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iPadでペーパーレス化と業務効率化を推進。信頼、品質向上を支える健康補助食品メーカー・バイホロン株式会社のDX

著者: 栗原亮

iPadでペーパーレス化と業務効率化を推進。信頼、品質向上を支える健康補助食品メーカー・バイホロン株式会社のDX

株式会社バイホロンは、300台を超えるiPadを導入し、DX化を推進している。

バイホロン株式会社は、富山県に拠点を置く健康補助食品のOEMメーカーだ。

同社は従業員約360人ほぼ全員がiPadを利用できる環境にあり、製造工程の記録業務などに利用することで、生産現場のペーパーレス化と業務効率化、そして製品の品質管理の向上を推進している。

その成果と新たな取り組みについて、総務部ICTソリューション課の安村優希さん、そして永森公章さんに話を聞いた。

“秤量”の正確性と効率性をiPadによるDX化で向上

バイホロン株式会社(以下、バイホロン)は、クロレラ錠剤の専門製造会社として1975年に富山市で設立された。その後、健康食品だけでなく医薬部外品や化粧品の製造も手掛けるようになり、現在では大手飲料メーカーをはじめ100社以上のクライアント企業からの依頼を受け、栄養補助食品や機能性食品などの健康食品を、処方設計から製造まで担っている。

  「多品種・小ロット生産が中心となる健康補助食品は、品質管理が特に重要」と話すのは、総務部ICTソリューション課の安村優希さん。

同社がiPadを導入したきっかけも、サプリメントの製造過程で原料を正確に量る「秤量」作業をモバイルデバイスで効率化できないか、という課題があったからだという。

  「2012年3月にiPad(第3世代)を5台、試験的に導入したのが始まりです。サプリメント製造の最初のステップでは、指定された数十種類の原料をピックアップし、その量と割合をグラム単位で正確に測る『秤量』という工程があります。同じ品質の製品を作るためには欠かせない重要な作業ですが、製造する品目が増えるにつれ、紙書類での手書き記録では作業負担が著しく増加し、労働時間が長くなるという問題がありました」(安村さん)

バイホロン社がiPadを選んだ理由。仮想化ソリューションでWindowsソフトも活用

iPadを選んだ理由は、モバイル性の高さやバッテリ性能に加え、タッチ操作が多くの従業員にとってなじみやすい点があるという。導入の経緯について、同課の永森公章さんはこう話す。

  「秤量専用のデバイスを使うという選択肢もありました。しかしその多くは画面が小さく、独自の操作方法を覚える手間があります。一方、iPadではマスクや作業着を装着した現場でも操作しやすく、画面表示も確認しやすいため作業効率が上がり、品目番号や数量の入力ミスなども減少しました」

デスクトップ仮想化ソリューション「Citrix」により、WindowsソフトがiPadでも利用できることもポイントだったという。その後、継続的にiPadは追加導入され、2014年には本格的な活用に向けて100台以上のiPad Airを一括導入した。

製造の工数管理、日報、改善活動の報告業務…iPadの利用シーンは多種多様

iPadを用いた帳票入力で主に活用されたシステムは、シムトップス社の「ConMas i-Reporter」だ。社内で使い慣れている表計算ソフト「Microsoft Excel」を用いて帳票画面を設計できることや、社内基幹システムとの連係が柔軟で、短期間に構築できることが決め手となったという。

サプリメントの生産ラインで機械の稼働時間を入力する様子。リアルタイムに入力できるため、精度の高い情報をほかの部署とスムースに共有できるようになった。

iPadは、製造の工数管理、日報や改善活動の報告業務、従業員同士による「360度評価」、製造現場の安全と品質向上を目指す「5S活動(整理、整頓、清掃、清潔、躾)」など、幅広い業務で活用されている。特に製造管理では、顕著な改善効果がみられると永森さんは言う。

  「紙の時代には、どの作業工程に何人が関わり、機械を何時間稼働させたかといった情報を大まかに日報に記録するのが精一杯でした。しかし帳票の電子化によって細かい工数まで把握できるようになったため、パソコンによる入力や集計作業を待たず、製品ごとの正確な原価計算が容易になったことは大きな成果です」

