Mac業界の最新動向はもちろん、読者の皆様にいち早くお伝えしたい重要な情報、
日々の取材活動や編集作業を通して感じた雑感などを読みやすいスタイルで提供します。

Mac Fan メールマガジン

掲載日:

【比較レビュー】「Meta Quest 3」vs「Meta Quest 3S」vs「Apple Vision Pro」で仮想ディスプレイを実現! コスパが優れているのはどれ?

著者: 松山茂

本ページはアフィリエイト広告を利用しています

【比較レビュー】「Meta Quest 3」vs「Meta Quest 3S」vs「Apple Vision Pro」で仮想ディスプレイを実現! コスパが優れているのはどれ?

今回の比較検証に使用した「Meta Quest 3」と「Meta Quest 3S」そして「Apple Vision Pro」の3デバイス。単に性能だけでなくコストパフォーマンス的にどのデバイスが仮想デスクトップ環境に優れているのか検証してみました。

どこでも拡張ディスプレイを使える環境が欲しい!

MacBookシリーズを長年にわたって愛用してきた筆者ですが、作業内容によってはデスクトップスペースが足らないことがあります。その場合、外付けモニタを使うのが一般的な解決策です。しかし、外付けモニタは設置した場所でしか作業ができないため、どこでも自由に作業できるMacBook本来の利便性が失われてしまうのです。

USB-Cケーブル1本でデスクトップを拡張できる外付けのモニタは便利な反面、当然ながらその場所に行かないと利用はできません。自宅や職場でもディスプレイが設置してあるデスクでないと作業できないのは不便です。

そこで考えたのが、仮想空間にディスプレイを追加する“拡張ディスプレイの仮想化”です。この仕組みなら、物理的なモニタを追加せずとも、どこにいても広々とした快適な作業空間が手に入ると考えたのです。ただ、こうした環境を実現するにはVRヘッドセットやARグラスといったデバイスが必要になります。

そこでVRゴーグルを使った作業空間の構築を試していたところ、タイミングよくMetaから「Meta Quest 3」と最新の「Meta Quest 3S」をお借りできたので、これらを活用して仮想ディスプレイ環境を試してみました。さらに、筆者が所有する「Apple Vision Pro」と比較し、どのデバイスがコストパフォーマンス的に優れているのか検証しました。

パススルーと仮想ディスプレイ、どちらが最適?

仮想ディスプレイを活用するうえで、特に筆者が重要視したのが「パススルー機能」です。これは、VRゴーグルを装着したままでも周囲の環境を認識できる機能です。MacBookの画面やキーボードを正確に視認したい筆者には、この機能の性能が仮想環境の快適さを大きく左右します。

「Meta Quest 3」と「Meta Quest 3S」ではパススルー性能に関してほぼ同等でした。光学部分もパンケーキレンズ(Meta Quest 3)とフレネルレンズ(Meta Quest 3S)の違いがありますが、パススルー画像はほぼ同じで大きな差を感じませんでした。

今回の検証に使用した3つのデバイスのスペック比較表。最新の「Meta Quest 3S」は従来のMeta Quest 3とプロセッサやメモリは同じですが、接眼レンズをフレネルレンズにすることでディスプレイ解像度がやや低くなるなどスペックダウンして価格を抑えています。一方、Apple Vision Proは断然、性能は上ですが約10倍の価格差があります。
VR空間を見るための接眼レンズですが、「Meta Quest 3」はパンケーキレンズを使って薄型を実現しています。
対して「Meta Quest 3S」ではレンズを同心円状に分割したフレネルレンズで厚みを減らしています。

しかし、どちらも目の前のMacBookの画面やキーボードは認識できるものの、文字や細かな表示が粗くギラついて見えるため、長時間文字を読むにはちょっとツラかったです。

「Meta Quest 3S」のパススルーで目の前に置いたMacBookを見た映像です。13インチの画面に表示した14ポイントの文字でもこの距離だと滲んで読むのは難しい状態です。
近くの物を見ようとすると背景に歪みが生じます。見え方や歪みの発生は「Meta Quest 3」でもほぼ同じです。

一方、Apple Vision ProはRetina 4Kに近い精細さがあります。目の前に置いてあるMacBookの画面上に表示している文字も難なく読めますし、手にしたiPhoneや腕に装着しているApple Watchの文字もハッキリ識別できます。ディスプレイ解像度が「Meta Quest 3」や「Meta Quest 3S」より高いうえ、パススルー解像度も倍近く差があるのでその差は当然です。

仮想ディスプレイを実現するために必要なソフトは?

MetaのQuestヘッドセットを使ってパソコン画面を仮想ディスプレイに表示するには、専用のアプリ(無料)が必要です。まず試したリモートデスクトップは、MacBookの画面を仮想空間にミラーリング表示するアプリです。5段階で画面解像度を切り替えたり、画面サイズの調整をしたりすることができるので、作業しやすい広さの仮想デスクトップを作り出すことができます。

