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MacBookシリーズ、どれを選べばいい?

MacBookシリーズ、どれを選べばいい?

【CHECK 1】持ち運んで好きな場所で使うには?

私たちが新しいノートブックマシンを購入する際に求めるものは何だろうか? 速さや容量といったカタログ上の数値が大きくなるものも大切だが、それ以前に重要なのは「ポータビリティ(持ち運んで好きな場所で使う)」という基本的な部分に着目することではないだろうか。

使っている「オン」の時間に必要とされるコンピューティング性能はもちろん重要だが、それと同じくらい移動中などの「オフ」の時間にもポイントとなる部分がある。つまり「持ち運びやすさ」というスペックについても注目してみたい。

本来はサブノート(セカンドマシン)として開発が出発したアップルのノート戦略だったが、近年ではメインマシンとして使用するユーザが非常に多く、その立ち位置が変わりつつある。その傾向はMacBookシリーズ、特にハイエンドモデルのMacBookプロは「持ち運べるデスクトップ」とも形容されることもあるが、可能な限りノートでも最大限のコンピューティングが実現することを優先されてきたため、軽さや薄さといった要素は二の次にされてきたのも事実である。

その一方で、MacBookエアや新しくなった12インチMacBookのように、業界でもトップクラスの薄型ノートをリリースし、ポータビリティの革新を続けてきたノウハウもある。これがMacBookプロシリーズにも都度フィードバックされ、世代を数えるごとに「より薄く、より軽く」が実現されている。

実際に比較してみよう。現行モデルの中で最小サイズとなる12インチMacBookは、11インチモデルのMacBookエアよりも大きなディスプレイを持ちながら、A4サイズに完全に収まるサイズになっている(右下図参照)。そのため、持ち運び用のバッグの選択肢はビジネス、カジュアル問わずに幅広い選択肢を得ることができる。これはMacBookプロにはない大きな武器といっていいだろう。

この技術を継承した今回の新MacBookプロは、光学式ドライブを搭載した最後の2012年モデルと比較すると、体積にして約45%、重量でも約30%程度にまでシェイプアップされている(下図参照)。

特に13インチモデルは、Mac Bookエアと比べても重さは20グラムしか差がなくなり、容積ベースではついに11インチモデルに匹敵するほどにまでシェイプアップされているのには驚かされる。

店頭などでもよく実際に持ち上げてみて重さを比べている人を見かけるが、より実用的にチェックするのであれば、脇に抱えて持ってみたり、(可能であれば)普段使っているバッグに入れてみて確認するほうが効果的だ。

これまで光学式ドライブを搭載のMacBookプロを使っていたユーザにとっては、バッグの中に占める割合も重さも体感的に半分近くになる。このポータビリティを肌で感じられる体験は、大きな買い替えの理由になるのは間違いないだろう。

●対A4サイズ比較

B5サイズのサブノートクラスに迫るコンパクト化を実現したMacBook。さらに13インチのMacBookプロもほぼA4と呼ぶべきところまで切り詰められているところからも、アップルの開発で「省サイズ」が重要な主軸に置かれ始めているのは間違いないだろう。

●対容積重量比較

容積や重さで比較すると、プロシリーズが以前の世代からどれくらいシェイプアップされたのかがよくわかるだろう。13インチモデルは歴代の同サイズモデルの中でも最小となる仕上がりとなったが、15インチも最厚部がMacBookエアよりも薄くなったことで過去の13インチクラスの容積になった。

 

【CHECK 2】バッテリの稼働時間はどのくらい?

ポータビリティにおいてもう1つ重要なポイントが、バッテリライフだ。2013年にインテルが発表した「ハスウェル・マイクロアーキテクチャ」世代以降のCPUを搭載するモデルは、劇的に電力効率が向上し、以前よりも高い連続駆動時間を実現している。

実際に計測してみるとMacBookやプロでは平均して8時間程度、エアでは10時間以上利用することが可能だった。プロは2012年までの世代と比較してすでに2倍近く延びている。

これによって大きく役割が変わってくるのが、電源アダプタだ。これまで外出時には必携に近かったが、通常使用の範囲で7時間以上持つようになるとバッテリ切れの心配がなくなり、荷物を減らすことができる。

