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Vision Proは買いか、否か?/“購入者”5人による赤裸々座談会(後編)

著者: 毛内達大

Vision Proは買いか、否か?/“購入者”5人による赤裸々座談会(後編)

6月28日に迫った、日本におけるVision Proの発売日。本記事では、日本在住者ながら、米国での発売時にVision Proを購入した猛者5名による座談会の模様をお届けします。

発売後すぐに購入し、使い込んだからこそ言える、Vision Proの魅力。そして、買いか否かを赤裸々に語り合っていただきました。

Vision Pro座談会 参加者プロフィール

Leo Tohyama
IT企業の会社員として働く傍ら、「GADGET – ガジェット」と「PRODUCTIVITY – 生産性向上」をテーマとしたYouTubeチャンネルを運営(登録者数5万人以上)。カナダ・バンクーバーでの勤務経験もある。
村上タクタ
テックメディア「ThunderVolt」編集長。現在は、フリーの編集・ライターとしても活動中。30年間で600冊ほどの趣味の雑誌を編集してきた。Appleのイベント時、米国に招かれる数少ない日本人のひとりでもある。
小林佑樹
株式会社MESON代表取締役。「ARおじさん」として、AR/VR分野の最新情報をSNSで発信する活動も精力的に行う。WWDC23では、日本人デベロッパとして唯一、Vision Proの実機体験会に招待された。
西野誠
株式会社Oh my teeth代表取締役CEO。同社が提供する通院不要かつ価格帯系も明確なマウスピース矯正サービスは、世代を問わず人気を博す。「ワクワク感」のあるApple製品を、プロダクト開発の目標としている。
かじがや卓哉
吉本興業所属のお笑い芸人。iPhone芸人や家電芸人としても知られる。Apple製品を筆頭としたガジェット紹介や活用テクの解説を行うYouTubeチャンネル「かじがや電器店」は、チャンネル登録者67万人を誇る。

Vision Proが生み出したパノラマ写真の新たな価値

村上 ペルソナは皆さん使いましたか? 個人的には、アバターに違和感があるというか…。

小林 僕はWeb会議の参加者から、「ゲームのキャラみたい」と言われました(笑)。

Leo たしかに違和感はありますよね。僕はこの間ペルソナでオンライン飲み会に参加したのですが、トラッキング性能の高さには驚きました。口元のモグモグ感とか、すごく細かいところまで表現されるんですよ。

村上 食べ物自体は映らないから、より動きに注目がいきそうですね。僕もモデル自体に改善の余地はあると思いつつ、場所を問わず会議に参加できるメリットは大きいと思っています。これまで、出先でオンライン会議に参加するときは個室ブースを探してましたが、その必要がなくなりますから。

かじがや 話はそれますが、パノラマ写真や空間ビデオの感想は皆さんどうですか?

Leo 空間ビデオはすごくいいですよね。アメリカでVision Proを買った足で現地の友だちの家に行って、家の中をひととおり空間ビデオで撮影してきたんですが、あとから観返すと本当にその家にいるかのような感覚が味わえます。数年前に360度カメラが出てきたとき、旅行者に爆発的にヒットするなと思ったのに意外と流行らなかった。でも、Vision Proにはそれに変わる可能性があると感じています。

かじがや 空間ビデオは、欲を言うともう少し表示サイズを大きくできるといいですよね。現状、そのサイズの制限のせいで“思い出の中に入っていく”とまでは言えない気がしていて。臨場感やコンセプトは素晴らしいんですが。

小林 わかります。撮影にもコツが必要ですよね。なるべく動かず撮るのがいいと最近わかってきました。あと、空間ビデオの用途として一番ユーザの心に響くのは、やっぱり「子どもの映像」だと思います。日々成長する過程を空間ビデオで保存しておいたら、いつでもそのころを振り返れる。子どもを持つ親御さんは、ぜひ使ってみてほしいです。

かじがや パノラマ写真もすごいですよね。従来とはまったく別物で、それこそ中に入ったような感覚になります。

小林 僕も、Vision Proではじめてパノラマ写真の存在価値を感じました(笑)。

西野 横に長くて見づらい写真、みたいな扱いをしていましたよね(笑)。でもVision Proを買ってからは、「むしろパノラマで撮らなきゃ」と行動が変わりました。

村上 パノラマを大きく表示してウインドウに近づいて気づいたんですが、境界線の部分が若干暗くなっていて、その奥に写真が表示されているんですよね。それによって、ますますリアルさを表現している。さずがAppleだなと思うポイントです。

Vision Proの重量は600〜650gと比較的重め。長時間快適に使い続けるために、西野さんは3Dプリンタでパーツを自作しました。バンドの接続部分にオリジナルのアダプタをつけることで、ソロニットバンドを2つセット可能に。これにより、後頭部も頭頂部も締め付け度を自在にコントロールできるそう。

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Vision Proは仕事道具になり得るか?