MetaのQuestシリーズを使って仮想ディスプレイを表示するには、MacBookとヘッドセットの両方にそれぞれアプリ「リモートデスクトップ」をインストールします。Macで同アプリを起動したらヘッドセット側で「リモートデスクトップ」を開きます。
目の前に「リモートデスクトップ」のウインドウが現れます。Macと同じアカウントでヘッドセット側もログインすると「コンピュータ」にMacBookのデバイス名が表示されるので、コントローラもしくは手でポインタを操作してクリックしましょう。
MacBookのデスクトップがリモートデスクトップ側に表示されました。パススルーで見えているMacBookの画面より鮮明に表示されるので細かな文字でも判別できます。
リモートデスクトップのウインドウはコーナーをドラッグすると拡大できます。ウインドウの下部に表示しているバー(白い横棒)をドラッグすれば空間上の位置も変更できます。
リモートデスクトップのウインドウの右上にある四方向に外向きの矢印ボタンをクリックすると「シアターモード」に切り替わります。
シアターモードではウインドウの下に並んだボタンでカーブウインドウ/フラットウインドウの切り替えができたり、[☀︎](調光)ボタンでパススルーの明るさ変更などができます。
リモートデスクトップのウインドウの右下にある[⚙︎](歯車型)ボタンをクリックすると、Macとの接続解除と解像度の変更ができたり、
PCの拡張モニターを2枚追加できたりします(最大3枚)。
リモートデスクトップの解像度は[1.0x][1.25x][1.5x][1.75x][2x]の5段階から選択できます。
検証に使ったMacBook Air(M2, 2022)では、最大の[2x]を選ぶと2560×1600まで解像度をアップできました。これなら拡張ディスプレイモードが使えなくても、リモートデスクトップを拡大表示して、広くなったデスクトップで作業できます。

いくつも拡張ディスプレイを追加したい場合は「Immersed」がおすすめ。このアプリを使えばMacBookの画面を仮想ディスプレイに表示するだけでなく最大5枚までの仮想ディスプレイをバーチャル空間に表示できます。もちろんパススルーも可能。見慣れた目の前の空間にいくつも仮想ディスプレイが並ぶ様子は圧巻です。

Immersed」はMeta Questヘッドセット内の仮想空間にPCの画面を表示するアプリです。無料のSTARTER MODEなら3画面まで使えます。月額5.99ドルのIMMERSED PROなら5画面まで拡張できます。
こちらもMacBookとヘッドセットの両方に「Immersed」アプリをインストールします。アカウント作成後にMacBookで同アプリを起動。ヘッドセット側でも「Immersed」アプリを開いたら、Immersedメニューの”Computers”タブにあるMacBookを選択します。
バーチャル空間にMacBookの画面が表示されます。コントローラーのポインターを仮想ディスプレイの上部に移動すると[Click here to move]もしくは[ここをクリックして移動してください]と書かれた白いバーが表示されます。この部分をドラッグするとウインドウの位置を自由に動かせます。コーナーをドラッグすればウインドウのサイズが変更できます。
白いバーの右端にあるオレンジ色のボタンをクリックすると仮想ディスプレイが追加できます。
最初はバーチャル空間にMacBookの画面が表示されていますが、コントローラーもしくは掌を返すとImmersedのメニューが表示されるので、そこから[MIXED REALITY]もしくは[MRモード]をクリックするとパススルー表示に切り替わります。
追加した仮想ディスプレイをドラッグするとメインの仮想ディスプレイの上下左右に近接したエリアが薄いオレンジ色に変わります。この部分にドラッグ中の仮想ディスプレイをドロップすると、メインの仮想ディスプレイに連結した状態になります。仮想ディスプレイ同士を連結しておくと、メインの仮想ディスプレイをドラッグするだけで連結した仮想ディスプレイも追従して動かすことができます。
「Immersed」はローカライズされているので日本語表示にもできます。コントローラーもしくは掌を返してImmersedのメニューを開いたらサイドバーにある[Settings]を選び、その中にある[App Preferences]で[Language]を「Japanese」に切り替えるとメニューなどが日本語に切り替わります。

リモートデスクトップやImmersedの表示速度ですが、作業内容によっては微妙な遅延が発生することもありましたが、ゲームや動画編集でなければ問題ない程度です。筆者のようにWebブラウジングで調べ物をしながら原稿を執筆する程度の作業内容であれば問題なく使えます。

一方、Apple Vision Proでは追加のアプリは不要です。標準機能としてMacの仮想ディスプレイが用意されており、ディスプレイサイズを「ワイド(21:9)」や「ウルトラワイド(32:9)」に変更することで、広大な作業スペースを手軽に利用できます。

MacBookの画面を見つめると表示される[接続]ボタンをクリックするだけで仮想ディスプレイが使える手軽さはApple Vision Proならではの強みです。
visionOS 2.2ではウインドウ上部の[Mac仮想ディスプレイ]をタップするとメニューから[標準][ワイド][ウルトラワイド]が選べます。
アスペクト比32:9のウルトラワイドの迫力をご覧ください。これなら拡張ディスプレイを横に並べなくても仮想ディスプレイ1つで広大なデスクトップが手に入ります。

Apple Vision Proがベストだけどコスパを考えるなら「Meta Quest 3S」

最終的に、仮想ディスプレイ環境のクオリティでは、Apple Vision Proに軍配が上がります。しかし、その価格は60万円と非常に高額です。一方で「Meta Quest 3S」は約5万円という手頃な価格で、必要十分な仮想ディスプレイ環境を提供してくれます。

多少、パススルーの見え方は粗くなりますが、手軽にデスクトップスペースを拡張できる「Meta Quest 3S」と「リモートデスクトップ」の組み合わせがコストパフォーマンス的にはベストでしょう。コスト的にも大型の外部モニタより安価です。

予算に余裕があるならApple Vision Proがベストな選択ですが、コストを抑えたい方には「Meta Quest 3S」と「リモートデスクトップ」の組み合わせが最適です。大画面の外付けモニタよりも安価で、手軽に仮想空間を活用できます。


もし、仮想空間でMacBookのデスクトップを拡張したいと考えているなら、「Meta Quest 3S」はもっともコストパフォーマンスに優れた選択肢でしょう。ぜひ試してみてください。

おすすめの記事

著者プロフィール

松山茂

松山茂

東京の下町・谷中を拠点として日々カメラと猫を愛でながら暮らすフリーライター。MacやiPhone、iPadを初代モデルから使ってきたのが自慢。

この著者の記事一覧