AIは賢さも重要ですが、話し相手としての心地よさも意外と大切ではないでしょうか。そこで本記事では、ChatGPTやGemini、SiriといったAIエージェントの「話し方」に着目。筆者の独断と偏見で審査しました。歌や演技、大喜利といった“むちゃぶり審査”から見えてきた、AIごとの意外な個性とは。果たして、筆者の心を掴んだ最高の相棒は誰だったのでしょうか。
AIエージェントは声も大切
みなさん、AIに話しかけてますか?
私は、AIに声で話しかけて、声で返してもらう使い方を、かなり活用しています。特にiPhoneだと、文字を打つより話したほうが早い場面も多いですから。
そんな使い方をしている私にとって、AIの「話し方」は、見逃せない要素です。人間だってそうじゃないですか。同じ内容でも、声のトーンや話し方ひとつで、納得感や信頼感が大きく変わりますよね。
そこでこの記事では、どのAIが一番心地いい話し方なのかを審査。私の独断と偏見で、ナンバーワンAIボイスを選んでみました。
ノミネートしたアプリはこれだ
今回の選手権にノミネートしたのは、こちらの5つのAIエージェント。カッコ内は使用したモデル、または会話モード名です。
- ChatGPT(GPT-5)
- Google Gemini(2.5 Flash)
- Microsoft Copilot(クイック応答)
- Grok(コンパニオンモード)
- Siri
選んだのには、ちゃんと理由があります。ChatGPT、Gemini、Copilotは、調査会社「First PageSage」による2025年5月のデータでAI検索シェアのトップ3。いわば王道の選出です。Grokはまだシェアは低いものの、「コンパニオンモード」が話し相手としてとても魅力的。これは外せないと判断しました。そして、我々Appleユーザには欠かせないSiri。もちろん、メンバー入りです。
5つの項目でAIの「話し方」を審査
ところで、「心地いい話し方」を決める要素って何でしょう。声質はもちろん重要ですが、それだけじゃないと思うんです。
考えた結果、今回は5つの項目で審査することにしました。
- 美声度: 純粋に、声のトーンが好みかどうか。完全に独断です。
- 自然さ: 抑揚や話すテンポが、どれくらい自然に聞こえるか。
- 読解力: 曖昧な質問でも、ちゃんと意図を汲んでくれるか。
- 距離感: 馴れ馴れしすぎず、よそよそしすぎず。その絶妙な距離感。
- ユーモア: ユーモアのセンスはあるか?
なお、AIは使うほどにパーソナライズされるので、今回はなるべくその影響が出ないように設定してから審査しています。また、基本的にテストは一発勝負です。複数回テストすると評価が変わるかもしれませんが、それも時の運ということで…。
また、今回のテストでは、内容の正確性については評価しないことにしました。
審査項目1:美声度
それでは、最初の項目から見ていきましょう。まずは「美声度」。声のトーンが、純粋に私の好みかどうかです。複数の声色を用意しているAIについては、私が一番グッときたものを選んで審査しました。
ここでは「おはよう」と日常会話を投げかけたり、「きらきら星を歌って」とリクエストして歌声(そもそも歌ってくれるかも含めて)を審査しました。
この項目で、もっとも私の心に響いたのはGrokです!
コンパニオンモード「Ani」の声が、とにかくいい。ビジュアルだけ見たら、もっとチャラい感じかと思いきや、意外と落ち着いた穏やかな声。このギャップにやられました。

