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Vision Proは約60万円の価値アリ!/YouTuber・みずおじさんが空間コンピュータを実機レビュー!(後編)

著者: 毛内達大

Vision Proは約60万円の価値アリ!/YouTuber・みずおじさんが空間コンピュータを実機レビュー!(後編)

ついに日本でのリリースが決定したApple Vision Pro。その発売日が6月28日に迫ってきています。

そこで本記事では、米国での発売時(2024年2月2日)にVision Proを入手したYouTuber・みずおじさんの実機レビューをお届け! なお前編では、ハワイのApple Storeでの購入体験をレポートしています。

Vision Proは顔に吸い付くようにフィットする

大きなパッケージ内には、Vision Pro本体に加えて「Solo Knit」と「Dual Loop」という2種類のヘッドバンドや、外付けバッテリ、ポリッシングクロス、USB-Cケーブル、前面を保護するためのカバーなどが同梱されています。

開封して最初にデバイスを持ったときの感想は、ハードウェアとしてのかっこよさはもちろん、「思っていたよりも小さい」ということ。Appleの公式Webサイトに出てくる着用モデルの頭が小さいからかもしれませんが、手に取ってみると想像以上にコンパクトに感じるはずです。

一方で重量は600gあるので、装着するとやはり重さを感じます。試しに2時間の映画をVision Proで観てみたのですが、それなりの疲労感を覚えました(バッテリは余裕で持続)。

Vision Proは、独自のコネクタを備えた専用の外付けバッテリで動作します。なお、バッテリにはUSB-Cポートが搭載されているため、電源を供給しながらであれば、バッテリ切れを気にせず使用することが可能です。

長く装着する場合は、現状「Meta Quest 3」(約515g)のほうがラクかもしれません。また、ベルトは頭の上と後ろを固定できるデュアルループのほうが安定しますが、個人的にはソロニットのほうが「VRゴーグルを装着している」という印象が薄く、見た目的にも好み。

ソロニットの場合、バンド側面にあるダイヤルを回すことでフィット感を調整できます。

ベルト部分は伸縮性にも優れていますし、Apple Watchのバンドのように着脱できるので、扱いに悩むことはないはずです。

Vision Proの持ち方と装着方法は、購入時のレクチャーでジーニアスに厳しめに指導されました。ガラス部分を下から左手で持ち、同じく下から右手でバンドを持ち、被るように装着しましょう。

視線と指で操るVision Proの魔法のような操作方法

Vision Proは、視線と指先と声を使って操作します。特に視線を使った操作は、これまでのAppleデバイスになかったものなので、最初は慣れが必要でした。

頭を上下左右に動かすのではなく、意識的にグッと目を動かしてアイコンやボタン類を選択しなければならないため、最初はちょっと疲れるかもしれません。また、ボタンが複数並んでいる場面だと、そのボタンを選択したつもりがちょっとズレて別のものを選んでしまった、なんてことも。写真やファイルの削除ボタンがあるときなどは、ちょっと緊張します(笑)。

視線と手を使ったセットアップ、そして初期設定が完了すると、アプリアイコンが並ぶホーム画面が現れます。ハワイのApple Storeやホテルですでに体験済みとはいえ、慣れ親しんだ自宅にアイコンが表示されると、改めて感動が。なお、現状はアイコンの並び順は変更できずアルファベット順で固定されています。アプリの起動方法は、アイコンに視線を向け、親指と人差し指をタップするだけです。

ただ自分の目線がカーソルになる感覚は新しく、はじめて体験するときは絶対に感動すると思います。

一方、指を使った操作はすごく自然です。たとえばクリック(確定)は人差し指と親指をつまんで行うのですが、手をだらりと下げた状態でもしっかり反応します。

ウインドウの拡大も、視線をウインドウ端に向け、指でつまんで引っ張ればOK。ウインドウ下に表示されるバーを掴めば、そのまま好きな場所に移動できますし、両手で掴めばピンチイン/アウトの操作もできます。

「Safari」のウインドウを開いた様子。Vision Proで撮影するキャプチャは視線を中心に周りがぼやける仕様なので、左図のぼやけている部分も実際には高精細に見えています。開いたウインドウを拡大したい場合は、ウインドウの端に視線を向け、アイコンが表示されたら指でつまんで外に引っ張りましょう。逆に内側に動かせば、縮小できます。
ウインドウ下部に視線を向けると、白いバーが表示されます。これを指先でつまめば、ウインドウを好きな場所に移動することが可能です。まさに指でつまんで物を動かす感覚で、自然に操作できるでしょう。なお、バーの隣の丸いアイコンはウインドウを閉じるボタンです。視線を向けて指をつまめば、ウインドウが閉じます。

ただ、装着しながらコーヒーを飲もうとすると、カップを持つ動作がウインドウを掴む動作と誤認されることがあるので注意が必要です(笑)。ちなみに、画面上のボタンやリンクは、iOSのように直接タッチして操作することもできます。

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空間コンピュータが実現するリアルとバーチャルの融合

Vision Proは周囲の状況が見えるパススルーに対応しているのですが、装着したまま歩き回れるほど映像がとにかくきれいで高精細です。

同じことは「Meta Quest 3」でもできるものの、画質が荒かったり残像が気になったりと、やはりリアリティに欠けるのが事実。その点、Vision Proは違和感がまったくありません。またVision Proでは、視界の端を意識すると若干映像がぼやけています。

