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初心者にもやさしい液タブのエントリーモデル「Wacom One」の描き心地は? iPad愛用者が比べて試してみた!

著者: 笠井美史乃

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初心者にもやさしい液タブのエントリーモデル「Wacom One」の描き心地は? iPad愛用者が比べて試してみた!

Wacomの液晶ペンタブレット(液タブ)といえば30万円はするプロ用機材…という印象は昔のもの。今は初心者にもやさしい「Wacom One」というシリーズがあるのです。どのあたりが初心者向けなのか、また描き心地はどうなのか、実際に絵を描いて試してみました。

接続はケーブル1本! macOSの「入力監視」設定は要チェック

今回使用したのは「Wacom One 液晶ペンタブレット 13 touch」モデル。画面サイズは13.3インチでアスペクト比16:9、解像度1920×1080のフルHD液晶です。

約0.9kgと軽量で、サイズ感の割に取り回しがしやすい印象。使わないときは縦置きノートPCスタンドなどに収納も可能です。

筆者が使用するMacBook Air(M3)との接続はUSB-Cケーブル1本だけでOK。さまざまなケーブルや電源タップが混み合うデスク周りでも設置が容易です。十分な給電ができるUSB PD(Power Delivery)のありがたみを感じます。

次に、ペンタブレットドライバをダウンロードし、インストールすれば準備完了。ただし、macOSの場合このままではペンタブレットが正しく認識されない場合があるので要注意です。使い始める前に次の設定を確認しましょう。

「システム設定」→[プライバシーとセキュリティ]→[入力監視]を開き、[WacomTabletDriver]をオンにしましょう。これでペンタブレットが認識されます。

MacBook Airに接続、ディスプレイ設定で2通りの使い方が可能

Wacom Oneは、macOSからは外部ディスプレイとして認識されます。外部ディスプレイは[ミラーリング]または[拡張ディスプレイ]に設定して使用します。

「システム設定」→[ディスプレイ]を開き、「使用形態」から[DELL P2419HC(筆者のメインディスプレイ)をミラーリング]または[拡張ディスプレイ]を選択。拡張ディスプレイにする場合は[配置]をクリックし、2台の位置関係(上下左右)を設定します。
[ミラーリング]にした例。メインディスプレイと同じ画面がWacom Oneに表示されます。
[拡張ディスプレイ]に設定した例。資料を広げて描いたり、動画を見ながら描き方を学習したりするのにも最適です。
拡張ディスプレイにした場合、Wacom Oneの「マッピング画面切り替え」機能を使うと、一時的にメインディスプレイをWacom One上から操作可能になります。

デジタルペンもメニューもカスタマイズ可能、バンドルアプリも豊富

付属のWacom Oneスタンダードペンは、オプションでフロントとリアをお好みのカラーに組み合わせられるユニットも提供されています。パイロットの「Dr.Grip」とのコラボや、ステッドラーの鉛筆「ノリス」とのコラボで開発されたデジタルペンも使用でき、文具好きの心をくすぐります。

“ペンタブ専用デジタルペン”の印象を変えるさまざまなデジタルペン。オプションユニットには、木製の軸もあります。もちろんほかのWacom製品と同じく、デジタルペン先の素材も選べます。

このほか、背面を保護するクリアカバーもあり、お好みのステッカーや写真を挟むなど本体のカスタマイズも楽しめます。

また、Wacom Oneには豊富なバンドルアプリが付属しています。簡単にセッティングでき、すぐに使い始められるのが初心者にやさしいポイントです。

CLIP STUDIO PAINT PRO(以下、クリスタ)」(3カ月ライセンス)をすぐに使い始められるのは大きなポイント(別途、セルシスのアカウント登録が必要です)。
画像:Wacom

滑らかで自然な描き心地は、初心者向けモデルでも妥協なし

実際に描いてみたものがこちらです。今回はクリスタを使用しました。Wacom Oneは画面の比率が16:9なので、パレットの数がとにかく多いクリスタでも描画領域に狭苦しさがありません。

