「MacBookにカードを1枚挟んで閉じただけで、ディスプレイが故障した」。そんなTikTokの投稿が話題になっている。
こういったトラブルにはAppleも公式にアナウンスを出しており、カードだけでなく、カメラカバー、パームレスト、キーボードカバーなどにも注意が必要だという。
MacBookは壊れやすいのか、それとも頑丈なのだろうか。
2019年以降、設計上の問題が減ってきたAppleデバイス。しかし、TikTokでとある火種が
Appleデバイスも製造物である以上、初期不良や故障を避けることはできない。過去にもバッテリのリコール、バタフライキーボードの故障問題、ディスプレイのバックライト不良などさまざまな問題があった。しかし、2019年以降、このような大きな設計上の問題は聞かなくなった。
2024年6月にAppleが公開した文書「Longevity, by Design(超寿命設計)」によると、2015年から比較して、2022年の保証外修理の件数は38%減少したという。
しかし、TikTokユーザのclassicheidiさんが公開した動画が話題を集めている。思わぬところでMacBookが壊れたのだ。

classicheidiさんはMacBookを閉じるとき、ハガキのようなカードを中に挟んでしまった。あまり深く考えていなかったが、次にMacBookを使うときに開けてみると、ディスプレイの下半分が点灯しなくなり、虹色のラインが走るようになってしまった。
MacBookの緻密な設計。ディスプレイとキーボードトップに遊びはほぼなし
「カードぐらいで」と思われるかもしれないが、MacBookの設計は非常に精密だ。閉じたとき、ディスプレイとキーボードトップの接する空間に遊びはほとんどない。
なぜそこまで緻密なのか。その理由はユーザ体験だ。MacBookを閉じた際、ハードカバーの本を閉じたときのような密着感がある。開けるときも、ディスプレイ側に指をかけて持ち上げるだけでスムースに開く。
私たちはあまりにもAppleデバイスに慣れてしまっているので、それがあたりまえだと思っている。筆者は研究用に最安値のWindowsノートを購入した。そのノートは、閉じようとして、もう一押ししないと閉まらなくてストレスだ。
開くときも、ディスプレイ部分に指をかけて開こうとすると、本体ごと持ち上がってくる。片手の指をディスプレイに、もう片手の指を本体側にかけなければスムースに開けないのだ。ユーザ体験を考慮せず、コスト削減だけを目的にした設計ではこうなってしまう。Apple製品が他社と大きく異なるのが、こういった点だ。
カメラカバーに許される厚みはコピー用紙1枚分。それ以上は故障の原因になり得る
Appleのサポートページにも、ディスプレイとキーボードの間にものを挟むことに注意喚起をする記事がある。「Macラップトップのディスプレイとキーボードの間には設計上極わずかな隙間しかないため、カメラカバーを取り付けた状態でディスプレイを閉じると、ディスプレイが傷つくおそれがあります」という。
職場でカメラカバーをつけることが求められている場合、カメラカバーの厚みをコピー用紙1枚分(0.1mm)程度に抑えてほしい、としている。

また、米国サイトのサポートページには、カメラカバーだけではなく、パームレスト、キーボードカバーなどに対しても注意喚起があった。
このような注意喚起がある以上、保証外修理となる可能性があるので注意が必要だ。

修理業者「パソコンドック24」のWebサイトで公開された、Macの故障理由が面白い
Macを含めたパソコンの修理を行っている「パソコンドック24」では、故障の原因や修理内容を公開している。これがかなり面白い。確かにやってしまいがちだというものから、そんなことで壊すのか?と驚くような修理事例に出会うことができる。

閉じるときにペンを挟んでディスプレイが破損、というのはありがちな事例だ。しかし、驚いたのはクリップを挟んでディスプレイが破損、という事例があること。クリップの種類は書いてないが、厚い書類を閉じるダブルクリップ(バインダークリップ)であれば気がつくと思うので、ゼムクリップかもしれない。
Appleのサポートの記述から考えると、ゼムクリップでも、場所が悪ければディスプレイを破損する可能性はある。
飲み物をこぼした、ピザソースを垂らした…。MacBookは“想定外の負荷”に弱い?
MacBookを使用中、飲み物をこぼしてキーボードが故障という事例は無数にある。また、カバンの中にMacBookを入れて持ち歩いていたら、一緒に入れていたペットボトル飲料の口が開いて水没した、という事例もあった。
実は筆者も、MacBookではないが、小さな電子機器を同じ失敗でダメにしたことがある。最近のペットボトル飲料は、力のない人でも簡単に開けられるようキャップの長さを浅くしているものがあり、蓋がきちんと閉められていないことに気づかないことがあるのだ。
外側のポケットに水筒やペットボトル飲料を入れられるデザインのバッグがあるが、それは使い勝手の良さはもちろん、水浸しの防止と言う意味もあるのかもしれない。
また、ピザを食べながらMacBookを使っていたら、ピザソースがトラックパッドに垂れて故障し、反応しなくなったという事例や、閉じた状態のMacBookを持ち上げるとき、縁ではなく角を持ったせいで本体が歪み、ディスプレイが破損したという例もある。Macは想定外の負荷に弱く、繊細に扱わなければならないようだ。
Appleデバイスの「フラジリティデザイン」。脆さを形で示し、ユーザに丁寧な扱いを促す
「そんなヤワでは困る。もっとハードな使用に耐えるように堅牢性を向上させるべきだ」と思う人もいるかもしれない。しかし、Appleは今後さらにMacBookを薄くしていくことだろう。
これは、フラジリティデザイン(脆さのデザイン)とも呼ばれる。脆さを具体的な形で表現することで、利用者に丁寧な扱いを自然に促すことをねらっているわけだ。
もっとも有名な例では、白磁の食器がよく知られる。磁器の食器は薄い。質の高いものになると、陽にかざすと光が透けるほど薄いものもある。すると、誰もが自然とその食器を大切に扱うようになる。かと言って、気を使うことが悪い体験につながるわけではない。むしろ、貴重なものを丁寧に使うことの気持ちよさを感じられるのだ。
Appleデバイスは明らかにこれをねらっている。たとえば、MacBookにはマットな塗装が施されていて、爪や硬いものでひっかいたら剥がれて地金が見えてしまいそうだ。しかし、実際はアルミ素材そのものに着色をするアルマイト処理がされている。そのため、釘などで引っ掻いたら傷はつくが、塗装が剥がれることはない。
Appleは繊細なデザインで丁寧な扱いを促し、その実、意外に堅牢で、ある程度の荒い扱いにも耐えるという線を目指しているようだ。MacBookを壊れもののように扱う必要はない。MacBookを使っていると、モノを大切に扱う行動変容が自然と起きるはずだ。これがAppleデバイスの最大の魅力になっている。
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著者プロフィール
牧野武文
フリーライター/ITジャーナリスト。ITビジネスやテクノロジーについて、消費者や生活者の視点からやさしく解説することに定評がある。IT関連書を中心に「玩具」「ゲーム」「文学」など、さまざまなジャンルの書籍を幅広く執筆。







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