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【Chapter2_1】今よりずっと快適になるワイヤレス最適化への道?

【Chapter2_1】今よりずっと快適になるワイヤレス最適化への道?

【Inside1】電波強度を可視化してルータの置き場所を変えよう

置き場所を変えるだけ

最新のワイヤレス機器を導入しても、その使い方に問題があると最善の環境は手に入りません。特に、Wi-Fiルータは設置の仕方1つで通信状態がガラッと変わります。まずは、その点を見直していきましょう。

最初にチェックしたいのが、Wi-Fiルータの置き場所です。Wi-Fiに限らず、電波というものは周囲にあるものに影響されやすい性質を持っています。特に、金属や水は要注意です。金属製のPCラックやオーディオ機器などの近くにWi-Fiルータを設置すると、電波感度に影響を及ぼします。同様に、水槽や花瓶など水の入った容器の側にも置かないよう注意が必要です。

さらに、Wi-Fiルータが別の部屋に置いてある場合は、途中のドアや壁の素材も電波感度に影響します。鉄筋コンクリートの壁や金属製のドアより、木製のほうが電波が通りやすいということを覚えておきましょう。

また、電波には指向性といものがあります。その方向を決めるのが、ルータに搭載されているアンテナです。アンテナを垂直にすると電波は水平方向に広がり、反対にアンテナを水平にすると垂直方向に広がります。最近のWi-Fiルータの中には、自由にアンテナの方向を変えられる構造の機器もあり、その場合はアンテナの向きを変えるだけで電波感度がガラッと変わります。アンテナ内蔵のWi-Fiルータなら、縦置きか横置き、設置する向きで電波の進む方向を変えてみるとよいでしょう。

電波感度やノイズを調べる

Wi-Fiルータの置き場所や設置する向きは、実際に電波状況がどう変化するのかを確認しながら検討することをおすすめします。それにはデバイス側でWi-Fiの電波感度を測定するのがいいでしょう。

OS Xでは、[オプション]キーを押しながらメニューバーのWi-Fiアイコンをクリックすると、受信信号強度(RSSI)が確認できます。Macで電波感度を確認しながらWi-Fiルータの置き場所や向きを変え、電波感度がもっとも良好になる状態を見つけましょう。

また、受信信号強度が良好でも、ノイズがあると電波の質が悪くなってしまいます。信号電力と雑音電力の比、つまりSNR(Signal-to-Noise Ratio)の値にも注目しましょう。SNRは「電波強度─ノイズ強度」で求められ、この値が大きいほど伝送における雑音の影響が小さいことになります。

Wi-Fiルータとデバイス間のみのチェックではなく、電波が自宅のどこまで届いているのかを確認する方法もあります。Macアップストアから入手できる「NetSpot」は、Wi-Fiの電波強度をマッピングできる定番ソフトです。あらかじめ部屋の間取り図を読み込んでから、部屋のいろいろな場所で測定すれば、電波がどのぐらいの強さでどこまで伝わっているかを可視化できます。ベストなルータの設置場所を探している人は参考にしてみるとよいでしょう。

 

ルータの設置場所で変化

12畳ほどの自室において、壁に接した金属製ラックの上(高さ約150センチ)と部屋の中央にあるサイドテーブルの上(高さ約50センチ)の2カ所で、AirMacタイムカプセルとMacBook間でのWi-Fiデータ転送速度を測定しました。11ac(5GHz)はほぼ同じ値でしたが、11n(2.4GHz)では約20Mbpsもの差があります。

 

Macで無線情報を確認

[オプション]キーを押しながらメニューバーのWi-Fiアイコンをクリックすると、接続中のネットワークに関する詳細情報を確認できます。「受信信号強度(RSSI)」は、数値がゼロに近くなるほど信号が強いことを表します。一般的には、-50dBm前後の数値が表示されていれば、信号強度は良好です。

 

「NetSpot」で視覚化

Macアップストアにある「NetSpot」を使えば、電波の広がる方向や減衰する様子を視覚化できます。Wi-Fiルータの近くは信号強度が強いのに比べて、離れた場所では電波が弱くなっているのがわかります。また、同じ距離でも、壁やドアを隔てると次第に電波が弱くなる点にも注目です。

