MacBookエントリーモデルのうわさ
2025年7月上旬、MacBookシリーズのエントリーモデル(廉価版)がリリースされるのではないか、という噂がネットを賑わせた。
それによると、そのMacBookには13インチのディスプレイとiPhone 16 Proに搭載されているAppleシリコン「A18 Pro」が採用され、そのリリース時期は2025年末から2026年初頭だという。これがもし実現すれば、iPhone向けのAppleシリコンを搭載するはじめてのMacとなる。
実現性は後述するとして、もしその新しいMacBookが実際にリリースされるとどの程度のパフォーマンスを示すのか、非常に興味深いところだ。そこでまずすでにわかっている事実から実力を検証してみることにしよう。
A18 Pro搭載MacBookの性能とは
現在MacBookシリーズのエントリーモデルに位置付けられるのは、M4を搭載したMacBook Airだ。これに対して、A18 Proを搭載するMacBookがどの程度の性能を示すのか考証した。
A18 ProとM4の実力は、iPhone 16 ProとM4搭載MacBook Airのベンチマークから推し量れる。ここでは両者のGeekbench 6のスコアから、その性能を比較してみた。なお、歴代のAppleシリコン搭載MacBook Airの性能も比較対象に加えている。
まずCPU性能から見てみると、A18 Proのシングルコア性能はM3を大きく上回り、M4に近い。つまり、ユーザ操作に対するレスポンスはM4搭載Macに匹敵する。

一方で、マルチコア性能はM1を上回るものの、M2には届かない。それでも高性能コア4基のM1に対し、同コアを2基しか持たないA18 Proが上回っていることは、Appleシリコンの進化を窺わせるものとなっている。
次にGPU性能に目を移すと、MetalスコアにおいてA18 ProはM1に近い性能で、M2〜M4には大きく引き離されている。これはGPUコアが6基しかないことと、メモリ帯域で劣るためだろう。

ただし、A18 ProのGPUは「Pro GPU」のため、メッシュシェーディングやダイナミックキャッシング、ハードウェアアクセラレーテッドレイトレーシングに対応している。そのため、高画質ゲームなどではその能力を発揮するだろう。Neural EngineもM4に匹敵する35TOPSの性能を持ち、Apple Intelligenceにも対応する。
このように主要プロセッサ性能において、A18 Proは概ねM1と同等かそれ以上の性能を備えており、最新のmacOSをストレスなく動かせる実力を持っていることがわかる。
インターフェイスへの影響
一方インターフェイスについては、Mシリーズを搭載するMacBook Airと同等の部分と劣る部分が存在する。カメラやサウンド系については、iPhoneにはMacと同等かそれ以上の機能や性能が備わっており、従来のMacBook Airと遜色ないものが提供されるだろう。
一方で拡張ポートであるUSB-Cについては、MシリーズのようにThunderboltに対応するのは難しく、その速度はUSB 3 Gen.2(10Gbps)でポート数も1または2に限定されると思われる。またディスプレイ出力についてもUSB-C経由のDisplayPort出力か、HDMIのいずれか1出力に限定されるだろう。

画像:Apple
バッテリの持ちについては、その容量がMacBook Airに近ければそれを上回るバッテリ駆動時間が実現されるはずだ。ただし実際の消費電力はディスプレイに依存する部分が大きいため、シリコンの変更のみで大幅に駆動時間が延びるとは考えにくい。
つまり、インターフェイスについてはMacBook Air以下に限定されると思われ、それを強化することはコストアップ要因になるため実現が難しいだろう。
唯一期待できるのが5Gモデム(Apple C1など)の搭載によるセルラー通信対応だ。しかし、こちらも大幅なコストアップになるため、搭載されたとしてもオプション設定になるのではないだろうか。
廉価版MacBookに“最適”なAppleシリコンとは
仮に今「何の前提もなく」従来より低価格なMacBookを開発するとしたら、採用されるAppleシリコンはおそらくA18 Proではない。というのも、A18 Proは決してローコストなAppleシリコンではなく、Macに適した設計でもないからだ。
A18 Proは、2024年時点の最新テクノロジーである第2世代3nmプロセスで製造され、内部にメモリを積層するパッケージ技術を使用している。

画像:Apple
おそらくエントリーモデルのMacBookに搭載するうえで、もっともコストメリットが出るのはM2だろう。熟成した第2世代5nmプロセスで製造され、パッケージングにもこなれた技術を使っている。
また、M2には16GBのメモリを搭載したチップも用意されているため、製品ラインアップを作りやすい(A18 Proにはメモリ8GBのチップしかない)。

だとしたら、あえて今A18 Proを新たに採用する理由とはなんだろうか。それはおそらく、AppleがA18 Proを使わなければならない事情があるケースだろう。
あえて“今”A18 Proを採用する理由とは
シリコン製造の業界において、最新テクノロジーを有する半導体メーカー(ファブ)の製造ラインは、常に世界のファブレスメーカーの間で奪い合いになる。より多くの売り上げをファブにもたらすメーカーが、より多くの最新ラインを自社のシリコンで埋めることができる、そういう世界だ。
このため、Appleはライバルに競り勝ってファブの最新ラインを押さえるために、A18およびA18 Proの製造に対して相当数の購入契約(コミットメント)をしているはずだ。
ここでもし契約数よりも搭載デバイスの需要が少なかった場合、残ったシリコンは(まだ製造されていなかったとしても)余剰となる。その新たな用途として、次の世代のエントリーモデルに採用されたり、ほかのデバイスに流用されたりするわけだ。
最近の例でいえば、iPhone 15 Pro用に開発されたA17 Proが採用されたiPad miniがある。A17 Proは第1世代3nmプロセスで製造された最初のAppleシリコンだが、このプロセスは立ち上げに苦労しており製造コストはA18シリーズより高いと想定される。
しかしiPhone 16シリーズの登場によって不要となったA17 Proは、iPad miniをApple Intelligenceに対応させるべく採用されたものと考えられる。

A18やA18 Proも、契約数に達しないままiPhone 17シリーズが登場すれば転用先が必要になる。おそらくA18は、来年春に登場するであろう次期iPadがその受け皿になる可能性が高い。これによってiPadシリーズは全モデルでApple Intelligenceへの対応が完了する。
一方でA18 Proの転用先は難しい。iPad AirやiPad Proは、すでにMシリーズへの移行を済ませていてAシリーズの出番はなく、今のところ最適な転用先が思い浮かばない。もしかしたらMacBookのエントリーモデルに…といううわさも、案外そんなところから来ているのかも知れない。
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