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WWDC 2016基調講演レポート②●WWDC 2016詳細レポ

WWDC 2016基調講演レポート②●WWDC 2016詳細レポ

まったく新しいiOS

プラットフォームの話題は、開発者にとってもユーザにとっても「過去最大のリリース」とアップルが公言するiOS 10へと移る。

このステージではユーザ向けの新機能を10個紹介された。まず最初は「ユーザ体験」だ。iOS 10ではロック画面のデザインが変わり、それに従って操作体系も進化。通知やウィジェットといった機能が使いやすくなり、個別のアプリを起動しなくても必要なことを済ませることができるようになり、「スマートフォンは画面が狭いのでアプリ単位でしか機能が使えない」という常識を変えるだろう。

これは、次いで紹介された「Siri」のアップデートにも言えることだ。iOS 10ではついにサードパーティによるSiriの連係が解禁され、対応アプリが今後続々と増えていく。メッセージや乗り換え、ワークアウト、ドライブといった日常のあらゆるシーンにおいて音声操作が可能となり、画面操作の制約なくiOSの恩恵を受けられる。

強化されたSiriの性能は、3つ目の新機能「QuickType」の拡張にも組み込まれている。この入力支援システムは、日本語の「予測変換」と同様に次に来るべき英単語を推測して候補に表示してくれるインテリジェントな機能。今回のアップデートではこれに加えて、メッセージで誰かを会話している際に必要に応じて現在位置やメールアドレスといった情報を入力候補に加えたり、メッセージの内容からデータを抽出してカレンダーに予定を書き込んだりするようになった。

こういったデバイスの中にある情報をより深く分析して役立てようとする動きは、アップルにとって重要な技術の柱なのは間違いない。4つ目の「写真」アプリケーションのアップデートも、従来の撮影地ごとに写真を束ねて表示する機能に加えて、顔認識(誰が写っているのか)やオブジェクト(人間以外に写っているものは何か)、シーン認識(どんな風景なのか)といった条件を人工知能によってディープラーニング(深層学習)させて自動的にアルバムを作成する。

成熟期に入ったiOSにとって重要なのは、革新的な新機能だけでなくそもそもの「使いやすさ」というアップルの伝統的な強みの部分の強化だ。5、6、7番目として登場した「マップ」「ミュージック」「ニュース」はその最たるもので、最初に紹介された新機能であるユーザ体験に呼応するようにインターフェイスデザインの大きな見直しが行われた。

また、8番目に紹介された「ホームキット(HomeKit)」も重要だ。iOS 10では管理アプリとして「ホーム」が提供され、ホームキットに対応した機器をまとめて管理できる。9番目、10番目に紹介された「電話」「メッセージ」の改良に関しても、これでもかと言わんばかりに新機能を搭載し、付加価値を高めている。

こうした主要機能以外にも、メモの共有やメールの会話表示、ライブフォトの編集、iPadでのサファリのスプリット・ビューなども追加され、まさにiOSの節目を飾るにふさわしい怒涛の機能リリースとなる。

?史上最大のアップデートのiOS 10、目玉は10の新機能

「素晴らしいユーザ体験のため搭載された新機能の数々」

 

新たなユーザエクスペリエンス

iOS 10ではより良い体験を提供するために、ユーザエクスペリエンスに大きなメスが入ることになった。もっとも大きな変化はロックスクリーン。通知メッセージが大きくなっただけでなく、ロック解除はホームボタンを押すことで動作するようになった。この画面で右にスライドするとウィジェット、逆に左にスライドするとカメラが起動する。

Siriをサードパーティに解放

アップルユーザの中に確実に浸透し続ける人工知能、Siri。リリースされてからこの5年間、一部のアプリケーションを除きサードパーティには解放されていなかったSiriからの操作だが、iOS 10でついに解放される。メッセージ、乗車予約、写真検索、ワークアウト、決済など広範囲な内容をサポートし、その内容もクラウド上の人工知能がインテリジェンスに解析して実行を振り分ける。

3Dタッチの活用シーンが広がる

iOS 10では、iPhone 6sシリーズが対応する「3Dタッチ」も積極的に活用される。ロック画面で通知を押し込むと、画面を切り替えずにスケジュールの招待を受けたり、メッセージに返信したりといったことができる。また、ホーム画面で利用できる3Dタッチを利用した「ピーク」も改良され、ショートカットだけでなくそのアプリの情報もプレビューできるようになった。

「写真」アプリの検索機能が強化

かつてiPhotoに搭載されていた顔認識による「人々」が、シーンやオブジェクトの解析までに対応した高度な検索機能として「写真」アプリに復活。また、ライブラリから日時や場所、人物、シーンなどさまざまな情報に応じて自動的に写真を分類し、アルバムを生成する「メモリー」という項目が加わった。

マップの使い勝手が向上

検索結果をカード形式で表示したり、関連ジャンルから同じ目的の候補先を表示したりといった、順向性の高い検索が可能になった。ナビゲーションに関してもデザインが改善され、自動ズームや付近のガソリンスタンドやレストランなど、さまざまな情報がタイムリーに表示される。加えて、「マップ機能拡張」が開発者向けに提供される。音楽やニュース以外のコンテンツ(レストラン情報やタクシーの予約など)も一気に囲い込もうというアップルの意気込みが見える。

