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外部ディスプレイ「27R83U」レビュー。MacBook Proと同じ“Mini LED”を採用したTCLのゲーミングディスプレイ。ゲームに、ビジネスに、クリエイティブワークに、Macと使ってみた結論は?

著者: 小平淳一

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外部ディスプレイ「27R83U」レビュー。MacBook Proと同じ“Mini LED”を採用したTCLのゲーミングディスプレイ。ゲームに、ビジネスに、クリエイティブワークに、Macと使ってみた結論は?

TCLの「27R83U(10万8000円:Amazon販売価格)」は、160Hzの高リフレッシュレートと高画質を両立させた27インチ4Kディスプレイです。メーカーは「ゲーミングディスプレイ」としてアピールしていますが、実際に使ってみるとゲーム以外の用途でも優れた性能を発揮しました。さらに、Macでもその魅力を最大限に引き出せます。

高品質なゲーミングディスプレイ「27R83U」。Macとの相性は?

「27R83U」は、テレビメーカーとしても知られるTCLが2024年12月2日に発売した27インチの4Kディスプレイです。160Hzの高リフレッシュレートをはじめ、ゲーム体験を大幅に向上させるスペックを備えています。いわゆる、「ゲーミングディスプレイ」という立ち位置の製品です。

前面からの印象は非常にシンプル。高さは52.4〜43.4センチの間で調節できます。

しかし、本製品の魅力はゲーム用途にとどまりません。量子ドットMiniLEDという先進的な技術を採用することで、高い輝度と精細なコントラストを実現しています。現在、ハイエンド向けディスプレイの多くは有機ELを採用していますが、本製品は量子ドットMiniLEDによって高画質を実現しながらも焼き付きのリスクを軽減し、高寿命を実現します(メーカー公式アナウンスによる)。

ゲーミングディスプレイと聞くと、Windows PCで本格的なゲームを楽しむユーザをターゲットにしているように思えるかもしれません。しかし、最近はMacもゲームタイトルが充実しつつあり、ゲーミングディスプレイがMacでどれだけ活用できるか気になっている人もいるでしょう。かくいう私もそんなゲーム愛好家の一人。今回はメーカーから製品を借り、Macでの使用感やパフォーマンスを徹底検証しました。

背面は、滑らかなカーブとLEDがどこか近未来的な印象。LEDの点灯パターンは複数から選択可能で、オフにすることもできます。
接続ポートは、USB Type-C、Display Port 1.4、HDMI 2.1(2ポート)の3種類。ほかに、USB-A(2.0)ポート×2基、USB-B(2.0)ポート×1基、ヘッドフォンジャックを備えています。

「バイオハザード」をプレイ! カメラワークが超スムース。目の疲労感も軽減されました

「27R83U」の最大の注目ポイントであるリフレッシュレートについてチェックしていきましょう。本製品は、USB Type-C、DisplayPort 1.4、HDMI 2.1と3種類の接続ポートを搭載しており、そのすべてで4K/160Hzの出力に対応しています。

なお、今回の検証で使ったマシンはM1 Pro搭載のMacBook Proです。USB-Cケーブルで接続すると、最大解像度の3840×2160ピクセルで144Hzの出力が可能でした。スペック上でサポートされている160Hzのリフレッシュレートは、最低解像度の1920×1080ピクセルでも選択できず。しかし、これはMac側のUSB-C(Thunderbolt 4)の仕様制限によるものだと考えられます。

3840×2160ピクセルでも、144Hzのリフレッシュレートを選択可能でした。ただし、最大解像度だと画面が広すぎて逆に使いにくくなるので、2560×1440ピクセルくらいで使うのがおすすめです。

とはいえ、144Hzの表示でもゲーム体験は劇的に向上しました。「BIOHAZARD VILLAGE」をプレイすると、カメラ操作が非常に滑らかで、視点を素早く動かしても画面が一切カクつきません。操作の精度が上がっただけでなく、目の疲れも軽減されたように感じました。