MacBookプロの電源アダプタは、13インチモデルで245グラム、15インチモデルでは310グラム。これは小さなペットボトル1本分の荷物であり、これを省くことができると考えると、その恩恵も想像しやすいだろう。

各世代ごとのバッテリライフを比較。2013年後期を境に劇的な伸びを見せているが、ハイエンドアプリケーションの使用が想定されるプロシリーズは継続して向上しており、重宝するユーザも増えてくるだろう。

●電源アダプタ重量比較

あらためて電源アダプタをそれぞれ比較すると、それなりの重量があることに気づかされる。特に、MacBookプロは光学式ドライブ付きの2012年モデルに電源アタプタを含めた場合、最新モデルの2倍の重さになる。

●総重量比較

たとえば、15インチMacBookは総重量が2850グラムになる。より快適なバッテリライフを求めるならば、電源アダプタを携帯しなくてもいいようにモデルを選択するべきだろう。

USB-Cポートによって生まれる新しい「充電メリット」

歴代MacBookシリーズの充電といえば、これまでマグセーフポートが定番だった。これはマグネット式で着脱が簡単、ポートも「ケーブル引っ掛け」などの事故で破損することがないなどメリットが多いのが特徴でユーザの間でも評価が高い。しかし、今回再びUSB-Cポートに「挿す」方式に戻されてしまった。

これを「改悪だ」と嘆く声もあるが、本当にデメリットしかないのだろうか。実際に使用してみると「どのポートに挿しても充電ができる」というのは非常に便利で、タッチバー搭載モデルであれば、左右どちらからでも充電できるのは過去どのモデルにもなかったメリットだ。またUSB-Cという標準規格になったことで、サードパーティ製の電源アダプタが公式に利用できるようになったのも大きい。都市部であればともかく、地方の電気店では電源アダプタの取り扱いがないことも珍しくない。緊急時に入手できる可能性が高まるのはありがたい限りだ。

長時間バッテリが実現したこともあり、こまめに充電する必要がなくなっていることを鑑みると、マグセーフが廃されたことは今後のライフスタイルから考えてもさほどデメリットに感じる必要はないはずだ。

実際に電源アダプタを忘れてしまい、出張中に地方で入手できずに困ったというケースがあった。新MacBookプロの充電がUSB-Cになったことで、これまで以上にのメリットを感じる場面があるだろう。

 

【CHECK 3】大きいディスプレイが本当に必要?

製品選びの際に大きく影響してくるものの1つに、ディスプレイサイズがある。Macの作業はディスプレイを見ながら行うので、基本的にはサイズが大きいほうが作業しやすいのはいうまでもない(もちろん大きくなれば、本体サイズが大きくなり、重くなるが)。

新MacBookプロでは13インチ(2560×1600ピクセル)と15インチ(2880×1800ピクセル)の2モデルがあり、表示可能領域が大きく異なる。普段1つのウインドウでしか操作しないというのであればそれほどまでに大きな違いは感じられないかもしれないが、複数のソフトを使ってウインドウをたくさん広げたり、クリエイティブワークを行うときにコンテンツを広く表示して操作メニューエリアも十分確保したいことが多い場合などには、実際に13インチと15インチ、さらには12インチのMacBookも含め、あとで後悔しないように店頭でチェックすべきだろう。

とはいえ、単にディスプレイサイズが広ければ、自分の用途にマッチするかという単純な話でもない。広い画面で作業するだけでなく、アイデアが思い浮かんだときにさっとMacBookを取り出して、さっと作業できるほうがいい、という場合には画面の小さい13インチや12インチを選ぶほうが適している場合もある。

実際、レティナディスプレイならスケーリング解像度という機能を使うことで、表示品質を保ったまま「スペースを拡大」にしてデスクトップを解像度を広く変更することができる。「デフォルト」表示のままでもソフトのUIフォントを極小に設定するなどして作業領域を確保するという手もある。そうした観点からも吟味すべきだ。

また、ディスプレイサイズ以上にキーとなってくるのは、レティナディスプレイか、そうではないかである。レティナ非搭載モデルでは視野角の狭いTN方式の液晶パネルが採用されており、表示品質はだいぶ劣る(上下左右などの斜めから見たときに、色合いや発色が変わってしまう)。

