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ストレージ/デザイン●新型iMacを速攻チェック!

ストレージ/デザイン●新型iMacを速攻チェック!

独自のフュージョンドライブ

iMacのストレージはシリアルATA接続のハードディスク、PCIe接続のフラッシュストレージ(SSD)の2系統を内部に持つ。容量面ではハードディスクのほうが引き続き安価で大容量のものを選択しやすいが、速度面ではPCIe接続のフラッシュストレージに6~10倍近い性能差が出ている。CPUやメモリが高速化していってもストレージの遅さが全体のボトルネックとなり、「Macを買い換えても性能アップが体感できない」というデメリットにすらなりつつある。

このためハードディスクはアップルの中でも「レガシー」なストレージとして位置づけられ、すでに同社のノートブックではすべてのモデルがフラッシュストレージへと移行。実際、この「爆速」を体感してしまうと、ハードディスクベースのシステムにはもう戻れなくなってしまったという読者も多いはずだ。それだけユーザ体験におけるストレージの存在は、大きな要素となっている。

とはいえ、価格差が同じ1TBで12万円もあることや、3TBを超える容量を1つのディスクで提供できるのは未だハードディスクだけだ。「低価格で大容量」を実現できるのもデスクトップ製品の魅力の1つなのも間違いない。そこでアップルは、2つのストレージ系統を組み合わせた「フュージョンドライブ(Fusion Drive)」というシステムを使ったストレージソリューションを提供している。

接続方式が変わった

フュージョンドライブは高速なフラッシュストレージ側にシステムやソフトウェアを中心とする頻繁に利用されるファイルを配置し、それ以外のファイルは大容量のハードディスクへと格納する。巷にあるようなフラッシュストレージをキャッシュとして利用するタイプとは異なり、ディスクの「速さ」を理解してデータ配置を行うインテリジェントなJBODとも呼ぶべきものだ。システムベースでボリューム管理フレームワーク「コア・ストレージ(Core Storage)」を備えるOS Xならでは機能で、体感上、我々ユーザはフラッシュドライブの持つ速さを存分に恩恵として受けながら、ハードディスクの大容量を利用できる。

このメカニズムについては本誌でも何度か取り上げてきたが、今回のiMacアップデートではよりアクセス速度の体感向上を目指して改良が施されている。たとえば1TBモデルのフュージョンドライブでは、アップルオリジナルの24GBのフラッシュストレージが組み合わせられている。これは従来の128GBのものから大きくシュリンクされているが、OS Xエルキャピタンのシステムファイルサイズが小さくなっていることもあり、通常用途であれば十分な容量が確保されるとの判断だろう。

興味深いのはサイズだけではない。24GBのフラッシュストレージは接続方式は、「NVMe(Non-Volatile Memory Express)」に変わっている。これはシリアルATAと同じストレージ接続専用のインターフェイスで、メモリベースであるフラッシュドライブの特性であるパイプラインやランダムアクセスを考慮し、その性能を最大限に引き出すために設計された次世代規格だ。アップルの製品では今年発表されたレティナディスプレイを搭載した新しいMacBookでも採用されているが、iMacも5GT/sでリンクされているため現行モデルのMacBookエアと同程度のスピードが体感できるはずだ。

さらに2TB以上のフュージョンドライブでは、引き続きPCIe接続の128GBフラッシュストレージが採用されているが、こちらもレーン数が倍増し8GT/sでのアクセスとなったことから、現行のMacBookプロと同等の体感速度になった。また、CTOでフラッシュドライブのみにすれば、ディスク周りはMacプロと同等になり、ハイエンドすら脅かす「完全プロ仕様」にチューンナップすることもできる。

NVMe接続のフュージョンドライブ

NVMeはサムスンやインテル、サンディスク、HGST、Seagateなどのストレージメーカーを中心に策定が進む規格で、フラッシュドライブの特性に最適化したインターフェイスだ。すでに数社から対応製品が発売されているほか、アップルも先行するレティナディスプレイモデルのMacBookで独自実装のフラッシュドライブにNVMeを採用した実績がある。

フュージョンドライブの中身を覗いてみると、容量の異なるフラッシュドライブとハードディスクがOS Xのフレームワーク、コア・ストレージによって「論理ボリューム」としてソフトウェア的にまとめられているのがわかる。このためシリアルATAやPCIe、NVMeといった物理的な接続バスに関係なく利用できるのもメリットだ。