NetSpot

【作者】Etwonk LLC

【価格】無料

【カテゴリ】Mac App Store>ユーティリティ

【Inside2】電波干渉を見つけ出してチャンネルを変更しよう

電波の混雑具合を見極める

Wi-Fiで使用する周波数帯は、2.4GHzが13チャンネル、5GHzなら19チャンネルとそれぞれ区切られています。Wi-Fiルータは、この中から空いているチャンネルを探して使用しているのです。

データ伝送には一定の帯域幅が必要で、2.4GHz帯を使う11bと11gでは20MHzを使用します。チャンネルの幅は5MHzなので、4チャンネル離れていれば一見干渉なしで割り当てできそうです。ところが、2.4GHz帯では、余裕を見て22MHz間隔でのチャンネル割り当てが推奨されています。つまり、チャンネル5つ分空いていないと電波干渉が起きてしまうのです。そうなると13チャンネルあっても割り当てできるのは3つだけ。つまり、近くに3つ以上のWi-Fiルータが稼働していると、少なからず電波干渉が起きることになります。さらに、11nでは40MHzの帯域幅を必要とするので、干渉なしで使うには2つしか割り当てできません。

一方、5GHz帯は19チャンネルあり、チャンネル幅は20MHzです。40MHzの帯域幅を必要とする11nでも10個を割り当てることができます。また、80MHzの帯域幅を使う11acでも5つを割り当てることが可能です。

チャンネルの確認と変更

しかし、これだけWi-Fiルータが普及していると、干渉なしで使うのは難しいといわざるを得ません。せめて干渉ができるだけ少ないチャンネルを選ぶのが最善な方法といえるでしょう。

使用しているチャンネルについては、Wi-Fiメニューでも確認できますが、周囲との干渉状況はわかりません。そんなときは「WiFi Explorer」がおすすめ。このソフトなら周囲との干渉具合が一目で把握できます。

同じチャンネルを使っていたり、干渉が激しい場合は、使用しているチャンネルを手動で変更しましょう。アップル純正のAirMacファミリーの場合、「AirMacユーティリティ」でチャンネルを自動から手動に切り替えることができます。サードパーティ製の場合は、ルータの設定画面から変更可能です。

このように、電波の混雑状況を把握し、チャンネルを変更すれば、電波状況をガラッと改善することができます。

 

Wi-Fi規格のチャンネル図

干渉なしでWi-Fiを利用するには、割り当てできるWi-Fiルータの数が限定されます。周囲に稼動しているWi-Fiルータが多いほど、電波干渉が発生して通信品質が悪くなるのです。

 

「WiFi Explorer」で干渉をチェック

「WiFi Explorer」では、それぞれのWi-Fiルータが使用しているチャンネルだけでなく、実際にどれだけ干渉しているかがビジュアルで把握できます。

WiFi Explorer

【作者】Adrian Granados

【価格】1800円

【カテゴリ】Mac App Store>ユーティリティ

 

AirMacでのチャンネル変更

「AirMacユーティリティ」の編集画面にある[ワイヤレス]で[ワイヤレスオプション]をクリックするとチャンネル変更ができます。

プルダウンメニューを開くと、手動でチャンネルが設定できます。2.4GHzでは1~13のチャンネルが選べます。5GHzで選べるチャンネルは、36/40/44/48のいずれかのみです。

Inside3 5GHz帯で通信状況が悪い場合はあえて2.4GHz帯を利用しよう

5GHz帯の弱点

2.4GHz帯よりチャンネル数が多く、電波干渉しにくいのなら、断然5GHz帯のほうが優位なはずです。通信環境を向上させたいなら、迷わず5GHzを選択しましょう…といいたいところですが、実は5GHzにも弱点があります。

電波には、周波数が上がるほど直進性が高くなるという性質があるので、2.4GHzより5GHzの方が遠くまで電波が届きます。ところが、5GHzは2.4GHzより障害物に弱く、通信距離が長くなると電波が届きにくくなるという弱点があります。同じ室内のようにデバイスからWi-Fiルータが見渡せる環境であれば問題ありませんが、別の部屋にWi-Fiルータがあったりすると本来の性能が発揮できません。一方、2.4GHzは障害物に強く遠くまで電波が届きやすいので、環境によっては通信品質が5GHzと逆転することもあるのです。

なので、同じ室内にWi-Fiルータがあるのなら5GHz、途中にいくつも障害物があったり別の階など距離が離れているなら2.4GHzを利用してみるなど、シーンによって最適な周波数帯を利用するように心掛けましょう。

 

