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シネマレベルの映像を!「Blackmagic Pocket Cinema Camera 4K」

著者: 松山茂

シネマレベルの映像を!「Blackmagic Pocket Cinema Camera 4K」

常識を塗り替える価格

一見すると写真用一眼カメラのようなこの「ポケットシネマカメラ4K(Pocket Cinema Camera 4K)」ですが、その正体は劇場映画品質の映像を撮ることができるムービーカメラ(静止画も撮影可能)です。近年は小型のカメラで高画質な動画が撮れることが一般化していますが、この製品最大の特徴は、「RAW形式」で動画が撮影できる点です。

RAWとは、カメラのセンサが受けた情報をそのまま丸ごと記録したもの。写真では一眼カメラのほか、ここ数年のiPhoneでもサポートするなど広く普及しています。しかし、動画のRAWは莫大なデータ量になるため、本製品がサポートする4K DCI(4096×2160)、秒間60フレームのRAW撮影ができるカメラはいかにも現場向けなルックスの大型カメラが中心でした。

一方、本製品は楽に手持ち撮影できるほどコンパクトで、14万7800円(税別)という、性能からして「ゼロが一つ足りない」レベルのリーズナブルな価格を実現。今春の発表時から映像クリエイターの間では話題沸騰となっていました。

小型さや低価格だけでなく、先進的な設計もポイントです。本体にはUSBタイプCコネクタが装備され、SSDなどを接続して映像を記録するほか、バッテリの充電にも利用可能。最高品質の映像を記録するには「CFast」や「SD UHS-II」といった高価なメディアが望ましいところですが、SSDは価格もだいぶ下がっているのに加え、直接Macにつないで即編集できるのも大きな魅力です。

レンズマウントは、ミラーレス方式の先駆けであるマイクロフォーサーズ規格を採用。すでに10年近い歴史があるため、レンズの選択肢が非常に幅広いと同時に、本体とバランスのとれたコンパクトさをキープできます。低コストでありながら、これまで実現不可能だったスタイルをも可能にする、まさに何重もの意味で“ゲームチェンジャー”なカメラといえます。

5インチの大型スクリーン搭載

本体には5インチの大型タッチスクリーンを装備。操作への反応もよく、映像の細部確認も直感的かつ快適に行えます。

的確に整理されたボタン類

本体上のボタンは、多すぎず少なすぎない的確な量と配置。電源はスライド式のスイッチで、ミスの起きにくい構造になっています。

付属ソフトで真価を発揮

本製品の売りの1つが、カメラ内蔵のものとしてはかなりの大型となる5インチの液晶。映像の細部まで確認しやすいほか、タッチ操作で各種設定を非常に直感的に行えます。ディスプレイの映りやタッチの反応はかなり良好で、多くの人が納得できるレベルに仕上がっている一方、自由に角度を変えられるバリアングル仕様ではないため、低いアングルの撮影などでは少々見辛いのも確か。ただし、本格的な撮影では他にモニタを用意するのが基本なので、この点は仕方ないかもしれません。

撮影はRAW形式のほか、プロレズ(ProRes)コーデックのクイックタイム形式でも収録できます。一番高品質なRAWだと1秒あたり272MBにもなるので、収録時間などに合わせて使い分けるとよいでしょう。

収録は、撮影したレンズや設定をストレートに反映したものになり、一般的なビデオカメラより多少地味な印象になります。実は本製品は、付属ソフト「ダヴィンチ・リゾルブ・スタジオ(DaVinci Resolve Studio)」を使った調整作業まで含めて初めて真価が発揮されるのです。RAW撮影されたデータには、見えている以上に明暗部分や色の情報が残っており、一般のビデオでは破綻してしまうほど大幅な調整を加えても高い画質が維持されます。「こうした画が欲しい!」という意図を持って使うと最高のレスポンスを返してくれ、ちょっとした感動を覚えるレベルです。

本製品はボディ自体に手ブレ補正機能を持たず、三脚やジンバルが必要になるなどハードルの高い面もあります。しかしそれは、余分なものを廃し、リアルな映像を記録することをストイックなまでに追求した結果であり、中小の映像制作者にとっては買わない理由を探すほうが難しいレベルの高いコスパとポテンシャルを持っています。また趣味で映像を撮る場合も、特に風景などの撮影においては最高レベルの選択肢となります。写真と同じレベルの色調表現を持った動画作りが、かつてないほど幅広いユーザに開放されたエポックメイク的な製品として、長く語られるプロダクトになるでしょう。

USB Type-C経由で接続&充電

USB Type-CコネクタにはSSDなどをつないで録画に使用できるほか、電源OFF中はバッテリへの充電にも使用できます。

マイクロフォーサーズマウントを採用

レンズマウントは、ポピュラーなマイクロフォーサーズ規格を採用。高性能から廉価なものまで豊富な選択肢が存在します。

付属ソフトで高度なカラー調整

高性能な編集・カラー調整ソフト「DaVinci Resolve Studio」が付属。ソフトでの処理までを含めた部分がこの製品の魅力です。

「シネマ」の名に恥じない映像表現

階調の幅広さや色の深さは、一般のビデオカメラとはケタ違い。日常の風景さえ映画の一コマのような空気感で収録可能です。

[SPEC]

[4Kカメラ]Blackmagic Pocket Cinema Camera 4K
【発売】Blackmagic Design
【Size】約178.1(W)×96(H)×85.8(D)mm
【価格】15万9624円
【URL】https://www.blackmagicdesign.com/jp/products/blackmagicpocketcinemacamera

【主なスペック】

【重量】722g【備考】有効センササイズ:8.96mm×10mm(フォーサーズ)、レンズマウント:アクティブ方式MFTマウント、レンズコントロール:アイリス、フォーカス、ズーム(互換レンズ使用時)、ダイナミックレンジ:13ストップ、感度:ISO 25,600まで、撮影解像度:4096×2160 (4K DCI)3840×2160(Ultra HD)、1920×1080(HD)、フレームレート:最大フレームレートは選択した解像度およびコーデックによる。23.98、24、25、29.97、30、50、59.94、60、120(フルHDのみ)fpsのフレームレートをサポート。

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大須賀 淳

テクノロジーを遊びつくす映像作家・音楽家。【URL】https://junoosuga.com