「BIOHAZARD VILLAGE」では、マシンパワーに合わせてゲームの解像度を1920×1080ピクセルに落としたところ、120fps前後のパフォーマンスで表示されました。画面がカクつかないので目の疲労感も軽減されます。
ゲームにおけるfps(Frames Per Second)とは、1秒間に表示されるフレーム数のこと。そしてリフレッシュレート(Hz)とは、ディスプレイが1秒間に画面を書き換える回数のことです。120fpsで動作しているゲーム映像を十分に出力するには、120Hz以上のリフレッシュレートが求められます。

レースやアクションなど、ハイスピードなゲームと相性抜群! “面白さ”も底上げされた気がします

そのほか、レースゲームやFPS(一人称視点シューティング)といったジャンルでは、リフレッシュレートの違いを顕著に感じることができました。思いどおりに操作できるようになると、ゲームの楽しさが一気に高まります。リフレッシュレートの違いで面白さや疲労感まで変わってくるのは、新鮮な驚きでした。

レースゲームの「アスファルト-Legends Unite」は、ゲーム内の設定では30fps/60fpsの切り替えしかできませんが、実際の数値を見ていると60fps以上出ることがあり、高リフレッシュレートの恩恵が得られます。
Apple Arcadeでプレイできる「BEAST: Bio Exo Arena Suit Team」。ポップな画面ながら白熱のバトルが楽しめる対戦シューティング。こちらも高リフレッシュレートだと操作感が向上します。

ただし、「27R83U」の高いリフレッシュレートを活かすためにはゲームタイトル側の対応も必要です。マシンスペックに合わせてグラフィック設定やレンダリング品質を調整できるゲームタイトルでないと、せっかくの高リフレッシュレートをフルに発揮できない可能性があります。

最新のmacOS Sequoiaでは、「ターミナル」から「Metal Performance HUD」というパネルを表示し、ゲームアプリなどのパフォーマンスをチェックできます。「defaults write -g MetalForceHudEnabled -bool YES」と入力すると有効になり、最後の「YES」部分を「NO」にすると無効になります。また、有効時には[Shift]キー+[F9]キーを押すことでオン/オフが可能です。
本製品は、ゲームを快適にする機能を複数搭載。たとえば「暗部ハイライト」を有効にすると、暗い部分を明るく補正してくれます。この機能により、暗い場所に潜んでいるアイテムや敵などを見つけやすくなります(図はイメージ)。

Webブラウジングやビジネス資料の閲覧にもイイ! 最新Macと一緒に買いたくなってきた…

高リフレッシュレートによる恩恵は、ゲームだけでなく日常の作業やビジネスシーンでも体感できました。たとえばWebブラウジングの際、リフレッシュレートが高いとスクロール時の表示が非常に滑らかになります。画面上の文字がぶれにくいため、流れるようにページをスクロールしても内容を追いやすく、情報の流し読みがしやすくなります。

SafariでWebページを閲覧中、2本指ジェスチャでどんどんスクロールしても滑らかに表示されました。流し読みでも文字を追えるので効率的に情報収集ができます。

これは、PDFやWord文書を閲覧するときも同様です。特に、長い文書を参照する場面でその恩恵が際立ちます。リフレッシュレートの高さが作業効率に直結し、必要な情報を素早く見つけられるのは大きなメリットになるでしょう。

2021年モデル以降のMacBook Proでは、「ProMotionテクノロジー」による最大120Hzでの表示が可能です。一方、今回の検証において「27R83U」では最大144Hz。その数値どおりMacBook Proの内蔵ディスプレイを超える滑らかさになっていると感じました。

なお、今回検証したマシンでは144Hzが上限でしたが、より新しいMacを使えば、最大リフレッシュレートの160Hzを引き出すことが可能です。具体的には、HDMI 2.1規格に対応する現行のMac Studio、Mac mini、MacBook Proは、最大240Hzのリフレッシュレートに対応しています。

日常的に160Hzを実現できると思うと、「27R83U」と新型Macをセットで購入したくなる衝動に駆られます。

MacBook Pro(2021年モデル)はHDMIの規格が2.0となっており、HDMI接続すると最小解像度でも60Hzが上限です。

最新のMacBook Proと同じMini LEDを採用。輝度、コントラスト比、色域は超ハイレベル!