部屋が変わると通信状況も変化

同じ室内(A)と、鉄筋コンクリートの壁を隔てた隣の部屋(B)、さらに襖を隔てた部屋の奥(C)とでデータ伝送速度を比較してみました。Bの箇所まではやはり5GHzのほうが速いですが、離れすぎてしまうとつながりません。一方、2.4GHzでは、速度は落ちるものの電波は届いています。

 

「NetSpot」で視覚化

同じ室内でも、2.4GHzは壁を隔てた場所にも電波が行き届いているのがわかります(写真上)。5GHzでは、壁を隔てると一気に信号強度が下がります(写真下)。

Inside4 2.4GHzを使う家電から離れた場所にルータを置こう

同じ周波数帯は避ける

Wi-Fiルータの近くに同じ周波数帯を使うデジタル機器やノイズを発生する装置があると、データ伝送速度が落ちたり、接続が途切れがちになったりします。特に2.4GHz帯は、デジタル機器だけでなく家電製品でも使用しているので、知らず知らずのうちに電波干渉を引き起こしている場合があります。

通信環境のトラブルで頻繁に耳にするのが、電子レンジを使うと接続状態が悪くなってしまったというケースです。電子レンジで使用している電磁波が2.4GHz帯なので、近くに置いてしまうとWi-Fiルータに干渉してしまうのです。このほかにも、コードレス電話なども2.4GHz帯の電波を使っています。ワイヤレススピーカなどで使用されているブルートゥースも、同じく2.4GHz帯を利用しています。

対策としては、何といっても2.4GHz帯を使用している家電製品やデジタル機器の側にWi-Fiルータを設置しないことです。意外と知られていませんが、MacやiOSデバイスなどのデバイスをWi-Fiルータ近くで使うのも避けたほうが良いでしょう。ワンルームやダイニングキッチンで使うなど、どうしても離せない場合は、5GHzのWi-Fiルータを使うと電波干渉を避けることができます。また、2.4GHz帯の電波を使用していなくても、ハイパワーの無線機などがノイズ源となってしまう場合もあるので注意しましょう。

2.4GHz帯を使う家電製品

●電子レンジ(加熱動作時)

●コードレス電話機/インターフォン

●ブルートゥーススピーカ/ヘッドフォン

●ブルートゥースヘッドセット

●ワイヤレスWEBカメラ

●高出力の無線機器

2.4GHz帯を使う家電製品やデジタル機器はいろいろあります。こうした機器の側にWi-Fiルータを置いたり、近くでデバイスを使うと電波干渉を受ける可能性が高くなります。思っていたほどWi-Fiのパフォーマンスが上がらない場合は、近くにこうした機器がないか確認しましょう。

Inside5 ブリッジ接続を駆使して家中に電波を届かせよう

電波を中継してみよう

自宅の2階にWi-Fiルータが設置してあったり、間取りの関係で途中にいくつも障害物があると、どうしても電波が届かない場所が生まれてしまいます。ギリギリ電波が届いたとしても信号強度が低く、速度が遅い、接続が途切れるなど、使い勝手が悪くなる可能性があります。こういったケースでは、いくらWi-Fiルータの置き場所を工夫しても電波状態の改善はあまり見込めません。

そんなときは、電波を中継して到達範囲を拡大しましょう。電波を中継することによって、今までつながらなかった場所でもWi-Fiが利用できるようになります。また、信号強度が足りず通信品質が低下してしまう場合でも、電波の中継は有効な改善手段です。

電波を中継するにはブリッジ接続を行います。一般的なWi-Fiルータでも、ブリッジ機能が備わっている機種なら、モードを切り替えればそのまま中継機として利用できます。また、AirMacファミリーなどのベースステーションであれば、ワイヤレスネットワークを拡張するネットワークモードに設定します。中継に特化したWi-Fi機器もあるので、通信環境に応じて使い分けましょう。

中継機を置くポイント

中継機はWi-Fiルータからデバイスまでの間に設置しますが、電波が弱くなった場所で中継してもあまり意味がありません。できるだけ電波が減衰せずに届く場所に設置して、電波強度を保ったままデバイスのある場所まで中継するのがベストです。そのためには、まず中継機を置くベストポジションを探す必要があります。

