先月は、使い勝手が過去最高によかったウィーンの公共自転車について書いたが、他の都市についても順次解説していきたい。
スペイン首都、マドリッドの「BiciMAD」は、WEBで事前登録すれば、観光客でも利用可能だ(ちなみに、このあとご紹介する自転車はすべて観光客が利用可能)。電動式で、過去に乗った中でもっとも速く、コントローラを最大にすると、街中を走る車と並走できるほどだった。車道を気持ちよくハイスピードで疾走できる「BiciMAD」が、個人的には一番好きだったかもしれない。
少し飛んで北欧へ。ぼくが大好きなデンマークの首都、コペンハーゲンの「Bycyklen」はかなりイケていた。
この街は超がつくほどの自転車天国である。自転車の地位は、歩行者や車よりも上なのではないかと思うほど、ものすごい数の自転車が我が物顔で市中を走っている。おもしろいことに、普段は優しい街の人たちも、自転車に乗っていると性格が豹変してちょっと怖くなる(笑)。車道と同じくらいの幅の専用路が贅沢に敷かれていて、市内移動限定で考えると自転車がもっとも効率いい交通手段だ。
80年後半から90年前半にかけて、この街も他の大都市と同様に、自家用車の数が飽和状態となり渋滞が大きな問題となった。先進的で動きの早いデンマークらしく、行政と市民が判断したのは、自転車優先シティへの方向転換であった。そういった背景を受けて、公共自転車の歴史は1995年スタートと非常に古い。
2012年からは、全システムがリニューアルされ、自転車は北欧らしいモダンデザインに。さらに電動式となり、ハンドル上にiPadミニほどの巨大モニタが設置された。このモニタにはマップが仕込まれており、目的地を入れればナビゲーションとして機能するだけでなく、バイクを返却するステーションの場所も確認できるのである。さらに、返却スタンドが満車の場合は、そこから25メートル以内に駐車しておけば、返却扱いとなる点も革命的に便利であった。
おそらくもっとも有名なのが、パリの「Velib’」だろう。自転車を借りるステーションの液晶画面で、日本語表示される点がすごい。ぼくが訪れた中では唯一だった。4桁のパスワードを一度登録してしまうと、返却したり再度レンタルする際に、その番号が必要なので忘れないようにしないといけない。こういった暗証番号方式はほかでも多い。ちなみに、最初の利用30分が無料なので、不安な方はまずは試してみるといいだろう。
ステーションに戻す際、もしそこが満車で自転車を入れるスタンドがない場合は、画面でその旨を伝えるボタンを押せば15分無料延長してくれる。その時間を利用して、近くのステーションに運べばいいのだ。こういった、かゆいところに手が届く機能面も、「Velib’」が世界一と言われるゆえんだろう。
次号からは、公共バイクを使ううえでのコツや注意点についても触れてみたい。

※この記事は『Mac Fan 2018年10月号』に掲載されたものです。
著者プロフィール

四角大輔
作家/森の生活者/環境保護アンバサダー。ニュージーランド湖畔の森でサステナブルな自給自足ライフを営み、場所・時間・お金に縛られず、組織や制度に依存しない生き方を構築。レコード会社プロデューサー時代に、10回のミリオンヒットを記録。Greenpeace JapanとFairtrade Japanの日本人初アンバサダー、環境省アンバサダーを務める。会員制コミュニティ〈LifestyleDesign.Camp〉主宰。ポッドキャスト〈noiseless world〉ナビゲーター。『超ミニマル・ライフ』『超ミニマル主義』『人生やらなくていいリスト』『自由であり続けるために 20代で捨てるべき50のこと』『バックパッキング登山大全』など著書多数。