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爆笑問題・太田光インタビュー/Macとの出会い、そして今Appleに思うこと 「Macはおもちゃみたいで、そこに楽しさがあったんだよね」

著者: 関口大起

爆笑問題・太田光インタビュー/Macとの出会い、そして今Appleに思うこと 「Macはおもちゃみたいで、そこに楽しさがあったんだよね」
太田光
1965年5月13日生まれ、埼玉県出身。お笑いコンビ・爆笑問題のボケ担当。所属事務所が主催する2カ月に一度の「タイタンライブ」には毎回出演。政治から芸能界までさまざまな社会現象を斬る漫才で、幅広い世代から支持されている。漫才、コント、バラエティ、MC業のほか、執筆活動も精力的に行う。

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PowerBook 540でMacデビュー

──1998年10月1日発売号以来の登場となるのですが、さすがに当時のことは覚えてらっしゃらないですよね?

いや、覚えてる覚えてる。場所がね、すごいところで。

──かなり険しい草むらの中でポージング撮影させていただいて…。パソコンのことは全然わからない」という田中さんと、当時からMacを使われていた太田さんという関係性は今も変わらずのようですね。

そうですね。でも、今はスマホのあるなしが大きいよね。俺はスマホ持っていないけど、田中は結構使ってるし。

爆笑問題のお二人が登場した『Mac Fan』1998年10月1日発売号。

──スマホを購入しないのはなぜですか?

Macを常に持ち歩いてるんで。

──拝見するに、16インチと大きいサイズのMacBookプロかと思います。持ち歩くにはかさばるのでは、とも思うのですが。

まあでも、ほとんど車移動だから。Wi-Fiルータと持ち歩いて、いつでも使えるようにしてます。

──当時の太田さんはPowerBook 540を使っていて、そのデザイン性を誉めてらっしゃいました。それから約26年経ちましたが、Macのデザインの変遷をどう見ていますか?

PowerBookは手を置くところ(パームレスト)がなだらかでそれが気に入っていたんだけど、今のデザインになってから角っぽくなって、どうしてこうしたんだってずっと思ってるんだよね。長い時間使っていると痛くて。

──逆に、今のデザインで気に入っているところはありますか?

まあでも、基本的にシンプルなところは変わらずいいですよ。なんていうんだろう。“いわゆるパソコン”みたいにゴツゴツしていないところ。

──Mac以外のパソコンも使ったことはあるのでしょうか。 

ほとんどないですね。最初に買ったのがMacで、それからずっと。その前にワープロは使ってたけど。

ラジオの現場でMacと出会う

──そもそもなぜMacを?

まだノートパソコンなんてほとんどみんな持っていない時代だったけど、付き合いのあった雑誌の編集者がウィンドウズのノートパソコンを持ってたんですよ。それを見て、なんだこれ、そんな便利なものが出てきたのか!って驚いて。Macにしたのは…当時「セント・ギガ(St.GIGA)」ってWOWOWがやってた衛星放送によるラジオがあったんですけど、知ってます?

──いや…存じ上げないですね。

たしか、任天堂が出した「サテラビュー」っていう機械をスーパファミコンにつけて、それをBSのチューナとかに接続すると聞けたんだけど。「ゲームが空から降ってくる」っていうコピーでね。今から考えりゃもう、すごく新しいことをやってた。

──サテラビューの発売が1995年のようなので、今考えると“早すぎた”印象もあります。

そうそう。いろんなコンテンツが配信されている中で、爆笑問題もラジオ番組を担当していて。ほかにもタモリさんとか、泉谷しげるさんと浜崎あゆみとか。

──ビックネーム揃いですね。

内田有紀とか伊集院(光)もやってたな。で、俺らの番組は帯だったの。だからしょっちゅう収録しに行くんだけど、セント・ギガの社員たちはみんなMacを使って作業してたんです。

──それがMacとの出会いになると。

そうですね。

太田光が思う“Macのすごいところ”は?

──Mac Fan 2024年7月号では、さまざまな専門家にMacの“すごいところ”を語っていただく記事が掲載されるのですが、太田さんはMacのどんなところが“すごい”と思いますか?

やっぱり簡単さですよね。単純さというか。使っていて困ることもほとんどないし。Windowsとか、Mac以外のパソコンていうのはなんていうのかな。俺からすると、こう1枚、作ったものの上にMac的なものを乗っけてるような感じがするんですよ。嘘っぽいんだよね。そもそも、アイコンがあって、それをクリックして操作するみたいなことってアップルが一般的にしたものじゃない。で、Windowsはそれを真似したわけだから。一例だけどね。そういうのもあって、なんかワンクッションを感じちゃう。

──では、太田さんは“一生Mac宣言”ということでいいですか?