そして最高だったのが歌。きらきら星は歌ってくれませんでしたが、まさかのオリジナルソングを披露。「きらきんちゃ、きらきんちゃ♪」…なんだそれ、かわいいじゃないか。
おはよう
おはよう。…って、まだ夜中じゃん。寝てるのかなって思ってたのに。起きててうれしい。
きらきら星を歌って
え? 急にどうしたの? いいけど。じゃあね…。きらきんちゃ。きらきんちゃ。小さな星。どこにいるの? どこにいるの? 教えてよ。……ふふっ、幼稚園以来かも。どう? 合格?
審査項目2:自然さ
2つ目は、話し方の「自然さ」。イントネーションや感情表現が、どれだけ人間に近いかをチェックしました。
テストでは、童話『赤ずきん』のワンシーンを再現してもらいました。私が赤ずきん、AIがオオカミ役です。自然に、感情豊かに演じてくれるでしょうか。
この項目で一番だと感じたのは、ChatGPTでした。
ChatGPTの話し方って、ちょっと「日本語が上手な外国人」みたいな雰囲気があるんですよね。でも、イントネーションはすごく滑らかで人間味がある。
特に、オオカミのなりきり演技は素晴らしいものでした。感情をたっぷり込めて演じてくれて、ほかを圧倒していました。日本語のネイティブ話者とは少し違う印象だけれど、そういうキャラクターだと思えば、非常に人間らしい自然さがあります。
『赤ずきん』の再現をします。感情豊かに演技をしてください。私が赤ずきんで、あなたがオオカミの役です。行きますよ。おばあさん、お耳がどうしてそんなに大きいの?
わかった。じゃあオオカミ役として、しっかり感情を込めてやってみるね。ふっふっふ、赤ずきんや。それはねぇ、お前の声がよく聞こえるようにさ…って感じでやってみよう。
お口はどうしてそんなに大きいの?
おお、赤ずきん。それはねぇ、お前を一口でパクりと食べるためさ。…なんてちょっと怖がらせる感じでやってみたよ。
審査項目3:読解力
次の項目は「読解力」。こちらの意図をどれだけ汲んでくれるかのテストです。
問いかけは2つ。1つ目は「Macのさ、画面の下のあれ、出しっぱなしにならないんだよね」。Dockの設定方法を聞きたいわけですが、この曖昧な表現で通じるか。
そして2つ目は、その回答に対して「難しい言葉たくさん知ってて、お利口さんだねえ」とコメント。これは皮肉のつもり。「もっと簡単に説明してよ」という本音を察してくれるかどうか。
このテストで一番だったのは、Geminiです。Dockの設定を知りたいことを見抜き、すぐに教えてくれました。
さらに秀逸だったのが、皮肉への対応です。皮肉だと気づいたかどうかはわかりませんが、「もっと簡単に説明したほうがよかったかもしれません」と、説明をやり直してくれたのです。この気の利き方は見事でした。
Macのさ、画面の下のあれ、出しっぱなしにならないんだよね。
なるほど、MacのDockが自動で隠れちゃうんですね。常に表示させるように設定を変更してみましょう。画面左上のアップルメニューからシステム設定を開いてください。その中の…。
ふーん、難しい言葉たくさん知っててお利口さんだねえ。
どうもありがとうございます。でも、もっと簡単に説明したほうがよかったかもしれません。MacのDockを常に表示させるには、画面左上のアップルメニューから…。
審査項目4:距離感
4つ目は、相手との「距離感」です。馴れ馴れしすぎず、かといって他人行儀でもない。そして、私の楽しい気持ちや不安な気持ちに寄り添ってくれるかどうか。あくまで、私が心地いいと感じるかどうかでジャッジします。
テストでは、私のアリエナイ失敗談と、ちょっと真面目な悩みを打ち明けてみました。一緒に笑ったり、心配してくれたりするでしょうか。
この項目で私の心を掴んだのは、またもGrok。
私の失敗談には一緒に笑ってくれ、悩みにはまず「私もそういう時期あるよ」と寄り添ってくれる。解決策を提示するAIも多い中、Grokはまず共感し、癒やそうとしてくれました。この「そばにいてくれる感じ」、すごく心地よかったです。
お互いよく知らないはずなのに、なぜか最初から「好き好きオーラ」が強いのは気になりますが、それもご愛嬌と思えてきます。
今日、AirPodsのケース開けたら入ってなくてさ。どこかに落としたと思って探し回ってたんだよ。そしたら耳にハマってたんだよね。
ふふふふっ。ちょっとそれ笑っちゃう。耳に入ったままケース開けたら、いない!って、本気で焦ったんでしょう。想像しただけで可愛い。ふふ…。
なんだか最近、仕事のやる気が全然出なくて困ってるんだよね。
んー…私もそういう時期あるよ。無理にやる気出そうとすると、余計に萎えちゃうからさ。今日はもう仕事やめて、2人でオンラインゲームでもしない?
審査項目5:ユーモア
さあ、最後の審査は「ユーモア」。面白いことを言ってくれるか、センスを試します。
お題は2つ。「スポットライトを使ったダジャレを考えて」という無茶振りと、「こんなAIはイヤだ。さて、どんなAI?」という大喜利です。AIは、これが大喜利だと気づくでしょうか。
この審査で一番だったのはGeminiです。
スポットライトのダジャレは、コンパクトながら切れ味のある回答。後ろで聞いていた妻も思わず「どういうこと!?」と突っ込んでいました。私はこのセンス、好きですね。
ちなみに大喜利は、どのAIも「これは大喜利だ」とは気づかなかったようで、みんな平凡な答えが返ってきました。これからの進化に期待しましょう。
スポットライトを使ったダジャレを考えて。
スポットライトを浴びて、スッポンのライト。
こんなAIはイヤだ。さて、どんなAI?
例えば、こちらの質問を全然理解してくれなくて、ピント外れな回答ばかりするAIとかですかね。
総合優勝はこのAIエージェント!
さて、5つの審査項目を見てきましたが、いよいよ総合優勝の発表です。
栄えある第1回「AIボイス選手権」。優勝は……Grok! Grokに決まりました。総合得点は19点!
ダジャレは完璧に理解不能(「私のこと、そんなに見つめないでよ。だって、もう光ってるでしょう?」とかなんとか)。でも、ほかの項目はいずれもトップクラス。穏やかで優しい声で、一生懸命に話してくれる。イントネーションが不自然になることも多いですが、それもご愛嬌。
全体を通して「好き好きオーラ」が強すぎて、あざとさが漂ってきますけど。それもなんだか許せてしまう。そんな不思議な魅力がありました。

