ビジネスや日常生活において、もっとも大切にしなければならないものは何か? それは「時間」であることは疑う余地もない。インターネットが普及し、時間と場所を超えたコミュニケーションをモバイルが加速させている。
年の瀬が迫り、一年の振り返りを行う時期である。この一年間で生産性の高い仕事ができたのかを振り返るには、「時間を有効に使えたのか」を反芻することが大事であり、それが次の年の活動への自信につながると思っている。個人でも組織でも、いかに創造的な作業を行うための時間を確保できるかが重要である。
現在、多くの企業が社員の「働き方改革」を目指している。しかし、道半ばになかなかうまくいかないという声もよく耳にする。個人的に、働き方改革を実現するためには、「個人のマインドセットを変える」ことと「組織としての業務を変える」ことの両方が重要と考える。しかし、そう聞いても漠然としているのであれば、まずはビジネスでもっとも大切である「時間」に着目して改革を行ってみてはどうだろうか。
個人のマインドセットを変えるためのツールは、すでにiOSデバイスに詰まっている。たとえば、「リマインダー」だ。備忘録としてだけでなく、日時や位置情報をきっかけにタスクをリマインドするという実にシンプルな機能を使うだけで、行動を変えるトリガーとして期待ができる。オフィスに着いたとき、クライアントを訪問したときなどにタスクを設定しておくだけでも、効率的に処理することが可能となり、時間を創出することができる。マインドセットを変えるためには、そうした小さな積み重ねと成功体験こそが鍵となる。
では、組織としての業務を変えるためにはどうすればいいか。これはiOS(デジタル)を導入するだけではダメである。ここでも時間に着目すると、まず運用(アナログ)を見直すことが重要であることに気づく。業務においてムダな時間はどこに存在しているのか。そして、それはiOSを導入することでどのように解決できるのか。ここでも、手軽に導入できるiOSのアプリを使ってまずは試してみる。たとえば、会議での紙を減らしたいのであればキーノート(Keynote)の「キーノート・ライブ(Keynote Live)」の機能を使えば簡単にペーパレス会議が可能になる。iOSの標準機能であるフェイスタイム(FaceTime)も同時に利用すれば、資料を確認しながらフェイスtoフェイスのコミュニケーションも行える。まずは今までのやり方や業務が正しいのかを常に疑って見る「眼」を持ち、実践してみるのだ。
ビジネスのみならず、今、教育現場でも「働き方」に関する多くの課題がある。その代表的なものが、ICT化である。日常的にモバイルやSNSなどを使い慣れている生徒・児童が増え、ITリテラシーが高まっている中、教える立場の先生がITに苦手意識を持っているためにタブレット普及にブレーキがかかっているのである。ここでも重要となるのが、時間をキーワードにしたアナログの見直しだ。いきなり授業の中でiPadを使うのではなく、まずは教職員の業務から利活用してみてはどうか。職員室の共有PCではなく職員会議をペーパレス会議にしたり、課題の作成や先生同士のコミュニケーションにiPadを積極的に活用することで、より多くの時間が捻出されるのではないだろうか。
今後、人工知能が発達し、人々が機械と協働する世界において、人間に求められるのは「創造的な時間の確保」だ。そのために、今どれだけの下準備ができているだろうか。iOSデバイスをはじめとするモバイルが本当に私たちの生活を豊かにするのかどうか。そのためには、人間が「時間の価値」を再認識し、自らの創造性を想像し、そのための時間へ投資することこそが重要なのではないだろうか。
Hironori Fukuda
企業や教育機関向けのApple製品の活用提案や導入・運用構築を手がける株式会社Tooのモビリティ・エバンジェリスト。【URL】www.too.com/apple