの人。大きなファイルをコピー/移動させる際に効いてくるストレージ性能も、MacBookとMacBookエアの低価格モデルとMacBookプロの間に大きな差がつけられています。CPU負荷が低いソフトしか使わない、もしくは大きな(数百メガバイトあるいはギガバイト単位)ファイルを扱うことがなければ、MacBookやMacBookエアで不足を感じることはないでしょう。

4コア8スレッドのコアi7搭載した15インチMacBookプロにおける「CPU占有率」の処理による違いを比較しました。動画エンコードやRAW現像時は全コアに強い負荷がかかっていますが、iTunesのAAC変換ではコア4つに20パーセント程度、サファリでのWEBブラウズに至ってはほぼアイドル状態です。左2つのような状況が多いならMacBookプロ、右2つが多いならMacBookやMacBookエア向きです。

CINEBENCH R15でCPUの馬力比較

「シネベンチR15」はプロ向け3DCG作成ソフト「CINEMA 4D」をベースに作られたベンチマークソフト。グラフが長いほど処理が高速です。CPUのコア数やクロックが高スコアに直結するだけに、4コア8スレッドのCPUを搭載する15インチMacBookプロのスコアが飛び抜けていますが、下位3機種についてもちょうどよい塩梅でスコア差がついています。軽めの処理の快適さを支配するシングルスレッドのスコアも、MacBookとMacBookプロでは1.4倍~1.7倍と大差がついた点に注目です。

 

Unigine Heaven 4.0で描画性能をテスト

「Unigine Heaven 4.0」はGPUの描画性能比較に最適なソフトです。グラフが長いほど、高い描写性能を表します。MacBookシリーズのディスプレイ解像度はそれぞれ違うため、解像度を1366×768ドットに統一してテストしました(画質はデフォルトのミディアム)。ここでもMacBookプロ、特にGPUを載せている15インチの結果が飛び抜けていますが、下位2モデルは描画性能にほとんど差がありません。ゲームを考えているなら、最低でも13インチMacBookプロ以上の機種を選択しましょう。

 

Media Encoderで動画エンコード時間を比較

定番動画編集ソフト「プレミア・プロCC(Premiere Pro CC 2017)」で編集した4K動画を、「メディア・エンコーダ」でMPEG4に書き出した際の時間を比較しました。グラフが長いほど、処理速度が高速です。CPUのコアをほぼフル活用するソフトであるため、シネベンチR15と似た結果に。13インチMacBookプロとエアでは極端な差がついていないため、MacBookエアは意外とコスパのよい選択です。ただ、ストレージ性能などを考えると、総合的な性能はMacBookプロのほうが勝るといえます。

 

LightroomでRAW現像処理時間でチェック

RAW現像ソフト「ライトルームCC 2017」に100枚のRAW画像(NEF形式)を読み込ませ、DNG形式に変換する処理と、100枚の画像にシャープネスを付与しつつ、最高画質のJPEGに書き出す処理の2つを比較しました。こちらもグラフが長いほど、速く処理が完了します。注目したいのは、CPU負荷の比較的高いシャープネス付きのJPEG書き出しでは、MacBookとエアの差が小さいこと。ディスプレイの質を考えると、軽くRAW現像をする程度ならエアよりもMacBookを選ぶのがよいようです。

 

iTunes AAC変換のスピードをチェック

iTunesを使いCD1枚分相当(再生時間約55分)のWAVファイルをAAC(ビットレートは256ビット)に変換する時間を計測しました。iTunesのAACエンコーダは処理の内容が軽いせいか、CPUコアに強い負担がかかりません。そのためMacBookエアを比較すると、エアのほうがわずかに速く終了。シネベンチR15で最速を誇った15インチMacBookプロ15の結果が奮わないのは、無理して15インチモデルを買っても損をすることがある、ということを示唆しています。

 

AJA System Test Liteによるストレージ性能比較

「AJAシステム・テスト・ライト(AJA System Test Lite)」を使い、内蔵ストレージの読み書き性能を測定。グラフが長いほど、高速で読み書きが完了します。このソフトが測定できるのは、ストレージのトップスピードが出る連続したアクセス時(シーケンシャルアクセス)のものですが、MacBookプロのPCIエクスプレス接続のフラッシュストレージは頭1つ抜け出た性能を備えています。MacBookとエアの2機種が遅い原因の1つは、CPUパワーも関係しています。

 

これまでの周辺機器を使うには?

