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トップセールスの“スマホ営業”ノウハウを共有ナレッジに変えるSaas型キーボードアプリ「TeamBoard」。開発の背景と展望は? 創業者・青木太志氏、特別インタビュー

著者: 栗原亮

トップセールスの“スマホ営業”ノウハウを共有ナレッジに変えるSaas型キーボードアプリ「TeamBoard」。開発の背景と展望は? 創業者・青木太志氏、特別インタビュー

営業活動におけるスマートフォンの活用がますます重要視される現在、業務効率化とコンプライアンスの両立が課題となっている。そんな中、株式会社アンビシャスグループが提供する「TeamBoard」は、その新たな解決策として注目すべきSaaS型のキーボードアプリだ。代表取締役社長の青木太志氏に、同社設立の背景とTeamBoardの利点と今後について話を聞いた。

TeamBoard

【開発】
Ambitious Group
【価格】
無料

既存の営業支援システムとはまったく異なるアプローチ

多くの企業には、自社の製品やサービスを顧客に提案し、販売につなげるための業務にあたる「営業部門」が存在する。営業職には、顧客とのコミュニケーションや価格交渉などの関係構築力が求められるが、業種や商材、顧客層によって営業の形態や手法はさまざまだ。また、インターネットやデジタル技術の普及によって営業スタイルは変化し、さらに多様化しているのが実状である。

営業の効率化や可視化を支援するソリューションは、SFA(営業支援システム)やCRM(顧客情報管理)の導入が一般的だ。しかし、ITシステムのカスタマイズや運用には多額のコストがかかることが多い。しかも、営業現場にとってはシステムへの入力作業が増え、作業時間や負担がかえって長くなるリスクも存在する。また、システム利用に慣れる時間やストレスも課題だろう。

こうした従来の営業支援システムとはまったく異なるアプローチを提案するのが、株式会社アンビシャスグループが提供する「TeamBoard」だ。サービス開始から約1年間で有料プランの契約ユーザ数が1万人を超え、大手の保険会社やハウスメーカーが導入するなど注目を集めている。

投資家から起業家へ。新たな価値の創造と株式上場への挑戦

その画期的な仕組みを説明する前に、同社の創業者である青木太志氏の経歴について触れておきたい。

青木氏は1999年生まれの24歳。米国の高校在学中に株式投資を始め、独学で開発した運用システムで得た資金をもとに、2022年に日本での起業に挑戦した。

「ゲームと投資から多くのことを学びました。特に、限られた情報をもとに最適な戦略を考えていく思考法は、ビジネスにも応用できると感じています」(青木)

青木氏は、iPhoneに代表されるスマートフォンに焦点を当てて、人々の働き方を強力にサポートするツールの開発を進めた。

「投資に専念するのもひとつの生き方です。しかし、私の場合は研修会社を経営している父を見て育ったこともあり、事業によって新たな価値を生み出し、株式上場などで社会に貢献する道を選びました」

株式会社アンビシャスグループ代表取締役CEOの青木太志氏。若き起業家が描く新たな営業支援ツールが、業界で注目を集めている。

リアルな課題感から得た「キーボードアプリ」という発想

起業当初、青木氏はビジネス向けのクラウドサービスをSaaSとして提供しようと考えていた。しかし、知名度や資金の乏しいスタートアップでは、他社が容易に模倣できる事業アイデアで生き残っていくことは難しいと感じていたという。

「最初からTeamBoardのコンセプトを考えていたわけではなく、実際にはこれが3つ目のアイデアです。開発にあたり、特に営業現場で働く人たちの声を重視しました。父の事業の関係で保険や不動産業界をはじめとする方々と接する機会があり、詳しくお話を伺っていく中で、現在の営業活動のプロセスには解決すべき2つの大きな課題があることに気づいたのです」

