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楽しい“マイクラ学習”の実践例

著者: 神谷加代

楽しい“マイクラ学習”の実践例

実践例A 一緒に建造物を作ると会話が弾む!

共同建築による協働学習

日本の教育機関におけるMinecraft EEの活用事例でもっとも多いのは、子どもたちが同じワールドに入り、ひとつの建造物や世界を作りあげる共同建築だ。「自分たちの学校を作ろう」「未来の街を作ろう」「歴史建造物を再現してみよう」といったテーマが多い。その理由は、Minecraftの一番の良さである“自由なものづくり”の魅力を損なうことなく、子ども同士のコミュニケーションやコラボレーションを生み出せるからだ。

佐賀県は交流事業として、北海道の子どもたちとMinecraft EEを活用した交流学習を行った。佐賀藩士「島義勇」が札幌の都市開発に携わったことから、佐賀県の子どもたちが札幌を訪れ、同市の都市開発や歴史について学んだあと、Minecraft EEで未来の街づくりに挑戦。偉人による街づくりのすごさに触れたあと、自分たちがデベロッパーとなって未来の街を作る。子どもたちは、ワールド内の区画された土地に、市役所、病院、美術館など街に必要な建物を作った。

東京都立三鷹中等教育学校では、パソコンクラブの部活動でMinecraft EEを活用し、校舎を再現した。目的は、文化祭の来場者に学校の中をもっと知ってもらうためだ。「皆でプログラミングを用いて作ったが、縮尺が合わずに苦労した」と生徒の一人は言う。チーム全員が同じゴールを描く難しさを実感し、設計図やコミュニケーションの重要さに改めて気づいたという。

東京都立三鷹中等教育学校

三鷹中等教育学校のパソコンクラブは自分たちの校舎を再現。とあるイベントでは、完成した校舎を使用して複数人でケイドロを楽しむワークショップも行われた。

佐賀県&北海道

佐賀県と北海道の子どもたちが交流して行われた未来の街を作るプロジェクト。子どもたちは都市開発の歴史について学んだあと、Minecraft EEで自分たちも街づくりを体験。区画された土地に病院や市役所などを作った。

実践例B 教え合うことで達成感が味わえる!

プログラミング学習

Minecraft EEではコードビルダーを使うことでプログラミングができる。その中で教育事例として多いのはマイクロソフトが提供する「メイクコード(MakeCode for Minecraft)」を活用した実践だ。

徳島県みよし町は、地域の小学4年生から6年生を対象にMinecraft EEを使ったプログラミングのワークショップを開催。「エージェント」と呼ばれるキャラクターを座標で示された目的地までプログラムで動かすのが課題だ。ワールド内に設置された黒板には、目的地となるゴールが、「たて6、よこ8」の平面座標や「たて6、よこ5、高さ4」の空間座標で指示された。子どもたちはスタート地点である「たて0、よこ0」の位置から、どうすれば一番はやく目的地までエージェントを動かすことができるかを考えた。

小学生のプログラミング学習は、子どもによってはコンピュータの操作やタイピングも初めてという場合があるが、Minecraft EEを使えば子どもたちのコミュニケーションが活発になり、教え合いも生まれやすい。このワークショップを通して、子どもたちは何を得られたのか。感想を聞くと「達成感があった」「エージェントが思いどおりに動いて楽しかった」といった好意的な感想が多く寄せられた。ほかにも「学校の授業でMinecraftを使うときは、自分が教える役になりたい」といった頼もしい感想もあったという。

徳島県みよし町

小学生向けプログラミングのワークショップでは、エージェントと呼ばれるキャラクターを目標となる座標位置まで動かすプログラムを考えた(図上)。小学生たちが取り組んだMincraft EEを使ったプログラミングの様子(図下)。左半分がプログラムを組み立てる「MakeCode for Minecraft」の画面で、右半分がMinecraft EEの実装画面となる。