USBタイプCはコスト高

MacBookシリーズに限らず、PCと付き合ううえで周辺機器は非常に重要な存在です。たとえば、マウスやキーボード、外部ディスプレイを追加して作業効率を上げたい、外付けHDDにファイルを待避させたりバックアップをとりたい、プリンタを接続して請求書や年賀状を印刷したい…など、PCを使って何か作業を行う際には欠かせません。

そこで問題になるのが、周辺機器との接続性です。MacBookの登場以降、アップルは表裏関係なく挿せるUSBタイプCコネクタとサンダーボルト3を重要視するようになりました。ACアダプタからの電源供給にも対応するなど、技術的な合理性は非常に評価すべきですが、問題は接続する周辺機器側にUSBタイプC対応が少ないことです。もちろんUSBタイプAプラグ(オス)からUSBタイプCに変換するケーブルやアダプタ、あるいはUSBハブを使えば、従来のUSBケーブルを必要とする機器(有線マウスやプリンタなど)も問題なく使えます。しかし、周辺機器の数だけ変換アダプタも必要になることや、ケーブルが見苦しくなるといったデメリットがあります。小型レシーバをUSBポートに埋め込むタイプの有線マウスを使うのに、変換アダプタを使うのは不格好といわざるを得ませんし、なにより外での運用が困難になります。

その意味で、もっとも周辺機器と付き合いやすいのは、従来のUSBポートを備えているMacBookエアであるといえるでしょう。複数の周辺機器を接続するためにはハブが必要な点は同じですが、マウスのレシーバやプリンタのケーブルがそのまま挿せるメリットは非常に大きいといえます。

もちろん無線接続のデバイスを厳選すれば、USBポートの形状やケーブル捌きに煩わされる心配もありません。プリンタから外付けHDDまでさまざまな製品が出ていますが、無線化すると一気に製品の幅が狭くなるうえ、相応の出費も迫られます。さらに、無線化すると電波干渉等でパフォーマンスが下がるリスクも出てきます。

アップルのUSBタイプC推しは合理的ではありますが、その理想に安易に飛びつくと周辺機器とのすり合わせが大変になります。有線マウスや外付けHDDなど従来のUSB資産が多く、かつ性能は程々でよいならMacBookエアが一番ツブシの効く選択といえるでしょう。

MacBookはUSB-Cのみ

USBタイプCのみを備えるMacBook。ワイヤレス接続を前提に設計されているため、これまでの周辺器機の接続にはハブを購入するなどの対応が必要です。

拡張性の高いMacBookエア

旧来のUSBポートを備えるMacBookエアは、拡張性も高く周辺機器との接続に頭を悩ますことがありません。マウスのレシーバやプリンタのケーブルがそのまま挿せるメリットは非常に大きいでしょう。

無線マウスのレシーバ

BSMBW500Mシリーズ

【発売】バッファロー

【価格】3110円

【URL】http://buffalo.jp/product/input/mouse/bsmbw500m/

Magic Mouse 2

【発売】アップル 【価格】8800円 (税別)

【URL】apple.com

タイプCハブで接続可能

MacBookエア以外で従来のUSB機器を使うには、USBタイプAをタイプCに変換するケーブルを用意するか、タイプAコネクタを装備したタイプCハブが必須です。

Type-C USB A変換アダプタケーブル(ブラック・10cm)

【発売】サンワサプライ 【価格】2080円

【URL】http://direct.sanwa.co.jp/ItemPage/AD-USB26CAF

ワイヤレスストレージ

キャンビオ AeroCast HDTU110EKWC1 1TB

【発売】東芝 【価格】9000円前後

【URL】http://www.toshiba-personalstorage.net

AirMac Time Capsule 2TB

【発売】アップル

【価格】2万9800円(税別)

【URL】apple.com

アップル純正のAirMacタイムカプセルや、東芝製「HDTU110EKWC1」といった無線LANを利用した外付けHDDを利用すれば、USBケーブルを使わずにストレージが拡張できます。ただ、選択肢が少なく割高なことと、電波状況が悪いと一気にパフォーマンスが下がるため、仕事用に使うには少々心許ないという欠点があります。

 

バッテリが長く持つのはどのモデル?