「27R83U」は、色表現や階調性能においても非常に優れたディスプレイです。ピーク輝度は1400ニト、コントラスト比は3300:1で、VESA規格の輝度認証としては最高位の「DisplayHDR 1400」を取得しています。また、色域に関してはデジタルシネマ向けの色空間であるDCI-P3を95%、AdobeRGBを97%カバーしています。

システム設定でリフレッシュレートを60Hzに下げると、[ハイダイナミックレンジ]を有効にするスイッチが表示されました。ゲームや日常的な作業は高リフレッシュレートで行い、写真や映像を扱うときは60Hzに切り替えるといった運用方法がいいでしょう。

この高性能を支えるテクノロジーの1つが、量子ドットMiniLED技術です。この技術は、2024年にリリースされた最新のMacBook Proにも採用されており、優れた画質を実現する最先端技術といえます。実際にHDR画像を表示してみると、一般的なディスプレイでは潰れがちな暗部のディテールもしっかりと再現されていました。

iPhoneで撮影したHDR写真。「27R83U」で表示したところ、暗い部分のディテールもしっかりと確認できました。

個人的な印象では、検証で使用したMacBook Pro(2021年モデル)よりも暗部の階調が優れていると感じます(MacBook Proの経年劣化も影響しているかもしれません)。

この製品は、バックライトの明るさを部分的に制御する「ローカルディミング」テクノロジーを採用。1100分割という細かさで繊細な階調表現を実現します。

コントラスト比が高く、色表現も優れているディスプレイは、プロの映像制作や写真編集といったクリエイティブ用途で心強い味方になります。ここまでの高スペックを誇るハイエンドディスプレイは種類が少なく、その多くは30インチを超えるサイズで価格も高価。27インチという扱いやすいサイズで実現している製品はかなり希少です。

本体下部にスピーカを内蔵している点も魅力の1つ。3W×2の小型ユニットで高音質とは言えませんが、別途スピーカをつながなくても音声を出力できるのは意外と便利です。

Macユーザにもおすすめの外部ディスプレイ。ゲームにも、クリエイティブにも、ビジネスにも使えます

「27R83U」は、ゲーミングディスプレイという枠を超えた多機能・高性能なディスプレイです。160Hzの高リフレッシュレートによる滑らかな表示は、ゲーム体験を飛躍的に向上させるだけでなく、Webブラウジングや文書閲覧などの日常作業でも快適さを実感できました。さらに、ピーク輝度1400ニト、コントラスト比3300:1という高い表現力は、クリエイティブプロのニーズにも十分応える実力を持っています。

輝度、色表現、コントラスト比など、総合的に優れた表示性能を持つ「27R83U」は、写真のレタッチなどでも威力を発揮するでしょう。

価格は10万8000円(Amazon価格)と、これだけのスペックを考えるとコストパフォーマンスは抜群です。ちなみに、同価格帯でVESA認証のDisplayHDR 1400を取得している製品はほとんど存在しません。その点でも、唯一無二の選択肢といえるでしょう。

最新のMac StudioやMac mini、MacBook Proと組み合わせれば、HDMI 2.1経由で4K/120Hzやそれ以上の性能を引き出せる点も大きな魅力です。ゲーム、ビジネス、クリエイティブと幅広い用途で頼りになる「27R83U」は、Macユーザにも強くおすすめできるディスプレイでした。

一見ミスマッチなデザイン性ですが、ナチュラルな筆者のデスクにも自然にフィットしてくれました。

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著者プロフィール

小平淳一

小平淳一

Apple製品を愛するフリーランスの編集者&ジャーナリスト。主な仕事に「Mac Fan」「Web Desinging」「集英社オンライン」「PC Watch」の執筆と編集、企業販促物のコピーライティングなど。ときどき絵描きも。Webの制作・運用も担う。

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