この点、現行製品では13インチMacBookエアを除き、すべてレティナが標準となっているので選択は簡単なように思えるが、12インチのMacBook、そして新しいMacBookプロでは明るさや色表現能力、コントラスト比が向上している。新MacBookプロと12インチMacBookの差はわずかだが、旧MacBookプロと実際に見比べてみるとその差は目でわかるほどなので、特に写真や動画等のグラフィックコンテンツを普段たくさん扱うという人はその点も含めて、過去機種からの乗り換え、または現行ラインアップのモデル間で製品選びをする必要があるだろう。

●レティナ非搭載はTN方式

レティナディスプレイ非搭載の場合、上下左右から見たときに色合いや発色が変化するので注意が必要だ。

●スケーリング解像度

レティナディスプレイに搭載されているスケーリング解像度を使えば、MacBookのようなモバイル環境でも十分な作業スペースが手に入る。

 

【CHECK 4】使い心地に優れた入力装置は?

ノートブックマシンをメイン環境として使ううえで、「使い心地」に直結する要素として考えておきたいのが、キーボードやトラックパッドといった「入力インターフェイス」だ。

まず、Mac Bookエアは現行の中では唯一、従来のキーボードと同じパンタグラフ式を継承しているモデルである。この構造はストロークの深さは確保できるものの、キーの四隅が支えられていないため弱くなる。そのため中央部を押下しなければ安定したキータッチを得られない。また、縁を引っ掛けてしまうと簡単にキーが取れてしまうなどの強度面に問題がある。

一方、12インチMacBookや新MacBookプロに実装されているのが、バタフライ構造のキーボードだ。この構造はキーの四隅を支えるため、どの部分を押下しても安定してレスポンスが得られる。新MacBookプロではこれが第二世代へと進化しており、薄さと使いやすさがバランスよく両立している。

進化を続けているのは、トラックパッドも同様だ。以前はクリックを判定するためにトップケースにスイッチが組み込まれており、押下したときに接触することによって動作する構造だった。このため物理的に磨り減るなどして噛み合わせが悪くなると、動作不良になる消耗的な一面もあった。

その点、MacBook以降に採用された「感圧タッチトラックパッド」はこの物理的な構造を廃し、代わりに背面にアップルウォッチなどに採用されているバイブ機能「タプティック・エンジン(Taptic Engine)」を採用することで、この問題を解決している。また、トラックパッド全体がボタンとして機能できるため「どこを押してもクリックになる」というメリットも感じられるだろう。

●バタフライ式キーボード

バタフライ式のキーボードはどこを押しても安定したレスポンスが返ってくる。キーボードやトラックパッドはマシンそのものの使い心地に直結するため、慎重に選択するべきだろう。

●トラックパッドの進化

画面サイズに比例して、MacBook以上にエリアが広い新MacBookプロのトラックパッド。必然的に手がトラックパッドの上に置かれるが、パームリジェクションが優秀で誤作動を感じることが一切なかった。15インチの広さであれば「Inklet」などのトラックパッドを利用したアプリの利便性も格段に高まる。

12インチMacBookから採用が始まった感圧タッチトラックパッドは、どの部分を押してもクリック感知ができるため手の上下移動が少なくなるのが大きなメリットになる。また「感圧」の名のとおり押し込みの強弱を感知して、iPhoneと同じ「フォースタッチ」が利用できるのも、過去にない特徴だ。

MacBookエアに搭載されている従来のトラックパッドは、「ダイビングボード式」と呼ばれる手前部分が上下に稼働してクリックするスイッチに物理的に接触する構造。中央のクリックはトップケース側にボルトが組み込まれており、摩耗したり緩んだりするとクリックの感触がなくなるなど物理的な制約が存在していた。

 

【CHECK 5】買い替えはストレージの「速度」に注目

MacBookシリーズの購入や買い替えを検討する際には、その性能がどれほど向上したかに注目する人は多いだろう。そしてその性能を知るうえで、CPUやGPUの数字を重視する人は多い。たしかにCPUやGPUの速さは、特にクリエイティブ系などのハイエンドソフトを積極的に利用するのであれば、まだまだ重要なファクタの1つであるといえる。しかし、大半のユーザにとってみれば現在のCPUやGPUの性能はすでに必要十分な状態で、場合によってはフルパワーを使いきれないという域に達している感は否めない。