それは人間の視野感覚を忠実に再現しているからこそで、むしろリアルさの下支えとなっている印象です。

そして、現実の空間に浮かんだ各種ウインドウやコンテンツも精細で、拡大せずともウインドウ内のテキストがしっかり読めます。また、ウインドウの下には影が落ち、表示させる場所によって濃淡が表現されるので、ものすごい“実在感”です。

現実世界とバーチャルが見事に融合するVision Proの世界。その表現力は実に豊かで、たとえばウインドウの下を見るとしっかり影が落ちています。ウインドウの位置によって、サイズや濃淡が変わります。
私のYouTube動画を再生してみました。目の前に大きく表示されると、動画をもっと作り込みたくなったり…。ちなみに、YouTubeアプリは未提供なので、ブラウザ経由でアクセスする必要があります。また、「Disney+」で3D映画を視聴してみたところ、その高精細さ、そして迫力に改めて驚きました。オーディオ性能も非常に高く、特に空間オーディオの立体感は素晴らしいの一言。イヤフォンを使わなくても大満足です。

映画やパノラマ写真、ゲームなど、各種コンテンツもiPhoneで観ているのと同じくらいきれいに映りますが、プリインストールされているvisionOS用のインタラクティブアプリ「Encounter Dinosaurs」がとにかくすごい! 恐竜が画面から飛び出してきて、撫でようと手を伸ばすと噛みついてくるなど、そのリアリティに思わず叫んでしまいました。皆さんにもぜひ、一度体験してみてもらいたいです。

パノラマ写真は、想像以上の臨場感でした。iPhoneで撮影したハワイの風景を見てみると、本当に今そこに立っているかのよう(このすごさは体験しないとわからない!)。写真に向かって歩いていける感覚も新鮮です。
空間ビデオや写真は期待ほど立体感を感じられませんでした。撮り方も研究したいところです。

まったく新しい空間コンピューティングの可能性

Vision Proの視野内には、ウインドウをいくつも並べることができます。どこまで表示できるのか気になって写真やSafariのウインドウをバーッと並べてみましたが、限界まで辿り着くことができず…。M2チップの恩恵もあってか、その最中に挙動が重くなることもありませんでした。

Vision Proでは、目の前に際限なくウインドウを並べられます。ウインドウを増やして行っても、動作の重さやカクツキを感じることはありませんでした。

一方、Vision Proだけで仕事をするのは、たとえ英語圏のユーザであってもまだ難しいのではないかなと思います。解像度やインターフェイス面では問題ありませんが、主要なサードパーティアプリがまだ出揃っていないからです。

Macと接続すれば、その画面を空間上に表示させることも可能です。出力できるのは1画面のみですが、Vision Pro上でアプリを起動すれば、複数ウインドウ環境を構築できます。
MacとVision Pro間でAirDorpはできるものの、直接ドラッグ&ドロップはできませんでした。これは残念。

App Storeでは、すでに600以上のvisionOS対応アプリが公開されているとはいえ、そこにAdobeなど大手のクリエイティブ系アプリはまだありません。

ちなみに、文字入力は空間に表示されるバーチャルキーボードを使用します。これも視線を使って入力できますが、連続してタイプすると目が疲れてしまうので(慣れもあると思いますが)、私はキーを直接タッチして入力しています。

文字入力は、空間に浮かび上がる仮想キーボードで行います(音声入力にも対応)。ただ、現状はあまり快適な操作感とはいえません。Bluetoothキーボードにも対応しているので、文字入力を頻繁に行うなら、用意しておいたほうが良さそうです。

また、FaceTime通話中に自分をアバター的に表示させる「Persona」は、まだまだ完成度が高くなく、少し気味悪く感じてしまいました(笑)。ベータ版らしいので、今後に期待ですね。

機械学習によって、ユーザの姿をアバター的に表示する「Persona(ペルソナ)」機能。先進的ではありますが、少し不気味な印象です。私は顔出しして活動していないのですが、公開してもOKと思えるくらい似ていません(笑)。

Vision Proは、日本に上陸したら買い? それとも…

Vision Proの強みは、物理的なディスプレイを必要とせず、いくらでもウインドウを目の前に表示できること。そして、それが高精細であるために「いつまでもこの世界にいたい!」と思わせてくれることです。

一方で、購入を検討している人にとっては、価格と重さがネックになってくるかもしれません。また、まだまだアプリの数が足らないため、実現できることは少ないですし、Vision Pro用アプリとMac用アプリの連係性も今のところ十分ではないので、実用性という面では物足りない部分があるのも事実です。

しかし、私としては「Apple好きなら買ったほうがいい!」と断言できます。なぜなら、仮に無限の予算と時間があったとしても、現在Vision Pro以上の体験ができるモノ、場所は存在しません。今ここが最先端なのです。

また、Appleが打ち出す最先端のテクノロジーに触れられるという意味でも、この金額を払う価値は絶対にあると思います。

Vision Proの体験は、いずれも素晴らしいものでした。空間に表示されるウインドウや指での直感的な操作は言わずもがな。何より、自宅などいつもの風景がコンピュータになるのは感動ものです。

Vision Proには、唯一無二、そして最先端が詰まっています!

※本記事は、『Mac Fan』2023年4月号に掲載されたものです。

著者プロフィール

毛内達大

毛内達大

エディター/ライター。IT・テクノロジー専門の月刊誌で編集者として従事。現在はフリーランスとして、紙・Webメディア問わず複数の媒体にて、インタビュー記事や導入事例など多ジャンルの記事を編集・執筆。

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