フュージョンドライブの仕組み

フュージョンドライブはフラッシュストレージとハードディスクのいいとこ取りをしたもの。扱うデータによってOSが保存先を自動で決める。

 

技術の「年末決算」

改めて全体のデザインについて目を向けてみよう。iMacのハードウェア意匠として第5世代にあたる現在のデザインは、2012年から継承されているものだ。継ぎ目のないアルミボディは、エッジ部分で5ミリしかないという驚異的な薄さを誇る。重さに関しても27インチモデルで9・54キロ、21インチモデルでは5・68キロしかない。21インチモデルなどは、実際に持ち上げてみると「これで本当にコンピュータが入っているのか」と不安になるほどの軽さに驚かされるだろう。

この軽量化の秘密は内部にあるといっていい。この薄さの筐体の中に収めるディスプレイパネルは厚みがわずか1.4ミリしかない。液晶のバックライトやカラーフィルタ、偏向フィルタ、電極といった23層もある構造をこの中に押し込めながら、さらにその背面にはメインロジックボードを配置する必要がある。

このためにモジュール全体をコンパクトにまとめながら、なおかつ高いパフォーマンスと豊富なインターフェイスを取り扱うために、アップルは積極的にMacBookシリーズのロジックボードから設計を流用している。以前からMacミニとMacBookエアのロジックボードは共通化が図られ、省電力や省スペースに貢献してきた実績もある。

iMacでもMacBookシリーズで先行して実装されてきた、フラッシュストレージのPCIeやNVMe接続を採用しているが、ほかにもグラフィックスカード「モバイル・ラデオン(Mobile RADEON)」をMacBookプロで先に実装してから反映させるといった部分も見られる。

つまり、毎年最後のラインアップとしてアップデートされる傾向にあるiMacは、その年にノートブックで採用されたテクノロジーを総ざらいして、コンパクトさと性能を両立させているといえるだろう。

継ぎ目のないアルミボディ

ディスプレイのエッジはこれまでどおりわずか5ミリ。継ぎ目のないボディを実現するために、「摩擦攪拌接合」という方法を用い、極度に高い摩擦熱と圧力を組み合わせて2つのアルミニウム面にある分子を混合することで、継ぎ目がなく、精密で、極めて強度の高い接合を生み出している。

現実解としての留保

豊富なアップデートが揃う中で、唯一意外ともいえるのが背面に備えるインターフェイス類に変化がなかったことだ。厳密には、すべてのモデルが外部ディスプレイに4K(ウルトラHDおよびエントリーモデルを除きDCI 4K)出力と27インチモデルでは5K出力が可能になってはいるが、端子自体はサンダーボルト2から変更がなかった。

27インチモデルに使われている新型CPU、スカイレイクは次世代サンダーボルトコントローラ「アルピン・リッジ(Alpine Ridge)」に対応している。これによってサンダーボルト3(最大40Gbps)やUSB 3.1(最大10Gbps)といった従来よりそれぞれ2倍高速なインターフェイスに更新されるため、今回のアップデートでの搭載が期待されていたが、残念ながら見送られた。

これは、新たな形状となるUSBタイプCにネイティブ対応する周辺機器が市場にまだ少ないことや、上位機種であるMacプロが採用するCPUのジーオンはまだブロードウェル世代までしかリリースされておらず、利用可能な時期が確定しないことなど、複合的な要因が絡んでいるのは間違いなさそうだ。

とはいえ、タイプCの形状はすでにMacBookで採用されていることや、サンダーボルト3の端子もタイプCに統合されて接続するケーブルで自動的に判別される利便性があること、何よりこのタイプCの企画立案・推進がアップル中心に行われていることから、いずれ近い時期にタイプCへの置き換えが始まるのは間違いない。それだけに今回の新モデルでインターフェイスの更新がなかったことは惜しまれる。

従来同様の背面インターフェイス

サンダーボルト3やUSB 3.1が利用できるタイプCポートの採用が期待されていたが、今回は残念ながら見送られた。唯一サンダーボルト端子から利用できるディスプレイポートによるビデオ出力は4K出力およびデュアルケーブルによる5K出力(27インチモデルのみ)をサポートするようにアップデートされている。