そこにロープ
そこにロープがあれば、見事な手さばきで観客の目を欺くのがマジシャン。そこにロープがあれば、ピアノだって吊り上げるのが運送屋。そこにロープがあれば、バーンと投げ飛ばされてビヨ~ンと戻ってくるのがプロレスラー。そこにロープがあれば、亀甲縛りで責めるのが緊縛師。とかく人はそこにロープがあると、何かをせずにいられない。いやぁ私はそんなことありませんよとおっしゃるアナタ、いえいえアナタはまだ知らないだけなのかもしれませんヨ、ロープの奥深い世界を…。
とまぁ、往年のミステリー番組「ヒッチコック劇場」のような思わせぶりな書き出しで始まりましたが、そういえばヒッチコック監督には「ロープ」という作品があって、全編をワンカットで撮った風に見せる実験的な演出を行ったことで有名。それから「ヒッチコック劇場」といえば、その翻訳は若き日の団鬼六によるもの。『花と蛇』で知られるSM官能小説の第一人者で、彼の作品にはやっぱりロープ(縄)が付きものだ。こうして話がつながっていくのもロープならではの不思議…カモ。
そして今回、ワタクシが注目したのが、現実世界には存在しないロープ。アプリの中のロープです。
もつれる脳
その名も「rop」は、ロープを使ったパズルゲームで、いわゆる脳トレ系のアプリだ。これで楽しみながら、日に日にボケゆく我が老脳を少しでもフレッシュに保とうじゃないかというのが狙い。
まず気に入ったのが、無駄のないスタイリッシュなアートワークだ。サウンドも神秘的。ステージごとに画面上部に課題となる図形が表示され、その下に課題と同じ形を作るためのロープが用意される。もっともロープといっても、パッと見は六角形の点と点の間を直線で結んだだけのものだ。プレイヤーがこのロープの端や途中にある点(つなぎ目)を動かすと、それにつられて直線がぐにゃとしなりロープのような動きを見せる。このあたりの芸が細かい。
ステージが進むにつれ、ロープは複雑化していくので、結構頭を使う。動かしたいロープだけでなく余計なロープまで連動して動くので、ロープと一緒に頭ももつれてしまい…。にっちもさっちもいかなくなってしまったときは、リスタートしてみると案外活路が開けるものだ。もっと効果的なのは休む(できれば睡眠をとる)ことで、すると意外なほどにうまくいく。当たり前だが、脳には適度な休息が必要だってことを、今さながらにこのアプリで思い知る。
はたしてこのアプリがどのくらい脳トレに効果的なのかは、定かではないけれど(そもそもそんなことは謳っていないんだけど)、脳にいつもと違う働きをさせるにはいいと思う。図形のことなんて普段はまず考えないからね。そしてなによりアプリとして美しいことが素晴らしい。なんでもトルコ発信のアプリらしいが、トルコのセンス侮りがたしである。
もう一本
できればこのアプリのようなシンプルな脳トレゲームをスマホやタブレットに複数本常駐させておきたい(1本だとやっぱ飽きちゃうしね)。実はオススメのがもう1本あるんだけれど、ちょっと問題が…。iOSのアップデートで日本語表示の部分が消えてしまったのだ。それさえなければ、洗練されたデザイン、脳トレの効果、ゲーム性において優れたアプリなんだが。数字を1つずつどれだけ速く順番にタップしていけるか、にチャレンジするストイックなゲーム「Next-Numbers」。いつかバグが修正されますように。
rop
【作者】MildMania
【価格】120円
【カテゴリ】App Store>ゲーム
必要最小限の表現で作り上げられた、アーティスティックなパズルゲーム。3つのパッケージに分かれていて、トータルで198のステージが用意されている。得点や制限時間といったゲーム性を排除しているので、やや継続性に欠ける。それと正解を見る機能がないので、解けないとモヤモヤが残る恐れあり。
ロープとともにもつれる頭をときほぐせ!
「パズルゲームアプリ」にチャレンジ
3.ステージ
画面上部が課題の図形。下にある黒い棒状のものがロープだ。最初のステージは、横にロープを渡すだけの超簡単なもの。
ロープの結び目に当たる六角形の黒点を操作してロープの形を変える。
正解だと紙吹雪(?)が舞って、そのまま次のステージへと自動的に進む。
ステージが進むにつれ難問も登場する。
★今月はもう1本!
Next – Numbers
【作者】Vito Technology Inc.
【価格】240円
【カテゴリ】App Store>教育
数字を順にタップしていくだけのシンプルな脳トレゲーム。時間制限内に発見できた数字の数を競う方法と、すべての数字を発見するまでにかかる時間を計る方法の2種類のトレーニングが用意されており、それぞれ4段階の難易度で挑戦できる。評価4をあげたいところだが、11月中旬現在、日本語表示ができないバグがあるので2点減点で2。
【担当者後記】
ゲームはほとんどしない担当者ですが、「rop」にはハマりました! 簡単にできそうでできないところが、ああ悔しい!って感じでクセになります。つまずくのは、たいてい同じ考えがドツボにはまっているとき。あっけないくらい単純な(でも全然違う)考え方で解決したりします。うーん、日頃の仕事にも当てはまるかも。
【担当者後記】
トルコのディベロッパMildManiaは、「rop」のほかにも、数々の美しいゲームアプリを生み出しています。「rop」のアートワークに感心したアナタには、かわいらしいキャラクターが織りなす魔法の世界を描いたアクションゲーム「Darklings」もオススメ。日本語対応済みです。