環境に対する責任
アップルは今回のイベントで製品発表に先駆けて、興味深い2つプランを公開した。
その1つ目が環境に関する問題だ。「アップルは常に革新を求めていますが、これは環境保護についても同様です」とアップルの環境担当上級副社長のリサ・ジャクソン氏は述べている。まず大きなチャレンジとして、アップルはストアやデータセンターなどで再生可能エネルギー利用率を100%にすることを目標にしている。2年前から始まったこの大きな目標はすでに93%達成されており、米国や中国を含む23か国では100%再生可能エネルギーだけでの運用を行っているという。
イベント内でも紹介されたその数々の取り組みは、「環境に対する責任」というアップルの公式WEBページにその詳細が紹介されているが、今回新たな取り組みとしてすでに製造された製品のリサイクルと再利用についても研究を続けていることが明らかにされた。
イベントの冒頭、アップルは今年10億台のデバイスを出荷したと発表したが、その資源の使用量は地球全体で見ても無視できないインパクトを持つ。そこで紹介されたのは「リアム(Liam)」というリサイクルロボットだ。
リアムはiPhoneを分解し、それぞれのパーツから再利用可能な金属たちを取り出す。バッテリからはリチウムやコバルト、カメラからはゴールドと銅、ロジックボードからは銀やプラチナなどの希少な素材が次々に採掘される。こういったパーツは溶かされて再びパーツになったり、または太陽光パネルなど別の用途に生まれ変わる。こうした「資源をこれ以上減らさない」という取り組みは高い品質を保つ素材を採用することと、リサイクル可能なデザインとエンジニアリングによって成り立っているという非常に興味深い内容となった。
個人の治療にフォーカス
そして2つ目が、健康に関するプロジェクトだ。アップルは昨年同時期のイベントにおいて医療機関がiOSデバイスを使ってより簡単に、広範囲のユーザから臨床データを取得できるオープンソース・フレームワーク「リサーチキット(ResearchKit)」を発表した。同時にローンチされたアプリ群は過去に例がないほどのデータ取得のきっかけとなり、てんかんや喘息の研究の発展につながるなど数多くの成功をもたらしている。
多くの医療機関や大学の参加を受けて大きなムーブメントとなっているリサーチキットだが、「我々はリサーチの次はケア(看護)が必要なのではないかと考えている」とCOOのジェフ・ウィリアム氏は切り出し、次なる取り組みとして「ケアキット(CareKit)」を発表した。
これはリサーチキットと同じように医療用のアプリを簡単に作ることができる支援フレームワークだが、個人の治療の進捗具合をモニタリングしながら記録したり、ユーザが医師や家族とコミュニケーションをとりながら投薬のスケジュールを管理したり、患部の状態を写真で共有したりといった「治療」にフォーカスを当てたものになる。
ケアキットは4月からオープンソースとして公開されるが、おそらくリサーチキットと同様に多くの医療機関が採用し、さまざまな種類のアプリが登場することが期待できるだろう。
環境と健康│ 異なる2つの分野ながら、その投資は長期にわたって根気よく続けていく体力と意志がなければ成功は難しい分野の筆頭だ。それでもあえてそこへ挑戦するアップルの姿からは、利益の追求ではなく「社会と企業」という在り方そのものに革新を求める決意の表れのようなものを感じざるを得ない。
アップルの公式WEBページには「環境に対する責任」が掲載されている。【URL】 http://www.apple.com/jp/environment/
アップルは3月22日より古いiPhoneや他社のスマートフォンを下取りするサービスを開始した。【URL】 http://www.apple.com /jp/iphone/trade-in/