秤量、など生産工程の作業手順書がiPadから確認できるようになっており、始業時の機械の点検などを正確に行える。

1日30分以上の時短、そして年間10万枚以上のペーパーレス。iPadの恩恵は極めて大きい

作業効率の改善に伴ってiPadは順次追加され、2021年2月には合計200台を超えた。現在は、製造部門で297台、間接部門で62台の計359台が稼働中だ。iPadには、労働時間短縮の効果もあると安村さんは述べる。

  「紙からパソコンへの転記作業がなくなったことで、毎日30分程度の時間が削減されています。また、紙の書類が完全になくなったわけではありませんが、年間で約10万枚以上のペーパーレス化を達成できたという試算もあります」

基幹システムとの連係により、システム導入の効果は数値で可視化された。それにより、各工程でどのような改善が進められているかが把握しやすくなったという。

一方iPadの増加により、デバイス管理の煩雑さが課題となった。これに対応するため、MDM(モバイルデバイス管理)システムとして「Jamf Pro」を導入しているという。

手順書アプリ「BOPCS」を自社で開発。進む、バイホロン社独自のDX

iPadを起点にDXを推進するバイホロンでは、さらなる業務効率の改善と品質向上を目指して、さまざまな取り組みを続けている。

工場の生産ラインでは、作業に入る前に必要な備品が揃っているか、機械の清掃が正しく行われているかなどを確認する始業点検が実施される。清掃が正しい手順で行われていないと、次の製品を製造する際に前工程の原料が混入するなど、重大なリスクにつながりかねない。

どの従業員でも安全かつ正確に作業を行うためには、わかりやすい作業手順書が不可欠だ。そこでバイホロンでは、iPadのカメラを活用し、写真や動画を使って作業手順書を作成できる「BOPCS(ボピックス)」アプリを独自開発した。

  「写真や動画を用いたマニュアル作成サービスやローコードツールは多くありますが、健康食品製造の特殊なノウハウや、少量多品種でライフサイクルが速い製品の膨大なパターンをカバーするには不十分な点がありました。そこで、ソフト開発会社と共同で独自の作業手順書作成アプリを開発したのです」(安村さん)

自社開発の「BOPCS」アプリ

バイホロンで独自開発した手順書管理システム「BOPCS」では、画像や動画、PDFなどを参照して正常な状態と異常な状態などを確認できる。

DX化の背景にある、経営陣のリーダーシップと迅速な意思決定。そして社員の主体性

  「BOPCS」により、製造機械の操作や分解清掃といった複雑な作業を動画やテキストでわかりやすく記録できるようになり、手順書の作成および確認が迅速化された。

  「随時改訂を行っているため増減はありますが、取材時点で作成されている手順書は2256種類あります。そのうち、iPadから作成されているものは984種類です。手順書は作業内容ごとにカテゴリ分けされており、ハサミの適切な扱い方や挨拶の仕方といったごく基本的なことやビジネスマナーまで含まれています」(安村さん)

iPadをはじめとするデジタル化を推進できた背景には、バイホロン経営陣のリーダーシップと迅速な意思決定、そして従業員が業務改善に主体的に関わり、その効果を実感できる仕組みがあると安村さんと永森さんは語る。地域に根差し、独自の事業価値を追求するバイホロンの取り組みは、多くの中堅企業の参考になるだろう。 

※この記事は『Mac Fan』2025年3月号に掲載されたものです。

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著者プロフィール

栗原亮

栗原亮

1975年東京都日野市生まれ、日本大学大学院文学研究科修士課程修了(哲学)。 出版社勤務を経て、2002年よりフリーランスの編集者兼ライターとして活動を開始。 主にApple社のMac、iPhone、iPadに関する記事を各メディアで執筆。 本誌『Mac Fan』でも「MacBook裏メニュー」「Macの媚薬」などを連載中。

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