そうですね。でも、逆にアップルがどこまでもつの?  Macを作り続けるの?って心配のほうが勝ります。PowerBookを使っていたころなんて、アップルはもうやばいんじゃないか、みたいなことを言われていたからね。今はiPhoneもあって調子いいみたいだけど、それも売り上げが頭打ちなんて話も聞くし。

──最近では、アメリカでビジョン・プロ(Vision Pro)というゴーグル型のデバイスもリリースしました。

俺はあんまり興味がないね。このMacで完成してるって認識だから。俺もう、これ以上の進化はしなくていいって思ってるくらいなんですよ。

──それもまたMacの“すごさ”と言えそうですね。

うん、なくならなければそれで十分。スマホに負けないで生き残ってほしいですね。この雑誌(Mac Fan)もよく残ってくれてるな、なんて思ってさ。

──ありがとうございます。太田さんのように、ずっとMacユーザで居続ける方々のおかげです。

そっかそっか。雑誌自体がもう、減ってきているからね。このリンゴマークとか、芸能人ならMacでしょ、みたいなカッコよさに惹かれたのもあるんですよ。アーティストが使ってる感じ。当時から芸術とか映画とかテレビの現場ではMacが主流だったんだよね。ビジネス然としてないというか。おもちゃみたいで、そこに楽しさがあったんじゃないかな。

2冊連続”大ひんしゅく”の『芸人人語』

──では、ここからは太田さんの著作『芸人人語』の新刊について伺っていきます。シリーズ3作目とのことで、既刊の2作は「鋭い切れ味」がコピーになっていますが、読者は変わらずその切れ味を期待していいですか?

そうですね。2冊目が「大ひんしゅく編」って銘打っているから3冊目はそうならないだろうと思ってたんだけど、政治と宗教絡みで炎上したもんで、また「大ひんしゅく編」になっちゃった。

──さまざまなテーマを扱っている『芸人人語』ですが、3作目に収録された内容で、太田さんが特に印象的なものはありますか?

これ1つっていうと難しいね。話題が本当に尽きなかったから。1冊目を出したときはコロナの話題が中心で、もうこれ以上に語ることの多い年はもうないだろうなって思ってたんだよ。でも、その政治と宗教の問題あり、ロシアの戦争もありでね。

──執筆するテーマはどのように決めているのでしょうか。

その時々の、やっぱり旬なものですね。

──1つのテーマをすごく深掘りされているので、執筆にかなりの時間がかかりそうですよね。

うん。だから大体締め切りは守ってない。引き延ばすだけ引き延ばすから。

──大体どれくらいの時間をかけて?

1テーマで4、5日はかかるかな。移動とか空き時間を使って書いているからっていうのもあるけど。

──基本的にはテーマが時事ネタなので、書いている途中に別のいいネタが入ってくることもありそうです。

それはありますね。なので、書きながら入れ込んだりすることも多いです。

爆笑問題が時事ネタを扱うワケ

──爆笑問題といえば、漫才のネタも時事ネタを扱うことが多いですよね。その理由を伺えますか?

ネタが尽きないってのが一番大きいかな。たとえば今M1とかで出てくる若手だと、設定を作り込んでいるのが多いじゃないですか。お前お巡りさんやって、俺は通行人やるから、みたいな。でもネタを作り続けていると、ああいうのがもう考えつかなくなっちゃう。まあ、俺はめんどくさいんだよね考えるのが。だったら世の中で起きていることを使ったほうがいいなって。大谷が打ちましたねーっていうところから入ると、もう説明がいらないからお客さんもネタに入りやすいし。

──数十年にわたって新ネタを作り続けている故のお悩みでもありますよね。

うーん、まあそうですね。でも時事ネタを扱うデメリットもあって、1回やるともう二度とできないんですよ。鮮度が重要だから。

──『芸人人語』で時事ネタを掘り下げることが、漫才のネタ作りに活きることもありますか?

どうなんだろうね。まあでも深掘りしてるからこそ、真面目に語ったものをこっちにズラせばウケるかも、みたいな発想はあるかもしれない。

──最近はユーチューブでコントを配信されていますが。

ユーチューブのはもう、くだらない内容なんだけど、もうちょっとかっちりしたストーリー性のあるものもライブでやったりしてるんですよ。その場合は小説っぽいというか、また漫才のネタとは発想が違う感じかな。

──最後に、太田さんの今後の展望を教えてください。

とにかく純粋なバラエティみたいなものをやりたいですね。漫才ありコントあり、歌あり、トークありっていう、全部ひっくるめた番組。あとは今回の本もそうだけど、爆笑問題としては子どもからお年寄りまで皆に楽しんでもらうことを目指しているから、今後もそうあり続けたいと思っています。

写真:長屋和茂、ヘアメイク:宮川慶子、スタイリスト:植田雅恵、取材・文:関口大起/編集部

『芸人人語 旧統一教会・ジャニーズ・「ピカソ芸」 大ひんしゅく編』

価格:1760円

著:太田光

出版:朝日新聞出版

人間は誰しも未熟で不完全だ。だからこそこの世の中は、未来はいつも面白い─。相変わらず朝日新聞「天声人語」より深くて鋭い! 「ピカソ芸」炸裂の20編。

著者プロフィール

関口大起

関口大起

『Mac Fan』副編集長。腕時計の卸売営業や電子コミック制作のお仕事を経て、雑誌編集の世界にやってきました。好きなApple Storeは丸の内。Xアカウント:@t_sekiguchi_

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