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第19話 袖振り合うも他生の縁

著者: 三宅 琢

第19話 袖振り合うも他生の縁

※本コラムは「Mac Fan 2022年3月号」に掲載されたものです。

私は医師として、障害者の支援者団体や患者会などを対象に勉強会を実施する機会があります。そうした中で、「経験不足から、支援を求めている障害者に自然な声掛けをすることに不安がある」という話をよく耳にします。そこで今回は、当事者と支援者のコミュニケーションのハードルを下げることで社会課題を解決する「袖縁」というアプリについて紹介します。

袖縁とは、『安心安全なマッチング』と『あんちょこ/トリセツ』で心のバリアを軽やかに乗り越え、 事業者の『合理的配慮の提供』をほっこり支援し、要配慮者の出かける勇気と楽しさを向上させるアプリ。困りごとに遭遇した要配慮者が『袖縁』で手助け依頼、駅なら駅員、お店なら店員に依頼が届く。 TV通話/音声通話/チャットでの対応や、位置確認しての出向いて対応。 好みの対応の仕方を書いた『あんちょこ/トリセツ』が依頼と共に届き、手助けする方される方、双方ほっこり安心。『いまここ』ボタンで、今いる施設/場所に応じた情報を得ることができる

「袖縁」アプリの説明資料より抜粋

なお、「合理的配慮」とは障害者の権利に関する条約において「障害者がほかの者と平等にすべての人権および基本的自由を享有し、または行使することを確保するための必要かつ適当な変更及び調整であって、特定の場合において必要とされるものであり、かつ、均衡を失したまたは過度の負担を課さないものをいう」と定義されています。簡単に言うと、「障害がある方がサービス等を利用することを前提として、事業者は配慮をすることが法的に求められている」ということです。

一方、教育業界では支援者は困っている子どもに手を差し伸べるよりも、困っている子どもが自ら「助けて」と言えるようになるための教育が大切と言われています。他人に支援を求めることに苦手意識がある内気な日本人にとって、日常的なコミュニケーションツールとなったスマホを通じて、支援を求める側と支援する側のコミュニケーションのハードルが下がることは重要です。

話は変わりますが、最近ペットを連れてベビーカーを押して散歩をしていると、思った以上に知らない人に声をかけられるということに気づきました。「都市部は人間関係が希薄」と考えられがちですが、ペットやベビーカーという象徴的なものが気軽な会話や支援の契機になっているのかもしれません。日本人は、きっかけがあれば多くの人が支援の手を差し伸べたいという人情味の溢れる国民性。縁を活かせるテクノロジーの活用も、これからの時代には必要なのかもしれません。

番犬には不向きだが、縁をつなぐ愛犬。

著者プロフィール

三宅 琢

三宅 琢

医師・医学博士、眼科専門医、労働衛生コンサルタント、メンタルヘルス法務主任者。株式会社Studio Gift Hands 代表取締役。医師免許を持って活動するマルチフィールドコンサルタント。主な活動領域は、(1)iOS端末を用いた障害者への就労・就学支援、(2)企業の産業保健・ヘルスケア法務顧問、(3)遊べる病院「Vision Park」(2018年グッドデザイン賞受賞)のコンセプトディレクター、運営責任者などを中心に、医療・福祉・教育・ビジネス・エンタメ領域を越境的に活動している。また東京大学において、健診データ活用、行動変容、支援機器活用関連の研究室に所属する客員研究員としても活動中。主な著書として、管理職向けメンタル・モチベーションマネジメント本である『マネジメントはがんばらないほどうまくいく』(クロスメディア・パブリッシング)や歌集・童話『向日葵と僕』(パブリック・ブレイン)などがある。

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