13インチMBPの意外な実力

ノート型PCである以上、外出先でどれだけ使えるかは、MacBookシリーズ選びの重要なファクターです。このバッテリ駆動時間を決める大事なポイントとなるのが、ハードウェアのスペックとバッテリ容量のバランスです。高性能なCPU、より大型のディスプレイ、より高速な無線LAN(Wi-Fi)…このような要素すべてが、バッテリ駆動時間に影響します。

そこで、今回はサファリで一定のWEBページを巡回させ続けた際のバッテリ駆動時間を比較してみました。その結果、15インチMacBookプロが最初に力尽きましたが、それでも8時間以上バッテリが持ちました。最長のMacBookエアは9時間半。この1時間半の差は本体が持つ性能の差といえるでしょう。

また、もう1つの視点として、MacBookシリーズの各モデルがバッテリから消費する電力を「バッテリ・グル(BatteryGuru)」 というMacアップストアからダウンロードできる無料ソフトを利用して比較しました。比較的設計の古いMacBookエアはアイドル時の消費電力が意外と高く、逆に最新の13インチMacBookプロは12インチMacBookよりも省電力動作の傾向を示していることがわかりました。

さらに、ユーチューブで108 0pの動画をフルスクリーン再生したときも同じ傾向が見られました。13インチMacBookプロのバッテリ容量はMacBookエアよりもバッテリが小さくなっています(4790mAhに対し7510mAh:実測値)が、その分省電力機能を徹底的にチューニングすることで、バッテリ容量というハンデを乗り越えたといえるでしょう。

Battery Guruの使い方

「バッテリ・グル」を起動するとメニューバーに常駐します。現在の消費電力はメニューバーの数値、またはメニュー内の「Current Usage」の項目をチェックしましょう。ただし、リアルタイムでは反映されないので3~5分待つ必要があります。

省電力なMacBookプロ

バッテリ・グルでバッテリから消費される電力量を比べてみると、1番駆動時間の長かったMacBookエアの消費電力が意外に高いことと、13インチMacBookプロは突出して省電力動作であることがわかります。MacBookエアの省電力設計は今の基準からすると遅れていますが、バッテリの容量でカバーしていると考えられます。

MacBookエアのスタミナが高い

無線LAN経由で1分ごとにWEBページを移動する処理を続けたときのバッテリ駆動時間(輝度は最大から5マス分下げ)。ボディもバッテリ容量も大きく、かつ搭載CPUが超低電圧版であるMacBookエアのスタミナが突出している点に注目です。

 

ディスプレイがきれいなのはどのモデル?

解像度と色域に勝るレティナ

ディスプレイの評価は、視野角と解像度、そして色の表現力で決まりますが、この点においてはMacBookエアの一人負けです。解像度はMacBookより粗く、視野角も狭いため映像編集などでは画面の狭さでストレスが溜まります。その点、レティナディスプレイを搭載したMacBookやMacBookプロは表示の美しさや表現可能な色の幅で勝るうえに、見かけの解像度を変更できる点で優れています。

しかし、いくらレティナディスプレイとはいえ、画面の小ささは否定できません。大画面が欲しい場合は外付けディスプレイを追加し、Mac本体のディスプレイはサブとして使うほうがベターです。しかし、この場合サンダーボルト3から直接入力できるディスプレイが非常に少ないことが悩みの種。純正の「USB│Cデジタルマルチポートアダプタ」のような変換アダプタを使うのも手ですが、これも地味な出費となります。

最初からMacBookのディスプレイは移動時だけのものと割り切っているのであれば、本体から直接HDMI出力を取り出せるMacBookエアのほうが楽に取り回せます。単純に外部ディスプレイ使用前提ならエアのコスパが最高です。

サンダーボルト3対応ディスプレイ

27UD88-W

【発売】LG 【価格】8万円前後

【URL】http://www.lg.com/jp/monitor/lg-27UD88-W

MacBookプロと組み合わせる前提なら、サンダーボルト3(USBタイプC)入力に対応したLG電子製の「27UD88-W」が1番スマート。ただし、解像度が5Kと高いため、GPUを搭載したハイパワーな15インチモデルでないと真価を発揮できない可能性もあります。

ディスプレイの発色の違い

同じ13インチのMacBookエアとプロで液晶の発色に違いがないかを「i1 Display Pro」で調べてみました。図は両液晶の色域を示したものですが、MacBookプロの液晶はsRGB以上Adobe RGB(左図の薄いグレーの領域)未満と広い色域を備えていますが、MacBookエアの液晶はsRGB(右図の薄いグレーの領域)よりも表現力が下回ることを示しています。

 

キーボードやトラックパッドの使い心地は?

