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第8話 パフォーマンスを上げるための仕事ツール選び

著者: 三橋ゆか里

第8話 パフォーマンスを上げるための仕事ツール選び

心理学者のアダム・グラント氏によると、仕事のパフォーマンスはその人が使うブラウザで予測できるのだそうです。具体的には、IEとサファリを使う人より、ファイアフォックスやグーグル・クロームを使う人のほうが仕事のパフォーマンスは上なのだとか。後者はプリインストールされているツールに満足することなく、より良いものを探すというアクションを起こしており、その能動性が仕事の姿勢にもつながっている、という考察です。時間が作るものなら環境もまた作るもの。今回は、私が普段から重宝して使っているツールの一部を紹介します。

仕事環境を選ぶときに大切にしたいのが、ノイズレベルです。「Noizio」は、“10月の雨”、“パリのカフェ”といった異なる環境におけるアンビエントノイズ(環境音)を再生してくれるソフト。周りが静かなほうが良いのかと思いきや、クリエイティブな仕事は適度なアンビエントノイズ下のほうが捗るという研究結果があります。Noizioなら、その時々の気分や作業に応じて最適な環境を作れます。

複数のことを同時にこなしていると、あたかも仕事がテキパキ効率的に進んでいるような錯覚に陥ってしまう、マルチタスクの罠。でも以前から、人間の大脳皮質は一度に1つのことにしか集中できず、マルチタスクは神話に過ぎないと指摘する声があります。そこで活躍してくれるのが、「HazeOver」です。複数のソフトを同時に開いているときに背景のウインドウをすべて暗くして、最前面にあるものだけを自動的にハイライトしてくれるため、目の前のことに集中することができます。

Macに向かって仕事をしているとき、一番の妨げになるのがブラウザではないでしょうか。気になった検索結果がタブとして溜まっていき、しまいにはその区別がつかない状態に。グーグル・クロームとファイアフォックスの拡張機能「OneTab」なら、大量のタブをリンク一覧として1つのページにまとめてくれます。また「Escape」は、SNSやメディアなどで費やしている時間を計測してくれるソフト。たとえば、フェイスブックを開いた時間帯や寄り道時間の合計をグラフで可視化。1日の中で集中力が高い時間帯、また自分の仕事の波などを把握するのに役立ちます。

誰にとっても日常的な「書く」という行為に特化したソフトが、「OmmWriter」と「Flowstate」です。全画面表示でしか使えないOmmWriterは、Macの中に「部屋にこもって書く」感覚をもたらしてくれます。個人的なお気に入りは、鈴の音や懐かしいタイプライターの音など、自分にとって心地よいタイプ音を選べること。Flowstateは、映画「小説家を 見つけたら」のワンシーン(元小説家に弟子入りした青年がタイプライターの前に座らされ、手を休めることなく、とにかく書き続ける)を思い出させます。タイプする指を止めるとそこまでの原稿が消滅してしまう、というユニークな設計になっているのです。書くと決めたらあふれる創造性に任せてとことん書く、文章をキレイに仕上げるのはそのあとで。若干強引ですが、「執筆」と「編集」がまったくの別物であることをリマインドしてくれるソフトです。

「One Big Thing」は、その日の最優先事項だけを表示することで、私たちの「GTD」(Get Things Done)をあと押ししてくれるiPhone用アプリ。1400年代に英語に取り入れられた「プライオリティ」という単語は、当時は単数形でした。その後、500年間変わらずにいたのが、1900年代になって複数形で使われるように。ついつい欲張ってしまうToDoリストですが、結局どれも中途半端になって進捗や達成感を感じにくいようでは本末転倒です。One Big Thingなら、「一番大切なことが1つだけ」だった古き良き時代に立ち返ることができるかもしれません。

Yukari Mitsuhashi

米国LA在住のライター。ITベンチャーを経て2010年に独立し、国内外のIT企業を取材する。ニューズウィーク日本版やIT系メディアなどで執筆。映画「ソーシャル・ネットワーク」の字幕監修にも携わる。【URL】http://www.techdoll.jp