CLIP STUDIO PAINT PROの画面。このレイアウトで描画領域はおおよそA5サイズ(横)実寸。

デジタルペンの感触がとても自然で、ペン先がわずかに沈み込むためか長くゆるやかな曲線も滑らかに引くことができます。ペンの筆圧レベルは4096段階で、「筆圧検知レベルの調整」を低めに寄せても十分に幅広い描画が可能なため、筆圧が低めの方も無理せず描き続けられます。

また、今回使用した13.3インチモデルはマルチタッチ対応で、ピンチやスワイプ操作でズームやスクロール、回転が可能です。ですが、筆者はしばらく試した後にタッチ機能はオフで使うことにしました。タップやスワイプで行う操作を「キーボードの修飾キー(option、cmd、controlなど)+ペン操作」に割り当てる、“板タブ”のスタイルです。

これにより、常時ショートカット操作に使っている左手をタッチの度にキーボードから離す必要がなく、操作効率がアップしました。また、ペンを持つ右手を画面に置いた際に誤検知でペイントされてしまうこともありません。左手用デバイスを愛用する方や、ペンタブレット用グローブが苦手な方にはこの設定がおすすめです。

液タブを使いこなすには、アプリ側のカスタマイズと合わせて細かな試行錯誤が必要ですが、自分なりのスタイルを追求できる柔軟さは魅力でもあります。

タッチ機能のオン/オフは本体上部のスイッチで切り替え。今回はオフにして使用しました。

iPad Proとはどう違う? 環境に応じた選び方

筆者は日頃、12.9インチiPad Pro(M1)を使用しています。使い勝手と描画の感触について比べてみました。

まず使い勝手の面では、Wacom Oneはあくまで本体がMacなので、どのアプリケーションも操作でき、ファイル管理も容易である点が大きな違いです。Photoshopでマスクを切ったり、PDFに校正を書き込んだりする用途はもちろん、日常的にファイルを使うさまざまな作業に「描く」操作をシームレスに取り入れることができます。また、本体・ペンともに充電切れ・充電忘れを気にせず使えることも地味に良い点だと感じました。

Adobe Illustratorのペンツールとライブペイント機能で描画。マウスでは描きづらい自然な曲線を引けます。

クリスタの使用感について言えば、Mac版とアプリ版で機能的な違いはないのですが、画面の縦横比の違いによりWacom Oneのほうがより描画エリアを広く使用できます。特にカラーパレットを常時出しておきたい場合に差が感じられます。

iPad Proのアスペクト比はおよそ4:3。筆者の場合パレットは片側に配置し、切り替えながらやり繰りしています。

描画感については、人によると思いますが、個人的には筆圧をかけるとペン先がわずかに沈むWacom Oneの感触に、描くことの“心地よさ”を改めて思い出したように感じました。使っているうちに道具が身体に馴染んでいくような感覚があり、“描くための専用機”であることが実感できます。一方でiPadは、道具というよりもっとダイレクトに紙とペンのような、それ自体が“画材”であるような感覚です。ここは本当に、人によって感じ方も好みも違うと思います。どちらが良い・悪いということはありません。

デジタルイラストを描く道具として、iPadか液タブかで迷っているなら、描き心地より条件で選んだほうがいいかもしれません。iPadはそれ1台+Apple Pencilで完結するのが強みです。しかし、もしパソコンをお持ち(か、買う予定)なら、Wacom Oneも機能面・価格面で有力な選択肢になるでしょう。iMacをお使いなら立派な液晶を活かして板タブを選ぶのもおすすめです。

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著者プロフィール

笠井美史乃

笠井美史乃

アプリ、サービス、マーケティングなど、IT・ビジネス分野で取材・執筆・編集を行う。マイナビニュースでは2013年開始の連載「iPhone 基本の『き』」をはじめ、iPhone・iPad・Apple WatchなどAppleデバイスのハウツーやレビューを担当。雑誌「Web Designing」「Mac Fan」、その他企業オウンドメディアなどで執筆中。

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