【OVERVIEW】細部まで考え抜かれたアーキテクチャ
SSD化の恩恵
新Macミニは内部も一新されている。従来の2.5インチHDDがなくなったことでスペースに余裕が生まれ、6コアプロセッサを積んでも十分に冷却できるファンやヒートシンクを内蔵。それでいて、電源ユニットは変わらず内蔵されているのだから驚きだ。
ロジックボードには、パワフルな処理性能を実現する最新技術がとことん詰め込まれている。中でも「アップルT2」セキュリティチップは、新モデルで新たに搭載されたコンポーネントだ。T2チップはセキュリティ関連と動画などのエンコード(符号化)処理を司ることに加え、SSDコントローラやサウンドコントローラ、画像信号プロセッサなどの役目を兼ねている。従来は複数分散していたものを統合し、シームレスな通信を可能にしているのだ。
ロジックボードの全容
(1)メモリ
8GBモデルでは4GBのSKhynix製モジュールが2枚装着されている。
(2)フラッシュメモ
オンボードSSDストレージを構成するフラッシュメモリは東芝製だ。
(3)プロセッサ
第8世代Intel Core i3/i5/i7プロセッサを搭載し、GPUを統合している。
(4)Apple T2
セキュリティチップSSDコントローラ、イメージ信号プロセッサなどを兼ねる。
(5)PCH
プラットフォームコントローラハブはIntel SR40Eを搭載。プロセッサに次ぐ大きなLSIだ。
(6)Thunderbolt 3コントローラ
Mac miniのポテンシャルを引き出すThuderbolt 3コントローラもIntel製だ。
【Point】発熱や動作音は大丈夫?
高性能でも低音&静粛
従来のMacミニは、その小ささゆえに熱を持ちやすい傾向にあり、底面の蓋を開けて風通しをよくして使っている人もいた。6コアプロセッサになったことでさらに熱がこもるのではと心配に思う人もいるだろうが、アップルはしっかりと対策を打っている。通気口は前モデルより2倍近く広くなり、内部のファンも大型化。ファンの厚みが大幅に増したことで、エアフローは2倍となった。
動作音に関しては、従来のモデルでは負荷が高くなってファンが全開(5000回転/分)になるとかなり騒々しかったが、新モデルは高性能なぶん余裕が感じられ、高負荷時でもなかなか静かである。
発熱に関しては前モデルより確実に抑えられているものの、やはり多少こもる感じがして筐体全体が温かくなる。アルミボディそのものがヒートシンクと考えると、小さいからといって安易に狭い所に押し込んだりしないように注意したい。
通気口は前モデルよりも倍近く大型化。なお、スペースを確保するためにUSB3.0ポートが垂直から水平に変更されている。
クーリングシステムの中核を担うシロッコファンは容量が増えており、最大持続力が70%、エアーフローが2倍アップ。
1分間の4K動画を「Quick Time Player」で別の4K動画(HEVC)にエンコードしたときの発熱の様子。前モデルに比べて、新モデルは全体的にクールな状態を保っている。計測はフリアーシステムズ「FLIR ONE Pro」を使用。
【Point】自分で拡張できる?
基本的にはクローズド
結論から言うと、新MacミニのプロセッサとSSDストレージは交換不可能だ。特にSSDはCTOオプションで追加すると値段が跳ね上がるので自分で増設したいところだが、SSDのフラッシュメモリチップは直づけされており換装はできなくなっている。もっとも、SSDがモジュール型式だったとしても換装はできないだろう。なぜなら、アップルT2チップがSSDコントローラを兼ねており、ハードウェア的にリンクしているからだ。
一方、最近のMacでは珍しく、メインメモリはSO─DIMMスロットが使われており、購入後の換装が可能である。とはいえ、メモリ部分は特殊なネジで固定されたシールドに覆われており、簡単にはアクセスできない。これは、立体的なレイアウトで内部面積を節約するための工夫の一環であるとも推察できる。オンボードメモリはロジックボード上でかなりの面積を取ってしまうのだ。
メモリを換装したい場合は、自分で工具を用意して行うか、自信がない場合はアップルの正規サービスプロバイダに依頼しよう。
右側の長方形部分がフラッシュメモリチップ、左側の正方形部分がチップがApple T2チップ。2つあわせてSSDストレージを構成している。
SO-DIMMモジュールで搭載されたメインメモリは、金属シールドに覆われてしっかりと保護されている。
底面の金属シールドを止めているのは、いわゆるいじり止めトルクスネジ。中央の突起で普通のドライバーは挿すことができない。
【上級者向け!】新Mac miniのメモリ交換方法
ここでは、2018年モデルのMac miniを分解してメモリを交換する方法を解説しよう。それほど難しい工程ではないものの、特殊なネジが多用されているうえ、ロジックボードを取り出す必要があるため破損のリスクが高いことは注意してほしい。また、Appleもユーザによるメモリ増設を推奨していないので、すべて自己責任で行う必要がある。
必要な工具は、通常のトルクスドライバー5番(T5)と10番(T10)、いじり止め対応の6番(T6 Security)の3本だ。ネットではペンタローブが必要という情報が流れたが間違いである。
換装方法は、まず底面の蓋を取り、金属シールドのネジをいじり止め対応のトルクス6番で取り外す。次にWi-Fiアンテナを抜き、冷却ファンを外す。そして、トルクス10番でロジックボードをフリーにして筐体から引き抜く。要所要所でコネクタを抜く必要があるので細心の注意を払いたいところだ。
無事ロジックボードを取り出したら、メモリモジュールの金属シールドをトルクス5番で外そう。最後にSO-DIMMの両側のツメを広げて外したら、新しいメモリモジュールと差し替えられる。
(1)底面のプラスチックの蓋は本体にはまっているだけ。指の爪を引っかければ取れる。6カ所のネジをトルクス6番で外そう。
(2)シールドとロジックボードはWi-Fiのアンテナ線でつながっているのでゆっくり外そう。アンテナ線の固定ネジはトルクス6番で外せる。
(3)次に冷却ファンを取り外す。4カ所のネジをトルクス6番で外したら、ケーブルに注意してファンを引き上げて取り除く。
(4)ロジックボードを固定している2つのネジをトルクス10番で外す。かなり固いのでネジ山をナメないように注意しよう。
(5)電源ケーブルなど2つのコネクタを引き抜いてから、ヒートシンクを押してロジックボードを引き出す。
(6)メモリモジュールを覆うシールドのネジはトルクス5番で外す。これでメモリモジュールにアクセスできるので、新しい物と差し替えよう。
●必要な工具
トルクスドライバー5番(T5)と10番(T10)、いじり止め対応の6番(T6 Security)を用意しよう。ホームセンターやオンラインショップで購入できる。