小林 Macと接続したときの、仕事道具としてのインパクトはかなり大きいですよね。

かじがや 新幹線とか飛行機とか、狭い空間でも大きなウインドウを表示させられるのは本当に便利です。モバイル環境で作業効率を上げようと思っても、今までは16インチのMacBook Proが限度だった。でもVision Proがあれば、MacBookは極論、画面がなくたっていいわけです。

西野 僕も、電車で遠方に出かける際はVision Proで作業しています。パススルーではなくエンバイロメントモード(外界の映像を遮断)にすると周囲も気にならないので、作業に集中できるんです。

Leo 僕は購入した帰りの飛行機で、さっそくMacと接続してユーチューブ用の動画を編集してきました。普段飛行機だと、消灯後はMacBookのライトが迷惑になるので使えなかったのですが、Vision Proならそれを気にしなくていいというのがまず革命的です。編集作業自体も、視線と指で問題なくできました。Macと連係させれば、ソフトも従来どおり動かせますから。

小林 どこでも大画面を表示できる、ウィンドウを好きなところに配置できるというのは、生産性の面で本当にメリットが大きいです。社内でエンバイロメントモードで作業していると、集中できる反面、コミュニケーションが取りづらくなるという悩みはありますけど(笑)。

村上 僕はデスクにMac本体と2台の外付けディスプレイを配置しているんですが、Vision Proがあれば将来的に全部いらなくなるかも、と思っています。何もないきれいなデスクで仕事ができるなら、それは理想的ですし。

かじがや 今後ビジネスシーンでも使われていくと思いますが、僕としては、Vision Proは「映像コンテンツを観るためのデバイス」として存在し続けられるくらいレベルの高い製品だと感じています。

小林 視界全体に広がる「イマーシブビデオ」のコンテンツを観ると、180度の映像に加えて奥行きがあるので、本当に作品の中にいるかのような気分になりますよね。しかも、空間オーディオによって音の方向までリアルに体験できる。

西野 Vision Proと空間オーディオの組み合わせは本当にすごい。音に実在感があるというか。

Leo 購入してはじめて電源を入れたとき、Appleマークと一緒に「ブォーン」という起動音が鳴りますが、皆さん興奮しませんでした?

西野 わかります。あの時点で満足感がハンパない。ただ結構音漏れするので、周囲が気になるシーンではAirPodsなどを使う必要があると思います。

かじがや 単体とAirPods使用時で音質に差を感じないくらい、Vision Proのオーディオのクオリティは高いですよね。

全28種類あるといわれている「Light Seal」。購入時の顔のスキャンにより、ユーザにフィットするサイズが提供されます。下の写真の上は「33W」、その下は「25W」。サイズ感の違いが見て取れます。なお、顔に直接触れる濃いグレーの部分は「Light Seal Cushion」と呼ばれる別パーツです。

Vision Proは買いか、否か

かじがや 僕のようにMacで長時間仕事をするわけではない人にとって、Vision Proの価値はコンテンツの充実度で決まってくると思います。たとえばスポーツやコンサートなど、エンターテインメント業界でもっと幅広くイマーシブビデオが配信されれば、迷いなく「買い」です。ただ、現状の充実度だと「待ち」が正解なのかなと。日本での発売までに増えるとは思いますが。

Leo すごく難しいですが、僕も周りの人には「まだおすすめできるレベルではない」と伝えています。たとえば外部ディスプレイ的な使い方をしたいならほかのソリューションがいっぱいありますし、そちらのほうが楽です。そう思うと、僕もやはりエンタメコンテンツの対応が今後の鍵だと思います。日本で発売されるまでにどれくらいコンテンツが豊富になるか、楽しみですね。

西野 従来のゴーグル型デバイスのようにエンタメ目的で使うなら、正直、無理して買う必要はないですよね。イマーシブビデオは別として、価格が3分の1以下のメタ・クエスト3などでも十分楽しめますから。ただ、「生産性を上げたい」「移動中も効率的に仕事したい」という人には現時点で非常に価値があると思います。iPadアプリが使えたり、デバイス間でコピペができたり、Appleのエコシステムならではの使い方ができるのは、ほかの製品にはないアドバンテージですし。

小林 同感ですね。クリエイターや新しいサービスを作りたいと考えているビジネスパーソンは、今すぐにでも購入すべきです。だって、Vision Proには今後のコンピューティングの指針が詰まっていて、「目で操作する」「空間にデジタル情報が溶け込む」という新しい世界がもう現実に体験できるんですから。今使わないと絶対に乗り遅れてしまいます。

村上 iPhoneやiPadが発売されたときも、「これは使われない」と散々言われていました。でも、徐々にその利便性が認識され、現在では言葉どおり世界中の人に浸透しています。同じように、Vision Proも少しずつ普及していくと思いますが、果たしてどのくらいのユーザが約50万円で買うのか。Macが20〜30万円することを考えると、僕としては50万円を払ってでも購入する価値があると思いますが、一般的にはどうなのか…。今後、Appleがどんなアプローチをしてくるか楽しみにしています。

多種多様なジャンルで活躍する5名のVision Proの購入者たち。全員に共通しているのは、初代モデルゆえの課題感を感じつつも、トータルの使用感や体験において期待を大きく超えてきた、という感想を持っていること。そして、クリエイターや新しいプロダクトやサービスを作る仕事をしている(したい)人たちは必ず触れておくべきデバイスである、と口を揃えていっていたのが印象的でした。決して誇張表現ではなく、Vision Proは未来を作る次世代のコンピュータなのです。

※この記事は『Mac Fan』2024年5・6月合併号に掲載されたものです。

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著者プロフィール

毛内達大

毛内達大

エディター/ライター。IT・テクノロジー専門の月刊誌で編集者として従事。現在はフリーランスとして、紙・Webメディア問わず複数の媒体にて、インタビュー記事や導入事例など多ジャンルの記事を編集・執筆。

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