発表から四半世紀の歴史を積み重ね、今も進化を続けている「Mac OS X(現macOS)」。スティーブ・ジョブズ氏が描いた未来像は、歴史に大きな転換点をもたらした。
25周年という節目に、その軌跡と影響力を振り返る。
Mac OS X(現mac OS)の登場。それはパーソナルコンピューティング史の転換機
2000年1月、マックワールドエキスポで初めて披露された「Mac OS X(現mac OS)」は、今年25周年を迎えた。その発表はMacにとってだけでなく、パーソナルコンピューティング全体における歴史的な転換点となった。
25年前の基調講演でスティーブ・ジョブズ氏は、Mac OS Xを「次の10年間のMacの基盤」と位置づけたが、その予想を遥かに超え、このOSは25年以上にわたりAppleのプラットフォーム全体を支え続けている。
初代Macintoshが登場した41年前、その革新的なグラフィカルユーザインターフェイス(GUI)は大きな話題を呼んだ。しかし、その裏側にある技術基盤はパーソナルコンピュータ黎明期のものであり、Mac OS 9(1999年リリース)の頃になると、時代遅れの課題が浮き彫りとなった。
たとえば、メモリ保護がない、マルチタスクが不十分など、当時の競合OSと比べて弱点が目立っようになったのだ。

AppleがNeXTを買収。復帰後、ジョブズが注力したこと
1990年代後半、「Copland」など次世代OSプロジェクトに頓挫したAppleは、最終的にジョブズ氏が創設したNeXTを買収するという大きな決断を下す。

NeXTが開発したOSである「NeXTSTEP」には、モダンOSとして必要な要素が揃っていたが、そのインターフェイスはMacユーザにはなじみが薄く、以降受け入れられるものではなかった。
ジョブズ氏がAppleに復帰してから3年間、Appleのソフトウェア部門はNeXTSTEPの優れた基盤技術を継承しつつ、洗練されたユーザインターフェイスとユーザ体験、モダンな開発環境の構築に注力することとなる。
“思わずなめたくなる”。Mac OS XのGUIデザイン「Aqua」の美しさ
当時Mac OS Xでもっとも注目されたのは、ジョブズ氏が「思わずなめたくなる」と表現したGUIデザイン「Aqua」である。半透明なウインドウ、立体的なボタンなどのデザイン哲学は、Macの直感的で美しいビジュアルの象徴となった。
特に「Dock」は、アプリケーションの起動や切り替えを簡単にし、今日でも変わらぬMacの重要な機能としてユーザに愛用されている。

Mac OS Xがもたらした、他社製OSへの多大な影響。そのレガシーはどこに?
Mac OS Xの革新性は、ほかのOSにも大きな影響を与えた。WindowsのAeroインターフェイスや、Linux系デスクトップ環境のコンポジット化は、Mac OS Xのデザインや技術にインスパイアされた例といえる。
Mac OS Xのレガシーは、直感的で美しいデザインと強固な技術基盤の融合という新たなスタンダードを生み出した。パーソナルコンピューティングをスマートフォンや空間コンピューティングといった新たな領域に広げる礎であったともいえるだろう。
この25年を振り返ると、1990年代後半のAppleの決断とジョブズ氏のビジョンが、いかに時代を先取りし、未来を見据えたものであったかがわかる。
※この記事は『Mac Fan』2025年3月号に掲載されたものです。
おすすめの記事
著者プロフィール
