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TITLE 17 砂浜の上のランドリー

著者: 鈴木陵生

TITLE 17 砂浜の上のランドリー

モロッコの観光の拠点となる街マラケシュは、6月に入ると気温が40度を超え始める。僕が泊まる安宿の窓からは、ドライヤーみたいな熱風が流れ込み、それはもう呼吸困難にもなりそうな暑さだ。このままでは死ぬ、と判断した僕は、大西洋沿岸の街エッサウィラに向かった。ここの気温は30度以下。海風が気持ちよくて、まさに天国だ。

世界遺産にもなっているエッサウィラのメディナ(旧市街)は、城壁の中に迷路のような雰囲気ある街並みを今に残す。1日もあればすべて把握できるほど小さな街だが、市場があり、土産物屋がいくつも並び、城壁を出ればすぐにビーチだ。飽きることはない。

特に楽しいのが港だ。沖から戻った漁船から水揚げされたばかりの魚がたくさん売られている。それらの海鮮を買って街中の“焼き屋”に持っていくと、炭火で焼いてくれ、その場で食べることができる。お腹いっぱいになったら、城壁沿いのホテルの屋上で、海を見ながらまったりコーヒータイム。至福の瞬間だ。そんなとき、ふと海岸を見ると、洋服を抱えたおじさんが一人歩いていた。

彼は、持っていた洋服ばかりか、着ていた服まで脱いで海に投げ込むと、それらをジャブジャブ洗い出した。丁寧に砂浜に広げたあとは、パンツ一丁のまま微動だにしない。その仁王立ちの間にも、太陽はゆっくりと水平線に近づいていく。天国エッサウィラの1日が、終わろうとしていた。

鈴木陵生(Ryosei Suzuki)

映像作家。2011年より夫婦で世界一周を始める。旅の様子を発信する映像サイト「旅する鈴木」が、平成26年度文化庁メディア芸術祭審査委員会推薦作品に。2014年11月、DVD&Blu-ray「World TimeLapse」(KADOKAWA)をリリース。 【URL】http://ryoseisuzuki.com

【PS】

モロッコ西岸部が真夏も涼しいのは、大西洋を流れる寒流の影響らしい。エッサウィラの魚は美味しく、キッチンのある宿に数日滞在して海鮮三昧のバカンスを楽しむ、なんてのが本当にオススメです。ちなみに、普通のホテルには、ランドリーサービスが付いてますのでご安心を。

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