QuickTypeで素早い文字入力

単に文字を打つだけでなく、文章やメッセージのから意味を判断してアクションする「自然言語解析」を行うクイックタイプ。iOS 10では、場所を聞かれれば現在位置を、特定の人物の情報を聞かれれば連絡先を表示するなど、わざわざ他のアプリから文章をコピー&ペーストせずともより知的に候補を表示する。クイックタイプは直前のメッセージだけでなく、全体の文脈を解析して予測することも可能だ。

「News」がさらに読みやすく

日本ではまだサービス開始されていない「ニュース」だが、すでに2000のパブリッシャーが参加し、月ごとのアクティブユーザ数は6000万人を数える。こちらもインターフェイスをよりプロアクティブ志向にデザインを変更しており、使い勝手を向上させている。

「ミュージック」のインターフェイスを刷新

1年で1700万人もの有料購読者を獲得したアップルミュージック。より使いやすくデザインが一新されただけなく、待望の歌詞表示機能が搭載されるなど、ユーザが期待するアップデートが施されている。

VoIPの統合

「電話」には留守番電話機能である「ヴィジュアルボイスメール」に文字起こし(Trascription)が試験的に導入され、迷惑電話対策なども施された。しかし、もっとも大きなものはサードパーティへのVoIP APIの提供だろう。インターネット通話を提供するベンダーはこれによってiOSの持つ標準機能を使って自社サービスを提供できるようになる。加えてシスコのIP電話もiPhoneを子機化できるサービスを提供するなど、多くの「通話」にフォーカスした機能が盛り込まれた。

HomeKitの独立アプリが登場

独立したアプリケーションとして用意された「ホーム」は、ホームキットに対応した機器をまとめて管理できる。Siriによる操作やコントロールセンター、通知からの操作など、iOS 10の持つ恩恵を余すところなく利用できるのも強みだ。

「メッセージ」アプリが表現豊かに

スマートフォンでもっとも頻繁に使われるのがメッセージ系のツールなのは間違いないだろう。iOS 10ではこのジャンルの成熟とともに、純正の「メッセージ」アプリにも大きなアップデートが施された。

絵文字を簡単に変換

日本発の文化が世界のスタンダードとなった「絵文字(emoji)」。iOS 10では絵文字がより見やすくなっただけではなく、入力の際に変換候補や置き換えの提案が表示され、より積極的に利用できる。

風船や花火を使って感情を表現

メッセージはもはや単にテキストを送ればよいのではなく、そこに「感情的(エモーション)な表現」をどう加えるかが重要なユーザニーズになった。吹き出しのエフェクト、リアクション(Tapback)、手書きメッセージ、フルスクリーンなど豊富な選択肢が用意されたのは、時代が求める必然だ。

サードパーティ製アプリによる可能性

マップ同様、メッセージも開発者向けに門戸が開かれる。これにより、アップストアからのステッカー(スタンプ)の配布や、サードパーティのアプリケーションが持つ機能を「メッセージ」アプリに組み込むことが可能になる。前のようなシンプル路線から大きく舵を切っているが、多くの人が純正のメッセージに感じていた「物足りなさ」を埋める意味でも重要な意味合いを持つだろう。

iOS 10

今秋リリース

無料

(デベロッパプレビューは現在提供中、一般ベータプログラムは7月開始)

 

すべては「成長と発展」のために

そして最後に再びクック氏が登壇、「スウィフト(Swift)」について語り始めた。2014年に発表されたこのプログラミング言語は後発の強みを活かし、モダンで覚えやすいスタイルを取るため開発者からも高い支持を得ているだけでなく、最近では学校におけるプログラミング教育でも人気が高まっている。このニーズに対応するべく、アップルはiPad上で動作する「スウィフト・プレイグラウンド(Swift Playgrounds)」を発表。スウィフトを教材にしながらプログラミングの基礎もインタラクティブに学ぶべるアプリケーションだ。

こういったアプローチはアップル自身の成長はもちろんだが、エコシステム全体を活性化するための「投資」と言ってもいいだろう。それは最後に流されたビデオからも明らかで、アップルが目指すのはあくまで冒頭にも掲げられた「素晴らしい製品を作り、世界を変えていくこと」という哲学を体現するための手段でしかないのだ。

?iPad上のスウィフトで創造力を発揮

開発者に人気のプログラミング言語

スウィフトはこの2年間で大きく浸透し、すでに10万本以上のアプリケーションがスウィフトで書かれている。また、開発はオープンソースで進められているが、ホスティングされている世界最大の開発者コミュニティ「ギットハブ(GitHub)」ではもっともアクセス数の多いプロジェクトだという。

iPad向けアプリで簡単に学習

スウィフトはモダンで、覚えやすい言語ゆえに教育分野でも注目度が高い。そんな中アップルが自らルールを変更し、初めてプログラミング言語が動作するスウィフト・プレイグラウンドをリリースする。デモを見る限り非常に強力で、最適な学習環境が用意されていると期待できる。

豊富なテンプレートを用意

スウィフト・プレイグラウンドには豊富なテンプレートが用意されており、これを活用することで、プログラミングを学ぶ学生や開発者などは簡単に自分の創造力を発揮できる。

Swift Playgrounds

今秋リリース

無料

(デベロッパプレビューは現在提供中、一般ベータプログラムは7月よりiOS 10の一部としてスタート)