デザインは自分に関係ない?
私たちが日頃使っているMacには、デザインをしやすい環境が整っています。高品質なフォントがあらかじめ豊富にインストールされていますし、キーノート(Keynote)やページズ(Pages)という、さまざまなデザインに活用できるアップルの純正ソフトもあります。また、Macアップストア(App Store)には、クリエイティブを補助する便利で高機能なソフトがたくさん用意されていることも見逃せないポイントです。
しかし、読者の皆さんの中には「デザインなんて、自分には関係ない」と感じている人もいるでしょう。確かに、デザイン系の仕事に従事している人以外は、日頃デザインに真剣に向き合う機会は少ないかもしれません。しかし、デザインの仕事に携わっていなければ、本当に「デザイン力」は必要ないのでしょうか?
結論からいえば、「誰にとっても、デザイン力はあったほうが断然いい!」ということになります。なぜなら、デザイン力とは「伝える力」だと言い換えることができるからです。
例を挙げて説明しましょう。もしあなたが企業の営業部門に勤めているビジネスパーソンなら、自社商品や企画をPRするための企画書や提案書、商品案内を作ることがあるかもしれません。そしてあなたは、商談相手にその商品や企画のことをよく知ってほしいと思うはずです。そのときに、相手への伝わりやすさを左右するのが、デザイン力です。同じ内容でも、紙の上からずらずらと長々しく文章が書かれているのと、文字サイズを変えたり、色を変えたり、配置を工夫したりしたものでは、伝わりやすさがまったく違います。単なる文章の羅列では、何が大切なポイントなのかもわからないし、そもそもその企画書を読みたい気持ちが起きず、相手に何も伝わらない可能性も出てくるのです。
デザインの先にある目的
また、ビジネスシーン以外でも、「デザイン力=伝える力」が必要な状況は多く存在します。たとえば、プライベートでお世話になっている人にバースデーカードを送るとき、お祝いの気持ちや日頃の感謝の気持ちが伝わらなかったら悲しいと思うはずです。「いつもありがとうございます」の一言だって、デザインによってその伝わり方がずいぶん変わってくるのです。
さらにいえば、ほとんどの場合、表現の先には「人を動かしたい」という目的があります。たとえばビジネスの企画書なら、単にどんな企画なのかを相手に理解してもらえば終わりではなく、その企画を受け入れてもらいたいという目的があるはずです。イベント告知ポスターなら、お客さんに来てもらいたいという目的があります。先に挙げたバースデーカードだって、送る相手に幸せな気分になってもらいたいという目的があります。
すなわち、デザイン力とは、制作物を通じて目的につなげていく力だともいえるのです。
いいデザインを作るには?
こうした前提に立てば、デザインというのは単にきれいだったり、かっこいいものを作ることではありません。人を動かしたり、人の心を動かすという目的を果たせるかどうかが、いいデザインかどうかの分かれ目になります。何かを作るときには、その準備段階として、どんな人に何を伝えたいのか、どんな印象を持ってほしいのか、見た人にどんな行動を起こしてほしいのか、自分の考えをはっきりさせておくことが大切です。
また、いいデザインのためには、ぜひ知っておきたいセオリーがいくつかあります。読みやすい文字の配置だったり、スッキリ見せるための要素の位置関係だったり、印象をコントロールする配色だったりといったものです。この特集では、こうしたセオリーを凝縮して紹介していきます。きっと、ビジネスやプライベートに役立つデザイン力を高めるための近道になるはずです。
ただし、いいデザインを作るためには、こうしたセオリー以外のアイデアも必要になってきます。たとえば、「高級感を感じ取ってもらいたい」ときに、どんなあしらいやパーツが必要なのかは、たくさんの制作物を見て自分の引き出しを増やしていく必要があるでしょう。さらには、目的を果たすためにどんなフレーズを選ぶか、どんなイメージ写真で人の心を掴むかといったことも、広い意味ではデザインだといえます。
「考えることがいっぱいで、なんだか大変な気がしてきた」と思うかもしれませんが、モノを作るというのは、やっぱりワクワクするものです。まずは気楽に、楽しみながら物作りに挑戦していきましょう。あなたにもきっと、相手に伝わる素敵なデザインが作れるはずです。