新型=最高とはいかない世界

「キーボードやトラックパッドは疲労感に直結するからしっかり選ぶべき」と考えている人も多いでしょう。MacBookシリーズのキーピッチや配列は基本的に機種を乗り換えても大きな差がないため、機種転換は非常に楽です。

しかし、キーボードの打鍵感やトラックパッドの大きさ・使用感が違うため、そうした要素にこだわるなら店頭で一度は触れてみるべきです。特に賛否が分かれているのが、12インチMacBook以降に採用されたバタフライ式のキーボード。ストロークを浅くすることで本体の薄型化を狙ったものですが、ストロークが浅すぎて「打った感じに乏しい」「指が痛い」などの感想を持つ人もいます。

その対局にあるのが、旧来のパンタグラフ(シザー)方式のキーボードで、ストロークは約1ミリと深いため、打鍵感と指の着地が柔らかいのが特徴です。ただし、これを備えた製品はMacBookエアと純正外付けキーボード(アップルキーボード)に限定されます。

トラックパッドについても同様で、MacBookエアのみが物理ボタン式、それ以外がタプティックエンジンを使った感圧タッチ式です。感圧タッチ式のほうがパッド面積が大きいため、指を置く場所の自由度が高いことはメリットです。しかしエアの物理ボタン式は指が濡れていても押せる確実性があります。キーボードもトラックパッドも、MacBookエアの装備は旧式ではありますが、旧式と切って捨てられない魅力があることは確かです。

バタフライ式の設計

12インチMacBook以降、アップルはパンタグラフ式からバタフライ式のキーに移行しました。薄く設計できるうえにグラつきも抑えられるメリットがありますが、キーストロークが浅すぎて苦手という人もいるようです。

広くなったトラックパッド

感圧タッチ式トラックパッド搭載モデルは、旧トラックパッド搭載モデルに比べ面積が広くとられています。パッド操作時に手を動かす距離が短いのがメリットです。

BootCampをメインで使うならタッチバー搭載モデルは避けるべし

ブートキャンプ(BootCamp)を使ってMacをウィンドウズとしても利用する頻度が高い、もしくはウィンドウズ利用がメインの人は、タッチバーを搭載した最新のMacBookプロを購入するのはあまりよい選択とはいえません。その理由に、ウィンドウズではショートカットにファンクションキーが多用されていることが挙げられます。具体的には[オプション(Alt)]キー+[F4]キーでウィンドウを閉じる、[F5]キーでブラウザのリロード、といったものです。

しかし、それ以上にやっかいなのが、ウィンドウズでOSが正常に起ち上がらないときに使う「セーフモード」を起動するキーが[F8]キーのため、タッチバー搭載モデルでは押せないという状況に陥ります。ブートキャンプでタッチバーをファンクションキーとして使うためには、ウィンドウズが正常に起動し、タッチバーのドライバが読み込まれる必要があります。しかし、セーフモード起動を選択する画面ではそのドライバが読み込まれないため、ファンクションキーとして機能しません。

もちろん、ファンクションキーが必要になったときは外付けキーボードを接続すればよいだけの話ですが、トラブル時に必ずUSBキーボードがあり、かつUSBタイプC変換アダプタが用意されているとは限りません。ブートキャンプ環境を外出先で使うことが多いなら、リスク回避の観点からなるべくタッチバー搭載モデルは避けたいものです。

ウィンドウズをセーフモードで起動するときなどは、ドライバが読み込まれる前にファンクションキーの操作が必要になる場合が多々あります。図ではオプションを表示するために[F10]キーを押すことが指示されていますが、このときタッチバーには何も表示されません。回避には外付けのキーボードが必要です。

現行MacBookシリーズのスペック

※現在販売されているMacBook Proの旧モデルはWEB参照。