※この記事は『Mac Fan』2018年2月号に掲載されたものです。
改めて言うことではないが、ボクは美味しいものが大好きだ。だから、こんなにも太っているのだろう(笑)。
年に何度かは、気合を入れて「Florilege」「虎白」「Crony」「Quintessence」に顔を出す。大阪、京都にも好きな店が何件かある。いずれも世界中に名前が響くお店だ。予約を取るのが非常に困難で、世界中からレストランの予約日に合わせて来日する外国人も多い。
実は、ボクはこんな一流店に行くといつも落ち込む。ため息が出て、嫌悪感100%超。ぐったりと数日間反省モードになるのである。
先日も、赤坂の「TAKAZAWA」に顔を出した。この店の料理は芸術だ。そのせいか、世界の数々の賞を受賞。さらに、自然の中にレストランをつくり料理を振る舞うDINING OUTでも活躍中だ。
常に予約は数カ月。お金が続く限り、毎月でも行きたい店だ。とにかく料理一品一品のアイデアに圧倒される。「ここまで料理のことを考えているんだ」「すごすぎる」という点である。サプライズに毎回涙する。
美術館で絵画や彫刻などを見てもすごいと思う。ミュージシャンのコンサートも感動することが多い。だが、料理は感動の中で頂点だ。
今回も目で楽しみ、香りを楽しみ、さらにシェフの会話で楽しみ、ワインとのペアリングを楽しむ。
シェフの高澤義明さん、マダムの明子さんの話は料理を加速的に美味しくする。iPhone 8 Plusのポートレートモードも炸裂だ。もう芸術品だ。
サプライズも次々と起こる。詳細は、ぜひとも食べて感動してもらいたい。この日もボクら以外のお客さんは外国人だった。ハリウッドのスターも見受けられた。また某ブランドの社長の顔も。ボクが一番普通の人間だろう。分不相応とはこのことだ。だが、それが自分に課していることなのだ。
TAKAZAWAは、昨年から極端に料理の格が上がった。ブレーキというか制約がなくなった。松茸もトリフも最上級のものばかりだ。贅沢だが、それだけではない。つまり、自分の料理の腕に素材がついて来られなくなったのだろう。だから、最上級の素材で妥協のない料理が並ぶのだ。
もちろん価格も上がった。ボクはケチなので、一口一口を忘れないように感じる。そして感動しながら、「ボクの仕事はまだまだ」「世界からは仕事が来ないな」「最上級の仕事ができているのだろうか?」などなど疑問が並ぶ。そして、しばらくの間、悩むのだ。悩んで落ち込むのだ。
「ボクは、もっとできることがあるのではないか?」「もっと加速できるのではないか?」「もっと別のアプローチがあるのではないか?」「もっと上を目指せるのではないか」と落ち込む。そして、翌日から「あの感覚を忘れるな」「あの感動を伝えよう」と全力疾走。
全世界から仕事が舞い込む男になろうと決めるのだ。もっといいアイデアで世の中を変えられると、自分自身と誓うのだ。
名を挙げた店の料理人は超一流だ。ボクも超一流になりたいと心に決める。払ったお金の何倍も反省し、明日のアクセルにする。それが、超ケチなボクの贅沢なひとときなのだ。一流を感じるために、また店の扉を開けたい。
著者プロフィール
野呂エイシロウ
放送作家、戦略的PRコンサルタント。毎日オールナイトニッポンを朝5時まで聴き、テレビの見過ぎで受験失敗し、人生いろいろあって放送作家に。「元気が出るテレビ」「鉄腕DASH」「NHK紅白歌合戦」「アンビリバボー」などを構成。テレビ番組も、CMやPRをヒットさせることも一緒。放送作家はヒットするためのコンサルタント業だ!と、戦略的PRコンサルタントに。偉そうなことを言った割には、『テレビで売り上げ100倍にする私の方法』(講談社)『プレスリリースはラブレター』(万来舎)が、ミリオンセラーにならず悩み中。