実践例C 社会と図工など教科を横断して取り組める

課題解決型学習

あらかじめ目的やルールが存在せず、プレイヤーが自由であるというMinecraftの特性は、課題解決型学習と親和性が高い。課題解決型学習とは、答えがひとつとは限らない問題に対して、仲間と協力しながら課題解決を目指す学習で、座学で教員から知識を学ぶ授業とは異なる。Minecraft EEでは教員の工夫次第でさまざまな課題が扱えることや、社会と図工など教科を横断して取り組めるのがメリットだ。

京都の立命館小学校では6年生が「京都の観光名所を案内しよう」をテーマにした課題解決型学習に取り組んだ。グループで協力しながら歴史建造物を作成し、エージェントと呼ばれるキャラクターにその中を案内させるプログラムを作った。さらには京都に来ることができない外国人のために京都観光を疑似体験できればと、キャラクターの案内を英語に。クリアすべき課題は多く長期的なプロジェクトであったが、子どもたちはグループで話し合いながら進めたという。

徳島県の東みよし町立足代小学校では5~6年生が、総合的な学習の時間を利用して、地域活性化について考える課題解決型学習を行った。子どもたちには「ハイウエイオアシスには人がたくさん来ているのに足代町に来る人は少ない。どうすればいいか」という課題が与えられ、それまでの地域学習を踏まえて、Minecraft EEを活用して未来の街を考察。地域の神社をシンボルにした古民家カフェ、珍しい動物がいるペットショップ、吉野川を周遊できるトロッコなど個性溢れるアイデアが形になった。ほかにも、茨城県立竜ヶ崎第二高等学校では、SDGs(持続可能な開発目標)のコンセプトを取り入れた未来の街づくりをテーマに課題解決型学習を実施。駅ビルの周辺を活性化が街づくりには重要と考え、Minecraft EEで駅ビルの構想を形にした。

立命館小学校

立命館小学校で行われたMinecraft EEを使った課題解決型学習。歴史建造物をつくり、ロボットが案内するプログラムを作る。あるグループは平等院鳳凰堂を作り、建物の回りを一周する案内コースを考えた。

東みよし町立足代小学校

足代小学校の授業では、吉野川に隣接する足代町に人が来るためにはどうすればいいか。小学生たちは地域課題を考え、多くの人に楽しんでもらえる未来の街を考えた。

実践例D イデアの表現ツールとして使える!

特別支援学校での活用

Minecraft EEは、特別支援学校で利用されるケースも多い。理科や音楽などの教科の学習に使用されるほか、ストーリー制作などアイデアを形に変える表現ツールとして活用されている。

埼玉県立特別支援学校さいたま桜高等学園では、Minecraft EEを活用して昔話「三びきのこぶた」の再現映像を作る表現活動に取り組んだ。生徒たちは3人でひとつのチームとなり、それぞれがこぶたを一匹ずつ担当して、物語の該当する場面を再現。「藁で家を作る」という場面ではMinecraftの干草の俵ブロックを使い、「レンガで家を作る」という場面ではレンガブロックを使って家を建てる。その後、物語の背景が完成したら、学生たちはセリフを録音し、ひとつの再現映像に仕上げた。3人でひとつの作品を作るが、制作は分担作業で進めるなど、学生の実態に合わせて取り組んだという。

また、つくば市立学園の森義務教育学校では、作曲活動の実践事例がある。Minecraftには、目的のブロックに信号を送ることができるレッドストーンというブロックがあるが、サウンドを発する「音符ブロック」に信号を送ることで音楽を奏でることが可能だ。ほかにも、愛知県の江南市立西部中学校では、特別支援の理科で「Chemistry Resource Pack」を用いて授業を実施。教員が作った化学のワールドに生徒たちがアクセスして化学の実験を楽しむものだ。Mincraftの化学ワールドでは現実の世界では難しい実験を行うことも可能で、特別支援の生徒たちの化学への関心を高めるのに使われていた。

さいたま桜高等学園

学生たちが作ったMincraft EEを活用した「三匹のこぶた」の再現映像。干草の俵ブロックやレンガブロックを用いて、物語の世界観を表現した。

愛知県江南市立西部中学校

特別支援の理科でMinecraft EE が活用された。図は、教員がMinecraft EEで作成した実験室で、この中で化学カイロを作る実験ができる。