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ギル・アメリオ時代の“集大成”「Macintosh Performa 5200(5210)」。キャッチコピーは「あなたがコンピュータで何ができるか」。込められた現代のMacに通ずるスピリット

ギル・アメリオ時代の“集大成”「Macintosh Performa 5200(5210)」。キャッチコピーは「あなたがコンピュータで何ができるか」。込められた現代のMacに通ずるスピリット

どん底にあったAppleの財政。起死回生の望みをかけてリリースされたPerforma 5200

コチラの記事でPerforma 520を採り上げたが、今回はPerforma 5200(日本向けは5210)について書いていこう。製品名のゼロが1つ増えている。この4桁の型番は、CPUが68KからPowerPCへと変更されたことを象徴していた。と同時に、1995年デビューのこのマシンでは、ディスプレイも大型化し、全体のデザインもそれに合わせて、よりスクエアな印象のものへとフルモデルチェンジされた。

1995年といえば、故スティーブ・ジョブズがAppleに復帰する契約書にサインする前年のことで、同社の財政状態はどん底に近く、経営も行き詰まりかけていた。それだけに、このモデルには起死回生の望みがかけられたのだろう。ギル・アメリオがCEOだった時代のAppleのオールインワンMacとしては、集大成ともいえる製品に仕立てられていた。

当時のモジュラーMacとは一銭を画した、Performa 5200のオール樹脂製ボディ

筐体はオール樹脂製で、当時のモジュラーMacに見られた板金ボディとは一線を画している。先に触れたように、この時点ではまだCRTもトリニトロン管を使用し、画質も維持されていた。

その解像度は16ビットカラー(約3万2000色)表示モードでは640×480ピクセル、8ビットカラー(256色)では最大832×624ピクセルで、読者の皆さんはこれらの数字に驚かれるかもしれないが、この時代のコンシューマー機はそれで十分と考えられており、ユーザも特に不満は持たなかったのである。

オールインワンモデルでありながら、ティルトスタンド付きで画面の角度を好みに合わせて変更できるようにした点も良く、さらにオプションでテレビ/FMラジオチューナカードを装着することも可能。多くのソフトがバンドルされて、価格は24万円だった。

Performa 520の広告から伝わる、現代に通づるMacのスピリット

コンシューマー向けだけあって、Appleは宣伝にも力を入れた。このページに掲載したものはフランスの雑誌広告だが、コピーを含めて、とても洒落た構成になっている。

まず、「インカの寺院の遺跡を発見したのは、窓のそばだった」というメインコピーがあり、「建築家のイブとブリジットが自分たちのスタジオを開いたときに、RISCプロセッサのPowerPCを搭載したMacintosh Permorma 5200を入手した」と書かれている。そして、「彼らの建築は、インカ文明からのインスピレーションを受けており、ペルーの遺跡発掘の最新情報をインターネット経由で得ている」のだという。

また、「ブリジットは、建築計画をコンピュータ上で練り、3D表示し、直接修正できるようになることを夢見ていたが、それがPerformaでCADソフトを使って実現」することができた。一方でイブは、「Performaのフォルムが気に入っており、テレビ機能を使ってラグビーの試合を観る」そうだ。

人物名がフルネームではなく顔写真もないが、もし広告用の架空の設定だとしても、なかなかユニークな着眼点を持つこのシリーズは、場所やユーザの職業を変えていくつかのバリエーションが作られたが、決めのキャッチは、すべてこういうものだった。

  「大切なことは、コンピュータが何をできるかではなく、あなたがコンピュータで何をできるかです」

そのスピリットは、今のMacintoshにも息づいている。

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著者プロフィール

大谷和利

大谷和利

1958年東京都生まれ。テクノロジーライター、私設アップル・エバンジェリスト、原宿AssistOn(www.assiston.co.jp)取締役。スティーブ・ジョブズ、ビル・ゲイツへのインタビューを含むコンピュータ専門誌への執筆をはじめ、企業のデザイン部門の取材、製品企画のコンサルティングを行っている。

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