どこに中継機を設置すればいいかを調べるときは、Wi-Fiルータの設置場所を改善するときと同じ方法が有効です。まず電波の発信元となるWi-Fiルータから、どこまで電波が届くのか見極めます。その中から、実際にデバイスを使う場所を見通せるポイントや、途中に障害物の少ない場所を絞り込みます。別の階まで中継する場合は階段のある場所、離れた部屋なら廊下のコーナーなどが有効なポイントです。Wi-Fiメニューの詳細表示や「ワイヤレス診断」、「NetSpot」アプリを使って中継機を設置するのにもっとも適した場所を探しましょう。

 

AirMacをブリッジ化

AirMacファミリーは簡単な設定でブリッジにもなります(写真上)。中継機として使うAirMacは、「AirMacユーティリティ」で[ネットワークモード]を[ワイヤレスネットワークを拡張]に設定しましょう(写真下)。

 

NetSpotで最適な場所を探そう

「NetSpot」は中継機を置くポイントを絞り込むにも有効なツールなのでおすすめです(写真上)。中継機を設置することで電波の届く範囲が拡大したのが一目でわかります(写真下)。

 

コンパクトな中継機

バッファロー WEX-733DHP

【発売】バッファロー

【実売価格】7538円(直販価格)

【URL】http://buffalo.jp/product/wireless-lan/extender/wex-733dhp/

中継機に特化した製品の中には、コンセントに直差しできるコンパクトなタイプもあります。中継機を設置するスペースがない場所でもコンセントがあればOKです。

 

中継機として使える機種も

Wi-Fiルータに「BR」という切り替えスイッチがあれば、ブリッジとして使えます。スイッチがなくても設定画面でブリッジに切り替えできる製品もあるので、自宅のルータを確認してみましょう。

 

ブリッジ接続をするときはここに注意!

中継機を設置すると、家の隅々まで電波を行き渡らせることができるので、家のワイヤレス環境の改善が期待できます。しかし、中継機を設置するときにはもう1つ押さえておきたいポイントがあります。

それは、発信元となるWi-Fiルータと同じ通信規格に対応する製品を選ぶということです。中継機はWi-Fiルータからの電波を受信して、デバイスのある場所まで受け渡します。その際、中継機がボトルネックになってしまうと速度が低下してしまう恐れがあるのです。

現在、Wi-Fiルータで主流なのが11acに対応した製品です。5GHz帯の電波が使える環境であれば、最高の通信速度が得られるはずです。そういった環境の中、中継機が11acに対応していないと、そこで通信速度が低下してしまいます。実際に11acが使える環境で、中継機を11ac対応機種と11nにしか対応していない機種で検証みると、データ通信速度の結果に差が出ました。

発信元のWi-Fiルータより中継機の性能が低いと、そこがボトルネックになってしまいデータ通信の速度が低下してしまいます。

同じ場所に中継機を設置してデータ通信速度を測定したところ、11nの中継機では明らかに値が低くなる結果になりました。

Wi-Fiルータにとって熱は大敵! 熱がこもる場所には注意しよう

Wi-Fiルータには、家電製品からの電波干渉やノイズなど、さまざまな敵が存在します。実は、周囲の温度や熱もトラブルを生む原因の1つだということを知っていますか。

注意したいのが、Wi-Fiルータの置き場所として戸棚の中を選択することです。戸棚にWi-Fiルータを設置してしまうと、自身が発する熱がこもってしまい、熱暴走を起こしてしまうというケースをよく耳にします。これにより通信環境が低下したり、最悪の場合まったくインターネットにアクセスできなくなるトラブルが発生してしまいます。特に夏場は室内の気温も高くなるので、戸棚の中の温度も高くなりがちです。熱暴走を引き起こしてしまわないように、戸棚の中など密閉された空間をW-Fiルータの設置場所にするのは控えたほうがよいでしょう。

では、万が一Wi-Fiルータが熱暴走を起こし、インターネットにアクセスできなくなってしまった場合はどうすればよいのでしょうか。

その場合は慌てず、一旦Wi-Fiルータの電源を切り、少し時間をおいて再度オンにしましょう。すると、正常に復帰します。Wi-Fiルータの仕様として動作環境温度を明記している製品もあるので、一度取扱説明書などを確認してみてください。

このように、戸棚の中にWi-Fiルータを隠してしまうと、熱がこもって動作に支障が生じます。また、棚の扉が障害物になって電波が届きにくくなる恐れもあるので、気をつけましょう。

動作環境の温度範囲は、パッケージや取扱説明書に記載されているので確認してみましょう。夏場の締め切った戸棚の中は要注意です。