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「eAT2018 in KANAZAWA」レポート

著者: 矢野裕彦

「eAT2018 in KANAZAWA」レポート

恒例となっている先進的未来型プロジェクト「eAT2018 in KANAZAWA  Powered by TOHOKUSHINSHA」が、1月26、27日に金沢で開催された。著名なクリエイターと共に過ごせる交流会として、知る人ぞ知るイベントだが、今回はそのカオスの中に見えたクリエイティブのヒントを紹介しよう。

何が起きるかわからない予測不能の顔ぶれ

毎年1月の恒例イベント「eAT(electronic Art Talent)」が、今年も金沢で開催された。本誌でもレポートしたことがあるが、多彩なクリエイターが集まる濃密な交流会だ。eATの特徴は、バラエティに富んだゲストスピーカーの陣容と、登壇者と参加者の濃密な交流だ。初日は3本、二日目は5本のトークセッションが行われ、二日目夜には湯涌温泉に場所を移し、登壇者と参加者が直接ひざを交えて夜中まで語り合う「夜塾」が開かれた。

今年のゲストスピーカーは、数々の大作映画のマットペイント(背景画)で活躍した上杉裕世氏と映画監督の樋口真嗣氏、コピーライターの小西利行氏、『宇宙兄弟』『インベスターZ』などのヒット作の担当編集者である佐渡島庸平氏、リオ五輪閉会式の東京のパフォーマンスや東京2020招致最終プレゼンの制作などで著名なクリエイター菅野薫氏と銀メダリストで日本フェンシング協会の現会長である太田雄貴氏、電子工作ユニットのギャル電、アーティストの長谷川愛氏、ブロガーで作家のはあちゅう氏、でんぱ組・incの夢眠ねむ氏、世界を股にかけるDJ田中知之氏(FPM)など。何が起きるのか想像もできないラインナップとなった。

毎年変わるプロデューサーはアートディレクターの秋山具義氏で、キャッチフレーズは「KANAZAWOW」。世界で起こっている“オドロキ”を、金沢で体験するというコンセプトだ。

クリエイティブのヒントがてんこ盛りのセッション

今年のプログラムも、さまざまなスタイルで山のようなクリエイティブのヒントが埋め込まれたものとなった。その一部を紹介しよう。

初日のトークセッションでは、小西利行氏が、主に企業における広告等のプロジェクトにおいて高まっている「ストーリー」の重要性について説明した。広告とは、企業のビジネスを人々に「伝える」ことから「伝わる」という状態に切り替える作業。その際に重要視されているのは「デザイン思考」で、問題点の確認する「共感」→課題を見つける「定義」→アイデアを生む「創造」→実際に形にする「試作」→フィードバックとなる「テスト」を繰り返し行うことだ。小西氏は、そこに世の中の人が自ら動き出したくなるストーリーを加える「ストーリー思考」が大切だと語った。クリエイティブにおけるストーリーの大切さは、他の多くの登壇者も語っていた。

続いて行われた「上杉裕世×樋口真嗣」のセッションでは、上杉氏の“映像人生”に注目が集まった。上杉氏は29年にわたり米ILMに在籍し、『スター・ウォーズ』『アベンジャーズ』などの作品で、独自の3Dマットペインティングを駆使して活躍している。上杉氏は学生時代の映像活動について振り返りながら、そこに込められた「表現したい」という欲求の強さと実現するための強力な探究心を、笑いを交えながら解説した。独自の撮影装置、現像装置をカスタムメイドまでして表現を追求した姿勢は、デジタル化した後の活躍につながるこだわりがあった。

カオスな中に、異様に濃度の高いクリエイティブな刺激が詰まった「eAT」。来年以降の展開にも期待したい。

上杉氏と樋口監督が参加しての贅沢なセッションは、マニアックな映像トークが展開した。上杉氏が過去に「欽ちゃんの仮装大賞」になぜ挑み、どうやって大賞を獲得したかの秘密も明らかに(笑)。

見た目は派手だがゆるゆるトークのギャル電は、電子工作で何でも光らせるユニット。「パワポに88ポイント以下のフォントはなるべく使わない」という“意識の低いプレゼン”に会場が沸く。

小西氏、はあちゅう氏、佐渡島氏のテーマは「言葉」。「ヒットしそうなものではなく、ヒットさせたいものを売るのがクリエイター」とはあちゅう氏。佐渡島氏の『漫画 君たちはどう生きるか』誕生秘話も。

秋山氏と、世界中を飛び回る企業コンサルタントで累計300万部の著書を持つ本田直之氏、田中知之氏による異色の組み合わせによるテーマは「食」。日本人シェフがなぜ今海外でもっとも活躍しているかが語られた。

菅野氏と太田氏のセッション。東京五輪招致より付き合いの長い二人のトークは息もピッタリ。現在、フェンシング人気向上のためのさまざまな取り組みを、デジタル技術も駆使して行っている。