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“入れただけ”では決して成功しないApple製品導入

著者: 吉田雷

“入れただけ”では決して成功しないApple製品導入

監修:ダイワボウ情報システム株式会社

必要不可欠な知識とノウハウ

アップル製品と聞くと、MacやiPhone、iPadなどコンシューマー向けの印象が強いですが、実はビジネスやエデュケーション(教育)の現場でも広く浸透しています。今や企業や教育機関でもITの利活用は仕事や学びを促進するために避けられないテーマであり、iPadが登場した2010年頃から国内でもモバイルデバイスの導入が急速に浸透、年を追うごとにノウハウやユースケースが共有され、現在においては、企業や教育機関におけるモバイルデバイスの導入は“当たり前”のものになっています。

しかし、企業や教育機関における導入は、同じアップル製品といえどもコンシューマーのそれとは異なり、決して易しいものでありません。日々さまざまな新しいソリューションが登場し、ノウハウは変化します。IT化を目指して無闇に大量導入するだけではまったくその力を発揮できないのは当然のこと、場合によってはデバイスの運用や管理に大きなコストがかかり、せっかく導入したものの手間が増えるばかりでその運用がままならなくなります。

企業や教育機関においてITデバイスを導入する際には、「検討」→「購入」→「キッティング」→「配備」→「運用」といった一連のフェイズを経るのが一般的です(詳しくは左下図参照)。「検討」段階では、導入予算やランニングコスト、活用目的、活用方法、運用管理などを検討。導入後のサポートまで含めてデバイスを「購入」したあとは、業務や授業で使えるようにユーザアカウントの作成、ネットワークの設定、アプリのインストール、運用ポリシーの適用といった「キッティング」を施してから「配備」します。「運用」段階では、デバイスの紛失や故障対応、iOSのアップデート実施、新たなアプリの導入や更新といった作業が必要になってきます。

導入を決定するステークホルダーや、実際の導入・運用を行う担当者はこうしたさまざまなフェイズにおいて正しい判断が必要となるのはもちろん、それを支える知識やノウハウの有無がデバイス導入を成功に導くために必要不可欠となります。

 

 

Mac Fan Web(https://book.mynavi.jp/macfan/)の「教育・医療・Biz」のコーナーでは、Mac Fan本誌で掲載したさまざまな業種・業態におけるApple製品の導入事例を無料で公開しています。導入を成功に導くためのヒントも多数掲載されていますのでチェックしてください。

 

 

アップルだからこその仕組み

アップル製品が広く人々に支持される理由には、その生産プロセスにおいてアップルが研究開発から設計、試作、量産までの工程を自社で一貫して行うことによって生まれる“使いやすさ”が根底にあります。ハード、OS、ソフト(アプリ)、サービスが高い次元でシームレスに連係することで、新しい価値を生み出します。

アップルにとっては、そうしたものづくりの哲学はコンシューマー市場だけでなく、ビジネス・教育市場においても同様であり、そのための画期的な仕組みを開発・提供し続けています。「キッティング」の手間を減らす「デバイスエンロールメントプログラム(Device Enrollment Program・以下DEP)」や、アプリの一括購入・配付をスマートにする「ボリュームパーチェスプログラム(Volume Purchase Program・以下VPP)」、教育機関におけるアップル製品の利活用を促進する「アップルスクールマネージャ(Apple School Manager・以下ASM)」などがその代表的なものです。ほかにも、組織内でアプリを開発・配付するための「ADP(Apple Developer Program)」や「クラスルーム(Classroom)」アプリなどもあります。

それぞれのプログラムについてはこれから詳しく説明していきますが、こうした下地をアップルがきちんと用意しているからこそ、アップル製品がビジネス・教育シーンにおいても高いプレゼンスを発揮し、“使われる”プロダクトになっているのです。言い換えれば、IT管理者にとっては、こうした仕組みをしっかりと理解し、正しく使うことがアップル製品の法人・文教導入を成功させるために一番重要なことなのです。

しかし、こうしたアップルのプログラムに関する最新の知識やノウハウはまだ定着していないのが実情です。アップルはビジネスや教育向けのポータルサイトを用意し、各関連プログラムの情報の多くを日本語化して公開しているものの、特にDEPやVPP、ASMは最近用意されたものであるため、実際にIT管理者が現場で利活用しようとするとその情報の乏しさから理解や実践に苦心することになります。

 

●Appleの法人・文教サポートサイト

ビジネスと教育のサポート

【URL】https://support.apple.com/ja-jp/business-education

法人・文教向けのサポート情報は専用ページが設けられています。DEPやVPPをはじめとする詳細などを確認できます。

 

 

●Appleの法人・文教サイト

ビジネス

【URL】https://www.apple.com/jp/business/

 

教育

【URL】https://www.apple.com/jp/education/

Appleは同社WEBサイトに「ビジネス」と「教育」の専用ページを用意。導入事例や各種ソリューションが公開されており、両分野に注力していることがわかります。

 

ただし、アップルのプログラムは他メーカーと比べても実に先進的なものであり、ポイントさえ理解すれば決して難しいものではありません。きちんとマスターすれば、大量導入のさまざまなハードルをぐっと下げることが可能となります。さっそく次ページから、導入を成功に導くための最新の秘訣を見ていきましょう。

 

 

法人・文教におけるIT機器の導入プロセス

 

(1)検討

導入予算やランニングコストなどの費用面にはじまり、デバイスの導入目的や活用方法、KPIの設定、運用ポリシーの策定など、決定しなければならない項目は多岐にわたります。「導入後」をどこまでイメージできるかが重要となってきます。

(2)購入

デバイスの購入場所を決定します。Apple製品は、Apple Store、Appleの製品販売代理店(Apple Authorized Reseller)、Appleのソリューションパートナー(SP)、プライムベンダー(PV)と呼ばれる代理店などから購入可能です。

(3)キッティング

ユーザアカウントの作成や、ネットワークの設定、アプリのインストール、運用ポリシーの適用など、配備する前にあらかじめデバイスを運用可能な状態に設定しておく必要があります。導入台数が多くなればなるほど、大変な作業となります。

(4)配備

キッティングの終わったデバイスを、実際に使用するユーザに届けるプロセスです。キッティングの方法によっては配備までを同時に行うことも可能です。デバイス以外にも充電環境の配備や、保管場所などの整備も必要となります。

(5)運用

ユーザに配備されたデバイスを実際に運用していく段階です。デバイスの紛失や故障対応、OSのアップデートの実施、アプリの追加・更新、ユーザパスワードの再発行など、導入端末が増えるほど、サポートに手間と時間がかかります。