iOS向け楽器アプリは、タッチ操作を用いたユニークな演奏方法を備えたものも多く、従来にはなかった新たなジャンルを築くに至っています。一方、ピアノなどオーソドックスな楽器音は、普通の鍵盤で演奏してこそ引き出せる魅力があるのもまた事実です。
iOS向けには比較的早い時期から、電子楽器コントロールの共通規格である「MIDI」信号を入出力するハードが発売されていますが、近年のトレンドとしてBluetooth経由でワイヤレスにMIDI信号を送受信できる機器が増えています。ケーブル接続ではどうしてもレイアウトに制限が出て煩雑になりがちですが、ワイヤレスであれば狭い机の上などでもかなり柔軟な配置が可能になります。
ラインナップも豊富なBluetooth MIDI
ブルートゥース接続のMIDIコントローラを積極的に発売しているコルグ(KORG)からは、鍵盤数のラインナップをそろえた鍵盤の「マイクロキー・エア(microKEY Air)」シリーズ、鍵盤以外にドラムパッドやノブなど多彩な操作子を持った「ナノキー・スタジオ(nanoKEY Studio)」、ミキサーのフェーダー操作などに便利な「ナノコントロール・スタジオ(nanoKONTROL Studio)」といった機器がリリースされています。これらはすべて電池駆動が可能で、すでにワイヤレスが常識のMac用キーボードやマウスとも相性ピッタリ。また、専用のMIDIケーブルでつなぐ従来の機器も、アダプタを使うことでワイヤレス化が可能。なにかとケーブルが増えがちなDTM環境を、大きく整理整頓することが可能です。
●ラインナップ豊富なBluetooth鍵盤
KORGの「microKEY Air」は、標準より小型ながら演奏しやすいBluetooth接続可能な鍵盤。写真の25鍵に加え、37鍵、49鍵、61鍵と豊富なラインナップが用意され、持ち運び用から自宅での作業まで幅広い用途をカバーしています。
microKEY Air(25鍵)
【発売】KORG
【価格】6500円前後
【URL】https://www.korg.com/jp/products/computergear/microkey2_air/
●パッドやフェーダもワイヤレスで
microKEY Airと同じくBluetooth接続が行える、25鍵のキーボードとノブ、パッド類が一体となった「nanoKEY Studio」(図版下)、スライダやダイヤルなどでミックス時のコントロールに便利な「nanoKONTROL Studio」(図版上)といったシリーズも用意され、配置が固定されない自由な音楽制作スタイルが可能となります。
nanoKONTROL Studio(写真上)
【発売】KORG
【価格】1万3000円前後
【URL】https://www.korg.com/jp/products/computergear/nanokontrol_studio/
nanoKEY Studio(写真下)
【発売】KORG
【価格】1万3000円前後
【URL】https://www.korg.com/jp/products/computergear/nanokey_studio/
●古い機器もまとめてワイヤレス化!
MIDIケーブルで接続する旧来タイプの端子を備えた機器も、「Quicco Sound mi.1」のようなBluetooth MIDIインターフェースがあればワイヤレス化が可能。過去30年ほどの間に発売された電子楽器も、最新のスタイルへの対応が簡単に実現します。
mi.1
【発売】Quicco Sound
【価格】450円前後
【URL】http://quicco.co.jp/ja/products/
アプリ経由でスムースにiPhoneと接続
iOSには標準のMIDI機能があり、接続された機器はアプリを選ばずに幅広く使用することが可能となっています。ブルートゥースMIDI機器も、コルグが配布している無料アプリ「ブルートゥースMIDIコネクト(Bluetooth MIDI Connect)」(以下、BLE-MIDI)を利用することで、OSレベルでMIDIの入出力にとして認識されるので、アプリごとの対応などを心配する必要はありません。BLE-MIDIの反応はかなり素早く、機器の電源を入れた直後にリスト上に表示され、タップするだけで即座に利用可能な状態となります。急に思いついたフレーズをすぐ弾きたかったり、ライブの出番前に電源を入れるような状況でも、音源内蔵のキーボードを起動させるのとさほど変わらない感覚と手間で使うことが可能です。
●アプリでデバイスを認識
iOSデバイス上でBluetooth MIDIデバイスを認識するためのアプリ「Bluetooth MIDI Connect」(BLE-MIDI)。KORGをはじめ、各社のデバイスを認識することが可能です。
Bluetooth MIDI Connect
【開発】KORG INC.
【価格】無料
【場所】App Store>ミュージック
●認識は即座に完了!
BLE-MIDIを起動している状態で、Bluetooth MIDI機能を搭載した機器の電源を入れると、程なくしてリスト上に表示され、タップするだけで接続可能です。表示されない場合は、iOS全体のBluetoothがオンになっているかを確認しましょう。
●MIDI対応のアプリで使える
BLE-MIDIで認識を行ったあとは、特に開発元を選ばず、MIDIコントロールに対応した音楽アプリ全体を通して、MIDI信号の入力元として表示されるようになります。画面上の操作で使い慣れたアプリも、鍵盤で演奏するとまた違った魅力を発見できるはずです。
電子ピアノ並みに高品質な無料楽器アプリ
MIDIコントローラとiPhoneを接続したら、あとは楽器アプリです。とりあえず基本として高音質なピアノの音が欲しい人におすすめなのが、無料アプリの「モジュールLE(Module LE)」。リッチなグランドピアノのサウンドが大容量でサンプリングされており、バンド演奏の中で使っても十分に通用するレベルの芯のある音色となっています。有償版には生楽器からシンセ系まで鍵盤演奏に特化された音色が豊富に入っているので、気に入ったらアップグレードしてみましょう。
このように大変魅力的なワイヤレス演奏ですが、サウンドに関してはブルートゥーススピーカなどに接続すると大幅なレイテンシー(発音の遅れ)が出て演奏しづらいのが難点。そんなときは、ライトニング直結のDACなどを使って有線で利用するのがよいでしょう。
●高品質な音色を備えた無料アプリ
KORGが配布している無料の楽器アプリ「Module LE」。専用の電子ピアノ製品に匹敵するほどの高品質なピアノ波形を内蔵しており、有償版にアップグレードするとさらに多数の楽器音が使用可能です。
Module Le
【開発】KORG
【価格】無料
【場所】App Store>ミュージック
●出力は有線接続がおすすめ
出力に関しては、Lighting直結DACのページでも紹介したKORGの「Plug Key」などの有線タイプのデバイス経由で鳴らすのがおすすめ。