そうした観点に立ったとき、現状の「Macの速さ」を支えるうえで注目するべきなのは、むしろストレージの性能だ。アップルではハードディスクに替わる次世代の高速ストレージとして、2010年のMacBookエアから徐々にフラッシュストレージ(SSD)を標準的に採用し始めた。

当初、フラッシュレトレージはディスクとしての容量も少なく高価だったこともあり、ユーザがその恩恵を受けづらい面もあった。しかし、近年ではその価格がこなれてきたことでTBクラスのストレージの選択も現実的なものとなり、十分にメインストレージとしての役割を担うことが可能になっている。

加えてフラッシュストレージには、ハードディスクとは比較にならないほど速度面での「伸びしろ」がある。つまり、今後どんどん高速化する可能性を持っているということだ。ストレージサイズの拡大と相まって劇的な成長を遂げているのがフラッシュストレージの姿であり、いまやMacの高速化の原動力とも呼べる存在なのである。

実際にベンチマークの結果で比較してみよう。ハードディスク時代のMacBookプロ(2011年モデル)では、平均的なディスク性能はリード(読み込み)で90MB/sec、ライト(書き込み)が80MB/s程度だ。これがレティナディスプレイを搭載した世代に変わるとリードは440MB/sec、ライトは410MB/secといきなり5倍近い性能を出し、フラッシュストレージの優位性を一気にアピールしてきたのは記憶に新しい。

しかし、前述のとおりこの分野の進化はとどまるところを知らないのが現状だ。ディスク性能は1~2年単位で倍速化が進んでおり、新MacBookのではリードはついに2400MB/sec、ライトでも1400MB/secという「爆速」とも呼ぶべき性能を記録している。

初代レティナディスプレイを搭載したMacBookから乗り換えても3~5倍高速なため、実際に使ってみると明らかに速いとわかるだけの性能向上を実現できるのがフラッシュストレージのメリットだ。

Macの買い替えを知るタイミングとしては、CPUのスペックやベンチマークスコアではなく、ディスク性能のベンチマークに注目するべきだ。購入したあとに誰もが実感できる本当の快適度を測るうえで、今後より重要な指針になっていくだろう。

世代ごとにみると、ディスク性能が向上する速度の速さがよくわかる。2013年後期にはディスクの接続も従来のSATA 3.0では転送速度に限界を迎えてしまい、新たにSATA Expressと移行する。これによってリード・ライトともに700MB/secを達成したと思えば、あっという間に越えて2015年には1000MB/secを超えるにまで向上。最新モデルではさらに接続はNVMエクスプレスへと移行し、未だにディスク性能は伸びている。また、下のグラフはより実践的な数値として、起動時間などを計測したベンチマーク。この結果を見ると「速い・遅い」を感じていたボトルネックに当たる部分は、CPUやメモリの優劣以上におおむねストレージに依存してパフォーマンスに影響が出ていることがわかる。

メモリ16GBは本当に「少ない」のか

CPUやGPUはもちろん、ストレージも最大で2TBのオプションが用意されるなど進化はまだまだ続く中、唯一ここ5年ほど大きな動きがない主要パーツがある。それがメモリだ。

デスクトップモデルは順調に最大容量を増やしているにも関わらず、ノートは2012年のレティナ世代以降最大サイズに変化がない。「もっと多くのメモリを積めるようにして欲しい」という声は以前から少なくない。では、なぜアップルはMacBookシリーズのメモリ最大量を16GB以上にしないのだろうか。

実は、macOSには「メモリ圧縮」という使用していないメモリ領域をコンパクト化する技術があり、これによってメモリそのものを「使い切る」というシーンが格段に減っている。また、もしメモリ容量を使い切ってしまったとしても、仮想メモリを生成するフラッシュドライブが極めて高速なためスワップ(データの入れ替え)が発生しても遅延しにくい傾向にある。

今回、実際にメモリを使い切るほどアプリを起動してみたが、体感できるほどの速度低下は見られなかった。これを考えるとアップルは「無駄なメモリ増加はコストが増えるだけでメリットにならない」と判断しているのではないだろうか。

CPUやGPU、ストレージのオプション容量が年々増える中、メモリだけは大きな動きがない。現在MacBookシリーズで選べる最大メモリは16GBだ。