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旅を仕事にする方法(前編)/四角大輔の「Mobile Bohemian 旅するように暮らし、遊び、働く」 【第14話】

著者: 四角大輔

旅を仕事にする方法(前編)/四角大輔の「Mobile Bohemian 旅するように暮らし、遊び、働く」 【第14話】

2016年も、さまざまな移動手段を駆使してアジア、欧州、中北米を旅した。合計してみると約3カ月で、19か国27都市を回ったことになる。

旅先で見たもの、感じたことを、画像や動画、テキストにして、現地からリアルタイムにInstagramで発信していると、「長いお休みがとれていいですね」というコメントがときどき書き込まれる。

多くの人にとっての「旅」とは、極上のオフであり、休暇であり、趣味だろう。ぼくにとっては、〝究極の遊び〟でありつつも、〝究極の仕事〟でもあるのだ。そんなぼくの、かなり特殊な旅のプランニング方法と、それをどうやって仕事につなげているかを、初めて公開したいと思う。

まずぼくは、行きたい街を決める。ここで重要なのは、国ではなく「街」である点。

国境というのは、近代に入って政治的、人為的に引かれたものが多い。だから、ぼくにとって、国の境界線というものは非常に曖昧な存在。同じ国でも、街によってまったくカルチャーが違う。米国のような広大な国においてはもちろん、日本みたいに小さな国でもそれは同じだ。

たとえば、沖縄、熊本、京都、函館の4都市を比べてみると、言葉も、食べ物も、気候も、風景も、皆異なっている。大好きなイタリアやデンマークという他の小国も同様で、「街」という単位はそれほど強烈な個性を持っているのだ。

次にテーマを決める。ぼくはこれまで、「クリエイティブ」「アート」「遺跡」「自然」「オーガニック」といった複数のキーワードを持って旅をしてきた。そして、これらを軸にSNSやメディアで発信している。これらキーワードにまつわる発信の中でも、最近になって圧倒的に反応がよくなってきたのが、「オーガニック」だ。

ある意味、ほかのものは多くの人の旅にも設定されうるテーマだから、ぼくがそれらを軸にした旅を表現したとしても、あまり際立たないのである。もちろん「オーガニック」という言葉も、最近ではかなり定着してきた。だが、ぼくが〝長年に渡ってこのテーマを追求してきたこと〟と、ぼくが〝男性であること〟が掛け合わされることで、ほとんど競合がいなくなる。

しかし、一口に「オーガニック」といってもその範囲は広く、その中でどのカテゴリを選ぶかで、結果は大きく変わってくる。ぼくの場合は、「ベジタリアン」「アーユルヴェーダ」「ビオワイン」「カフェ」「ファーマーズ・マーケット」「ソイラテ」「コールドプレスジュース」といったところか。そうやって、ぼく自身が本当に興味のある、細分化されたテーマを深掘りし、掛け算させるスタイルをとることで、ぼくの発信がより独創的となるわけだ。

おそらく、リアルなコミュニティしかなかった昔であれば、ぼくは周りの人たちから「単なるマニアックな変人」と称されて終わっていただろう。だが、SNSをはじめとするネット上のセルフメディアの台頭で、状況は一変。極端に狭い範囲に関するものでも、世界中に散らばる潜在的な共感者から反応を得ることができようになった。

つまり「本当に好きなことを追求する変人」であればあるほど、生きやすい時代になったということだ。(次号へ続く)

滞在先では必ず公共自転車を利用する。9月のパリにて。(Photo:Daisuke YOSUMI’s iPhone)

※この記事は『Mac Fan 2017年2月号』に掲載されたものです。

著者プロフィール

四角大輔

四角大輔

作家/森の生活者/環境保護アンバサダー。ニュージーランド湖畔の森でサステナブルな自給自足ライフを営み、場所・時間・お金に縛られず、組織や制度に依存しない生き方を構築。レコード会社プロデューサー時代に、10回のミリオンヒットを記録。Greenpeace JapanとFairtrade Japanの日本人初アンバサダー、環境省アンバサダーを務める。会員制コミュニティ〈LifestyleDesign.Camp〉主宰。ポッドキャスト〈‪noiseless‬ world〉ナビゲーター。『超ミニマル・ライフ』『超ミニマル主義』『人生やらなくていいリスト』『自由であり続けるために 20代で捨てるべき50のこと』『バックパッキング登山大全』など著書多数。

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