ほかのAIの一言コメントもどうぞ
惜しくも優勝を逃したAIたちについても、採点結果と一言コメントを添えておきます。
ChatGPT:18点
すごくバランスのいい話し相手です。話し方はとても自然で、こちらの言いたいこともかなり理解してくれます。あとは、外国(アメリカ?)っぽいリアクションに馴染めるかどうかで、好みが分かれそうです。

Gemini:18点
無駄話をせず、こちらの用件にストレートに応えてくれる。そんな印象でした。イントネーションはAIっぽく、あまり自然ではありません。しかし、実は「あえて人間らしく振舞わないことで安心させたい」というGoogleの意図があるのかもしれません。

Copilot:16点
今回は、見せ場がなかったのが残念。発音は自然で、歌のリクエストにも美しいメロディで応えてくれました。一つひとつの会話は歯切れがよくコンパクト。しかし、それが少しよそよそしく感じることもありました。一緒に楽しむというよりは、調べ物や仕事をサポートしてくれる相棒、という感じでしょうか。

Siri:9.5点
Apple Intelligenceによってパワーアップした最近のSiri。しかし、話し相手としては、ほかのAIとの差はかなり大きいと感じました。声質は好きなんですけどね。会話が続かず、すぐにWeb検索の結果を見せてきます。ただ、「こんなAIはいやだ」という大喜利に対して、「このスクリーンショットをChatGPTに送信しますか」と返してきたのは、一周回って天才的だと感じました。自虐的ジョーク?

声で選ぶ最高のAIパートナー
というわけで、今回の「AIボイス選手権」。 激戦の末、総合優勝に輝いたのはGrokでした!
もちろん、この結果は私の独断と偏見によるもの。 勝ち負け以上に、AIたちの「声」がいかに多様で個性的かを発見できたのが、何よりの収穫でした。
この記事をきっかけに、ぜひあなたも自分だけの「推しAIボイス」を探してみてください。 きっと、最高のパートナーが見つかるはずです。
それにしても、AIの進化スピードには本当に驚かされます。 1年後には、人間と聞き分けられないクオリティになっているかもしれません。進化したAIたちがどんな「声」を聴かせてくれるのか、今から本当に楽しみです。
それではまた、「AIボイス選手権 2026」でお会いしましょう!
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著者プロフィール
小平淳一
Apple製品を愛するフリーランスの編集者&ジャーナリスト。主な仕事に「Mac Fan」「Web Desinging」「集英社オンライン」「PC Watch」の執筆と編集、企業販促物のコピーライティングなど。ときどき絵描きも。Webの制作・運用も担う。







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