多くの営業職が直面している課題として、顧客へのメールやメッセージの送信や資料作成に多くの時間が割かれている実態がある。一方、管理部門の視点では、トップセールスが築き上げた効果的なメッセージの送り方や業務フローなどのノウハウが「暗黙知」として属人化しやすく、営業チーム全体で共有するインセンティブが働きにくいというのも問題だ。さらに、スマートフォンを利用した業務の普及により、営業現場でのコンプライアンス状況が従来よりも把握しにくくなっている問題も浮上している。

これらの課題は、前述のような営業支援システムでカバーすることも可能だろう。しかし青木氏は、スマートフォンならではの機能が活用できることに気づいた。それは、iPhoneやiPadに対し、キーボードアプリとしてサービスを提供することだった。

アプリを「横断」し、システムの一部として機能するキーボードの特性

キーボードアプリが一般的なアプリと異なる点は、単体の機能として動作するのではなく、iOSやiPadOSのシステムの一部として機能するところにある。

具体的には、「設定」アプリの[一般]→[キーボード]の項目に「他社製キーボード」として追加される。本来は標準キーボードでサポートされていないキー配列や辞書機能を追加したり、入力操作を補助したりするものだ。また、通常のアプリと異なり、どのアプリが前面に表示されていてもキーボードの切り替えメニューから機能を呼び出せる。

「LINEで連絡業務を行う営業現場は多いのですが、顧客によっては別のメッセンジャーやメールアプリを使うこともあります。TeamBoardでは、キーボードから定型文や営業資料などをすぐに呼び出して、どのプラットフォームに対してもワンタップで送信できるのです」

TeamBoardは、キーボードの切り替えメニューから呼び出せる。アプリを問わず、適切なタイミングで必要な資料や情報を効率的に送信可能だ。

現在TeamBoardに登録できるコンテンツは、自己紹介や連絡先、顧客との定型的なやりとりなどのテキストデータ、料金表や商品イメージなどの画像、営業資料や契約書などのPDF、関連するWebサイトやSNSへのリンクなどがあり、登録する内容は自社や営業チームごとにカスタマイズ可能だ。

組織の成長を妨げる「属人化」の抑制にも役立つ使い方

さらに、有料のチームプランに加入することで、営業活動で利用頻度の高いデータを集約して共有できる。管理部門が用意したマニュアルや業務フローを配布することで、営業方法の効率化と属人化を防ぐこともできるだろう。そして、Web版のダッシュボードではチームメンバーや勤怠の管理、営業成績や資料の分析などが行えるため、営業活動全体の改善に役立てられる。

「どのアクションが効果的なのか、データで可視化できます。また、営業担当者それぞれのスキルに依存することなくチーム全体の業務効率を高められるので、全社的な成果を向上できるでしょう」

青木氏は、TeamBoardを単なる業務効率化ツールにとどまらず、営業に関わる社員一人ひとりが業務に対する理解と意識を高め、自らの成長のために役立ててほしいと語る。

「アプリの基本的な機能は無料プランでもご利用いただけます。あらかじめ用意されている業種ごとのテンプレートを参考に、まずは自分なりの知識やノウハウをTeamBoardにまとめて使ってみることで、新たな気づきが得られると思います」

有料のチームプランに加入すると、営業活動に必要なさまざまな資料やテンプレートを独自にカスタマイズでき、フォルダに分けて整理することもできる。
Webのダッシュボード画面では、「TeamBoard」アプリのカスタマイズに対応。キーボードからアクセスできる資料の追加やメンバーの管理、営業活動のアナリティクスがリアルタイムに反映されるため、自社の営業スタイルに最適化し、有効活用することでPDCAを加速できるだろう。

※この記事は『Mac Fan』2024年11月号に掲載されたものです。

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著者プロフィール

栗原亮

栗原亮

1975年東京都日野市生まれ、日本大学大学院文学研究科修士課程修了(哲学)。 出版社勤務を経て、2002年よりフリーランスの編集者兼ライターとして活動を開始。 主にApple社のMac、iPhone、iPadに関する記事を各メディアで執筆。 本誌『Mac Fan』でも「MacBook裏メニュー」「Macの媚薬」などを連載中。

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